「トワイライトシンドローム」に関する覚書
「トワイライトシンドローム」におけるバイノーラル演出に関する覚書。
探索編・究明編における、バイノーラル録音を使用した演出に関して、覚書としてまとめてみました。
なお、バイノーラル録音の再生は、ヘッドフォン使用が最も効果的とされています。参考に引いてるプレイ動画の視聴で効果を確認する際には、ヘッドフォンの利用を推奨しておきます。
最近、Youtuberの実況プレイヤーの人が「トワイライトシンドローム」を取り上げてくれたらしく、Twitterで感想のTweetやイラストなどが結構アップされていた。 ニコニコの実況プレイ動画などでも割と取り上げられたり、作品として「まだ生きている」のを見るのは嬉しい限り。
2015-11-04 21:09:43懐かしさにプレイ動画を何本か見たりしてたら、このゲームで使用した「バイノーラル録音」の演出について、昔から考えてきたことなどが色々と思い返されて来た。 割と作り手サイド・技術的な視点からのメイキングっぽい話ということで、長くなるけどこの機に少しまとめてみたい。
2015-11-04 21:10:04トワイライトシンドロームと言えばバイノーラルと言うほどに立体音響を前面に押し出した企画だったが、そもそもあの技術は当時のヒューマンがアーケードで展開していた「音のお化け屋敷」的なコンテンツが元になっている。 企画の立ち上がりとして、まずバイノーラルありきの作品だったはず。
2015-11-04 21:10:22プロジェクトに参加する際にお化け屋敷音源も聞かせてもらったが、首筋でハサミのチョキンチョキンという音が生々しく聞こえたりという感じの内容だった。 これに近いシチュエーションは第四の噂のゲームオーバー演出「七不思議の呪い」の場面で割とそのまま再現されている。
2015-11-04 21:11:03参考用にニコニコから関連シーンのある動画のリンク。 第四の噂「雛城高校の七不思議」 (21:40)からの凶エンド。ハサミでチョキンは(22:30)位。 nicovideo.jp/watch/sm199845
2015-11-04 21:11:22立体音響は、空間演出を人工的に創り出すQサウンドなど当時既に複数種類存在したけど、それらに比べてバイノーラルの一番のメリットは、その「生々しさ」にあると思う。 人間の頭部構造を模したダミーヘッドを使って録音するバイノーラルは、「自分の耳で聞いているような音の存在感」が圧倒的。
2015-11-04 21:12:17でも、この生々しさは、実はエフェクトをかけると大分弱まってしまう。エフェクトが入る事で、音そのものがある種「フィクショナル」な手触りになってしまう。効果を最大限に活用できるのは、なるべく録音したまんまの音、いわゆる「生音」として使用した時だと思う。
2015-11-04 21:12:36トワイライトシンドロームにおけるバイノーラル恐怖演出も、ここぞと言う所ではエフェクト無し(あるいは最小限)のなるべく生音に近い所で勝負している。 「最終電車」で「許せない」と耳元で囁く声とか、ラップ音で机がガタガタ鳴るところとか。
2015-11-04 21:12:51第三の噂「最終電車」 (18:50)位からのOLの霊。「許せない」は(21;50)位。 nicovideo.jp/watch/sm263624 第二の噂「音楽室のMF」 (6:40)位からのラップ音(このシーンでは短め) nicovideo.jp/watch/sm83739
2015-11-04 21:13:11かと言って全ての音声にエフェクトをかけない生音なのが正解かというとそうでもない気がする。 音響を装飾的に使う必要も各所で出てくるし、いくら生々しい音声でもずっと使われてると慢性的になるし、第一聞いてる方が精神的に疲れてしまうと思われる。
2015-11-04 21:13:36フィクショナルなエフェクトを使うだけ使って、本当の要所で一瞬だけ生々しさが際立って立ち上がってくるというのが効果的なのではないか。 フィクション性と実体感をあえて混ぜて、その掛け合いで使い分けることで効果を上げる方法論。
2015-11-04 21:14:07例えばそれが幽霊の声ならば、普段は霊界から響いてくる「この世ならざる声」としてエフェクト込みで流し、肝心の一瞬に「ふいにすぐ隣に実体化して立つ」と言ったような使い方。 「この作品世界のリアリティラインはこんな所だろう」と受け手が思い込んだ瞬間、不意に異様な生々しさが立ち上がる。
2015-11-04 21:15:55こういった「フィクショナル」な要素をあえて残すことで作品世界のリアリティラインをコントロールしていくというのは、今後大きく広がっていくだろうと思われるVRのジャンルでも勘所になっていくのではないかと思っているのだけど、その辺のノウハウは全くこれからの領域。
2015-11-04 21:16:37ただ、コンテンツの内容が全てリアルなのではなく、虚構性との対称を意識して組み込むことで、そのコントラストによって存在感をより強調できるというのは、上手く使えば効果的だと思う。 「実体感」という物にもあえて「緩急」を付けて行く演出論。
2015-11-04 21:16:59「トワイライト」でエフェクトと生音の掛け合いが一番うまく行ったと個人的に密かに満足してるのは「テレホンコール」の大凶エンド。 ユカリにかかってくる霊障電話の「あのね、あのね」の声が実空間に侵食して来て、ユカリの周りをグルグル回り出す。
2015-11-04 21:17:16第七の噂「テレホンコール」 (14:00)位からの凶エンド。普通ここまで電話に出ないプレイヤーは少数派かw nicovideo.jp/watch/sm336871
2015-11-04 21:18:22開始時はエフェクトかけまくって、わざとらしいまでの擬似空間表現で盛り上げて行く。恐怖演出としては順当な手順だろうけど、まあ言ってしまえば「作り物の派手さ」として消化できるような音だと思う。それが頂点に達した所でサーッと音が引いて行き静寂が訪れる。
2015-11-04 21:19:03プレイヤーもゲームオーバーお約束の演出が終わったと一息ついた瞬間、エフェクトを全て外した異様に生々しい呼びかける声をすぐ耳元で鳴らす。「ユカリちゃん…」 この唐突に実体化したような異物感こそがトドメの一撃になるだろうと考えたし、実際聞いてみると確かに手応えのある音になっていた。
2015-11-04 21:20:36しかし、残念ながらこの渾身の恐怖演出、そもそも「テレホンコール」自体が非常にシンプルな進行で、なかなか凶エンドを迎える事がなく、見られる機会自体が大分少なかったはず。 ニコニコのプレイ動画のコメの反応が割と期待してた通りの阿鼻叫喚ぶりを示してくれていたので、少し溜飲を下げたw
2015-11-04 21:23:14「テレホンコール」凶エンドだけだと後味悪いのでw(19:30)位からが大吉エンド。 電話の通話音声による距離感で「もう触れ合うこともできない」所へ行ってしまったさっちゃんと、ユカリの息遣い混じりの実在感のある肉声の掛け合いが割と効果を出せたかと。
2015-11-04 21:23:32似たような「異界からの声に囲まれてしまう」ゲームオーバー演出は、第五の噂「雛城の杜」で、水辺に捨てられた人形たちに手を出した時にも使っていて、そこそこ効果的だった記憶もあるのだが、即死エンドだけにプレイ動画でも見た覚えがないし、自分も開発時以来、聞き直した記憶が無いw
2015-11-04 21:23:50トワイライトシンドロームでバイノーラルへのアプローチを続けて行く内に、この録音の効果はホラー演出だけに留まる物ではないなという結論には早々に至った。手っ取り早いジャンルとしては「エロ」系なら間違いなく破壊的なまでの効果を及ぼすだろうという確証は持った。
2015-11-04 21:24:07第五の噂「雛城の杜」 無数の少女の霊が囁きかけてくるという恐怖演出シーンなのに「エロい」の声が殺到したw(15:23)位から。 nicovideo.jp/watch/sm290841
2015-11-04 21:24:26まあ全年齢のゲームでエロをやるわけにもいかないのでそこは諦めるとしても、「感情が収束する」ような場面での肉声の実在感と言うのは絶対に説得力が出せると思った。 「トワイライト」で意識してその効果を使って効果的だったと密かに満足している「恐怖演出以外のシーン」が幾つかある。
2015-11-04 21:24:42