マーサ・C・ヌスバウム『正義のフロンティア』読書メモ集

マーサ・C・ヌスバウム『正義のフロンティア――障碍者・外国人・動物という境界を越えて』(法政大学出版局、2012)の読書メモをまとめました。Martha C. Nussbaum, Frontiers of Justice : Disability, Nationality, Species Membership, 2006。
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荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「私の考えでは、古典的な社会契約の観念を最強の形式で表わしているのはロールズであり、また社会契約の理論がほかの理論よりも優れていることをもっとも説得的に論証しているのもロールズである」(ヌスバウム『正義のフロンティア』)……ロールズ最強っ。

2015-11-20 12:45:55
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

ヒュームが力のだいたいの平等性に依拠していることは、彼の正義論にきわめて大きな悪影響を及ぼしている。彼の正義論には、障碍のある人びと、あるいは女性を、正義にかなったまっとうな仕方で扱うための基礎がない。byヌスバウム『正義のフロンティア』60p

2015-11-20 16:32:26
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

功利主義は、最大の社会的総計(あるいは平均)を生みだすために、あれやそれやの善のあいだでのトレードオフを奨励している。byヌスバウム『正義のフロンティア』

2015-11-21 09:30:24
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「大量のケアの仕事が、通常は無報酬で、そして仕事であるという公共的な承認なしに、なされている」(ヌスバウム『正義のフロンティア』)。障碍者介護はロールズ正義論のアキレス。この観点はシャドウワーク(イリイチ)にも繋がる。が、その時、障碍者問題の固有性は解消してしまうのではないか?

2015-11-23 12:05:11
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

メモ的に記しておけば、ヌスバウムは老いの問題も盛り込むことで障碍者を人間主体の例外ではなく典型として捉えようとしているようにみえる。従来正義論ではそこがカバーできない。ただ、みなが障碍者であるのなら彼らに対する特別な補償を正当化できないように思えるのだが??

2015-11-23 12:44:02
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「可能カアプローチは公共的領域と私的領域というよく知られたリベラルな区別を拒絶し、家族を社会の基礎構造の一部であるひとつの社会的・政治的な制度としてとらえる」(ヌスバウム『正義のフロンティア』)。これな。すごい混乱が広がりそうなんだけど、どうなんだろうな。

2015-11-25 12:36:03
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

若い労働者たちは、自らの人生の一部としてケアを考えるようになるにつれ、柔軟性のない職場を受け入れにくくなる。そしてフレックスタイムやパートタイムといった選択肢を提供する雇用者たちが、技術力においてもっとも長けた労働者たちを引きつけるだろう。byヌスバウム『正義のフロンティア』

2015-11-25 12:43:32
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「人種にもとづく残忍で抑圧的な差別は、グローバルな共同体において受容しえないと理解されているが、性別にもとづく残忍で抑圧的な差別は、文化的差異の正統な表現であるとしばしば理解されている」(ヌスバウム『正義のフロンティア』)。あるあるだな。

2015-11-25 14:55:21
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「家族は大切だが「私的」ではない領域として扱われるべきである」(『正義のフロンティア』)。ヌスバウムは公私の区別を一貫して批判しつづけるが、これってリベラルにとって諸刃の剣というか、国家権力がプライベート空間に介入するきっかけを与えかねないように思うのだが。

2015-11-25 20:07:35
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「民主主義にとって、人生の享受にとって、自国内部の平等および社会的流動性にとって、そして国境を越える実効的な政治活動にとって、教育よりも重要なものはない」(ヌスバウム『正義のフロンティア』)。これもな。このへんになるとついていけない。

2015-11-25 20:12:35
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

教育にはパターナリズムが必須だけど、普通に考えてパターナリズムはリベラリズムとバッティングするんじゃないだろうか。リベラルは「教育を受ける権利」を主張する人が多いかな。リバタリアニズムだと放任でOKってことになりそうだが、リベラルでもそういうイリイチ的な人いないのだろうか。

2015-11-25 20:21:31
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

あまり尊くない諸々の動物に関する探求を子どものように嫌がってはならない。なぜなら、自然本性的なものにはすべて、何かしら驚嘆すべきものがあるからである。byアリストテレス『動物部分論』

2015-11-26 11:30:04
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「痛みをともなう拷問によるガゼルの死は、ガゼルにとっては、拷問が虎によってなされた場合でも人間によってなされた場合でも、同じように邪である」(ヌスバウム『正義のフロンティア』)。この認識、行くとこまで行ったな。

2015-11-26 13:07:01
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「問題は、肉食動物のニーズも考慮に入れなければならないものの、紐につけられた素敵なボールを野生の虎の遊具として与えるというような選択肢がないことである」(ヌスバウム『正義のフロンティア』)。肉食動物のニーズってすげえ言葉だな。

2015-11-26 13:09:13
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

「R・M・ヘアは、ある種の動物を食べるために殺すことは、その殺害が本当に無痛である限り、認められうるとしている。したがって、彼は木槌で頭を確実にたたく地元の魚屋から魚を買うことはあるが、通常の痛みをともなうやり方で捕らえられた魚は食べないという」(『正義のフロンティア』)。成程。

2015-11-26 13:22:18
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

現在の実践・慣行にある驚くべき非対称性は、食料のために飼育されている動物が、家で飼われている動物が保護されているようには、保護されていないということである。この非対称性は除去されなければならない。byヌスバウム『正義のフロンティア』

2015-11-26 13:41:56
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

ヌスバウム『正義のフロンティア』読了。ロールズ正義論をケイパビリティ(可能力)の観点から批判したセンを引き継いで、正義の主題を障碍者、外国人、動物へと拡張する。障碍者と外国人はクリアできても、動物の権利保護の拡張は実現しようとすると確実に財源不足に陥る予感がするな。

2015-11-26 14:13:56
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

野生のガゼルを死の恐怖から救う、っていったい何十世紀になったらできるんだろうか。

2015-11-26 14:14:28
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

そもそも、ケイパビリティ自体、ぼんやりした印象を受けるんだよな。野球選手になりたかったのにあと一歩のところでなれなかった(可能性はあった)男子高校生に対し、ケイパビリティアプローチは、彼に対して何か補填しろ、と命じるのだろうか。その場合、社会はなにしたらいいの?

2015-11-26 14:20:23
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

人間には無限のケイパビリティがあるのではないか。ヌスバウムは、リスト化してくれているが(そしてリストが変更可能だとも言ってるが)、どこかで「標準化された人間像」――ヌスバウムが社会契約論を批判する論点――を導入しない限り、リストの無限化は止められないんじゃないのか?

2015-11-26 14:21:12
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

人間は様々な可能性を諦めながら(切り捨てながら)生きている。ケイパビリティアプローチは、諦めるべき可能性と諦めなくてもいい可能性の間に線を引くことができるのだろうか? よく分らない。

2015-11-26 14:25:33
荒木優太(新しい本が出たよ) @arishima_takeo

ケイパビリティに対するウーン感は、ハイデガーの「本来」に対するウーン感とよく似てる気がする。お前のいう「本来」ってお前が勝手に考えたものじゃないの?という。

2015-11-26 14:27:29