GB鎮守府の航海日誌 2015年07月から09月

kai jester @kai_jest

「さてと、電ちゃんはっと……」 先に入っていた電ちゃんを探すと、近場のカウンターに腰かけていた。 「お先に頂いているのです」 リンゴジュースに見えるが、バーボンだ。この前もそうだった。 #GB鎮守府

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電ちゃんの隣に座りつつ、北上とアカシに席を促す。 四人が横並びに座り、注文を考えていたところにバーテンダーがやってきた。 「お兄さん、イカしたメンツを連れて豪勢だねぇ。なんにします？」 やたらに親しげな野郎だな。 #GB鎮守府

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見たところ三十代半ばといったところだろうか。 金髪にジャラジャラとしたネックレス、胸元が大きく開けたシャツなど、バーテンとホストを勘違いしている様な奴だ。 「とりあえずジンジャエール、ロックで」「なんだそりゃ」目の前のバーテンが嘲笑する。 #GB鎮守府

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「ここは酒を出すところだぜ、そういうのはママに頼んでくれ」 並んだ四人を品定めするような目つきでバーテンが続ける。「ご立派なのは見た目だけおのぼりさんだったかなあ？」 乾いた銃声が鳴る。ホストの様なバーテンは脳天から血しぶきをあげて絶命なされた。あーあ。 #GB鎮守府

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店内が一瞬ざわめくものの、銃を持った俺と死んだバーテンを見ると皆一様にしてそれぞれの席に戻っていった。 「いきなり何やってんのさ提督！」慌てて北上が声をあげる。 「知るかよ、こいつが死にてえって言うんでそうしたまでだ」 「言ってないのです。でも自業自得なのです」 #GB鎮守府

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「おうGB、めったやたらに殺すなって言っただろう」 カウンターの奥からずんぐりとした大柄な男がやってきた。この店のマスターだ。 「あんたこそ店員の教育どうかしてんじゃねーのか。俺の飲むもんはねえってか？」 #GB鎮守府

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マスターは「あぁ、そりゃあいつが悪いな」と答えながら、カウンター下のウィルキンソンを”そのまま”渡してくる。もちろん栓抜きもセットだ。 「ったく、早く出せばコイツも死ななかったのにな」つま先で先ほどのバーテンを蹴飛ばしつつ、俺は開栓し口を付ける。 #GB鎮守府

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「どっちにしろお前は殺してたよ」 「まーどっちでも良いこった。死体の後片付けも注文に入れておいてくれ」 「あいよ、あとのお嬢ちゃんは？」 「じゃあ、私モスコミュール」「ボクはコーラで」 #GB鎮守府

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「ねぇねぇ提督、ここってなんか変じゃない？さっきのこともそうだけど……」 北上が怪訝な顔でこちらを見る。 「人が死んでも驚かねえし、マスク姿の奴らが大勢いるって話か？」 「そうそう、それもなんとなくいくつかのグループに固まってる様な気がするんだよね」 #GB鎮守府

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「そりゃお前、ここが特別な会員制のクラブだってことだよ。俺たち強盗用のな」 店内をぐるっと見渡して、だいたいの席を確認すると、テーブルの一角を指差す。 「あのドクロに角が生えたみたいなマスク被ってる奴らがいるだろ？あれはDeath Wish Clubだ」 #GB鎮守府

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「くそ難しい仕事ばかり専門に受ける奴らだな。手練れが揃ってるぜ」 「何それ怖い」 「次はあのスーツの一団、あれはShadows & trickeryだな。ちなちま隠れてコトを行うのが得意だ」 「目立たないのもそういうことなの？」 #GB鎮守府

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「あそこを見ろ、ガッツリ着込んだ如何にもタフそうな奴らが見えるか？あれがThe Loudで荒事専門の強盗たち」 「なんかテーブルガツガツ殴ってるけど」 「暇なんだろ、ちなみに俺はあそこと親しい。馴染みの奴も大勢いる」 「だと思った。らしい感じだよねー」 #GB鎮守府

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「あとは細々と顔見知りと飲んでるって感じだな。どれにも共通する特徴は”強盗団”って感じじゃなくて、緩やかな”集まり”って感じなところか」 「それって何が違うのさ」 「そうだな……。例えば俺がよく顔を出すのはThe LoudとDeath Wish Clubだ」 #GB鎮守府

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右手のジンジャエールを一口あおり、続きを説明する。 「しかしどーしてもこっそりコトを起こしたい時なんかはShadows & trickeryで仕事仲間を募ることもあるし、あいつらもそうだ」 「ふーん、得意不得意や好みで集まってるみたいな？」 「そういうこった」 #GB鎮守府

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「それにもう一つ、重要な役割がある」 北上が足をぶらつかせながら頬を膨らまして抗議する。 「説明飽きてきたんだけどー」 「まぁ聞けよ。俺たちは仕事をcrime.netで受注してる。今日は銀行、明日は麻薬といった感じにな」 #GB鎮守府

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「しかし、もし仕事に細かい条件を付けたり、あまり大っぴらにしたくない仕事を依頼したい場合、インターネットで見ることができるcrime.netじゃ不都合なことがあるんだな」 「そーれーでー？」 #GB鎮守府

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「おいちゃんと聞け。それでこの店だよ。ここを経由してマイナーな仕事を依頼する場合があるんだ」 マスターがそれぞれに持ってきた飲み物を受け取りつつ、どうでも良さそうに北上は尋ねてくる。 #GB鎮守府

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「それがなんで観光に必要なのさ」 「あ、言ってなかったか」 「大井の馬鹿、こっちに来てから行方不明なんだ」 モスコミュールのグラスが、床に落ちて砕けた。 #GB鎮守府

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一同を沈黙が支配した。 周囲の雑音も姿をひそめたように感じる。 「なんで」 北上は、なんとか絞り出すように言葉を紡ぐ。 「なんでもっと早く言わないのさ！ 観光してる場合じゃない！」 #GB鎮守府

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俺は黙って先を促す。 「犯罪渦巻くDCで大井っちが行方不明？ それでなんで落ち着いていられるの！？」 グラスを回してロックアイスの音を響かせながら、聞き返した。 「話してどうにかなるのか？ 大井の居場所がわかるならそうするぜ」 「はぐらかさないで！」 #GB鎮守府

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「誰もはぐらかしてなんかいないだろ。こうして俺がいて、その秘書艦と主力の雷巡を連れてきてるじゃねえか」 「司令官さんは言うのが遅すぎるのです」 電ちゃんが話を引き継ぐ。 「確かに、今の時点で大井さんの居場所はわかりません。でも」 #GB鎮守府

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グラスのバーボンをあおって話を続ける。 「何の考えも無しにこのお店に来たわけでもありません。必要があったからです」 「……どういう事？」 どうやら少しは落ち着いたらしい。俺が話を引き取る。 「さっきも言ったが、ここは強盗連中の集まる店だ。それは良いな？」 #GB鎮守府

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「酒が出る店で、強盗が集まる。この店はマイナーな仕事を依頼する場でもあるとなると、次第に怪しげな情報や噂話なんかも集まってくるのさ。で」 カウンター内にいるマスターを見やると、そういう事かといった表情で見返してきた。 「俺の出番というわけだな。何を知りたい？」 #GB鎮守府

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多少間延びした有本欽隆声でそう聞かれたので、俺は本題に入った。 「ここ数か月での誘拐、人身売買なんかの仕事で日本人の女が目標だったもの。要人護衛やブツの荷運びなんかも入れてくれ」 「こっちではあまりメジャーじゃないと思うのですが、風俗関係も入れてほしいのです」 #GB鎮守府

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「終わった仕事の話は金がかかるぞ。時間も必要だ」 何でもないかの様にマスターが答える。 「今更金の話かよ、信用ねえな。キャッシュで好きなだけ払う。噂でも良いから調べてくれ。」 「わかった、金の話は後だ。とりあえず調べてみよう」 #GB鎮守府