深夜のトランジスタ回路設計6時間1本勝負(何

とある回路の設計理論
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走れ走れヒノノ二㌧/(╮╯╭)ポテイトウ/齋藤和孝/富士の名水@ぽっけ🐢㌠ @pokke_yamada

そういえば昨日はんだづけカフェに行ったら、多分電子工作は初めてだろうと見受ける男性が、2SC1815一石で増幅してスマホの音声出力をスピーカーで鳴らそうとしていた。そのときに使っていた回路がこれ。ちなみに電源電圧は8V。 pic.twitter.com/jP1RQ0DQr8

2016-01-10 22:38:07
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まぁ、これではスピーカーから聞き取れるようには鳴らないんですよね。周りからは「(カップリング)コンデンサを入れないと」とか言われてましたけど、入れてもこのままではダメ

2016-01-10 22:43:53
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まず、さっきの回路からスピーカーを切り離してトランジスタ(2SC1815)のコレクタ電圧がいくらになるか考えてみる。 なお、仮にトランジスタの直流電流増幅率hfeは100とする。 pic.twitter.com/AVftG5MOHt

2016-01-10 22:56:11
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まず、トランジスタのコレクタ電圧をX[V]とし、ベース-エミッタ間飽和電圧VBE(sat)を0.7[V]とする。 このとき、1kΩに流れる電流は(8-X)÷1[mA]、220kΩに流れる電流は(X-0.7)÷220[mA]。 pic.twitter.com/IaH9Huwm79

2016-01-11 00:02:10
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1kΩに流れる電流I(1kΩ)と220kΩに流れる電流I(220kΩ)の間には、I(1kΩ)=(hfe+1)×I(220kΩ)の関係が成り立つ。 このときXについて解くと、X=5.70[V]となる。 pic.twitter.com/eu1eI5yH5I

2016-01-11 00:29:51
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ここで、カップリングコンデンサを介してスピーカーを接続すると、コンデンサに充電されて、十分長い時間のあとにさっきのコレクタ電圧5.7Vがコンデンサに溜まる。 pic.twitter.com/3U2CrSgoOA

2016-01-11 00:53:53
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このとき、出力電圧がどの範囲でスイングするか考えてみる。 まずマイナス側は、トランジスタが完全導通状態(コレクタ電圧が0V)を考えればいい。そうすると、コンデンサに溜まった電圧がそのままスピーカーに出力されるから-5.7Vとなる。 pic.twitter.com/Teapd287pi

2016-01-11 01:13:25
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次にプラス側を考えてみる。このときはトランジスタが完全オフ状態を考えてみればいい。 このとき、電源電圧からコンデンサの充電電圧を引いた残りの2.3Vを1kΩとスピーカーで分圧する形になるので、出力電圧は約0.018Vとなる。 pic.twitter.com/WCUOUKaNZm

2016-01-11 01:21:30
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このように、出力電圧は非常に偏った形となるので、大きな音を出そうとするとすぐに歪むことがわかる。 実際には大きな入力があったときにコンデンサがどんどん放電されてしまい、数10mV程度にまで落ちるので、とても小さな音で「ガリッ……ガリッ……」としか鳴らない。

2016-01-11 01:25:41
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ではここで、2SC1815を使ってインピーダンス8Ωのスピーカーを鳴らすときの、無ひずみ最大出力電力を求めてみようと思う。 2SC1815の絶対最大コレクタ損失は400mWだから、これを超えない条件とする。 決め手はコレクタ抵抗と、コレクタバイアス電圧である。

2016-01-11 02:14:53
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無ひずみ最大出力電力を与えるコレクタバイアス電圧を、改めてX[V]とおく。また、コレクタ抵抗をY[Ω]とおく。 詳しい解説は省くが、コレクタ電圧が2Xになったときにトランジスタはちょうどコレクタ電流が0となる。 pic.twitter.com/zd4LsJnb9S

2016-01-11 02:15:54
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これも詳細を省くが、コレクタ損失が最大となるのはスピーカー出力電圧が0Vのとき、すなわちコレクタ電圧がX[V]のときである。 このときのコレクタ損失が2SC1815の絶対最大定格400mWを超えないようなコレクタ抵抗を求めればよい。 pic.twitter.com/mHSf3AHr4U

2016-01-11 02:19:19
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また、出力電圧がマイナスの最大値、すなわちコレクタ電圧が0Vのときに、コレクタ電流は最大になる。 このときのコレクタ電流Icが、2SC1815の絶対最大コレクタ電流150mAを超えないようにもしなければならない。 pic.twitter.com/hd2zRI6At4

2016-01-11 02:40:21
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2SC1815に限って言えば、実際には最大コレクタ電流による制限が一番厳しい。よって、  (8-X)×(8÷(Y+8))=X  8÷Y+X÷8=0.15 これを解いて、X=0.555[V]。Y=99.3[Ω] 但し、このままだとコレクタ電圧が低すぎてベースバイアス電流が流せない。

2016-01-11 03:42:22
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そこで、このように回路を変える必要がある。このときコレクタ電流Icは(8-0.555)÷99.3=75[mA]なので、そのhfe分の1のベース電流が流れればいい。よってベース抵抗は(8-0.7)÷(75÷100)=9.73[kΩ]。 pic.twitter.com/5MDqdgWF3B

2016-01-11 03:55:51
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なお、このときの出力(無ひずみ最大出力)は、正弦波換算で  0.555^2÷2÷8=0.0193[W] となり、やはり蚊の鳴くような音量にしかならない。 pic.twitter.com/ya9R93MdTm

2016-01-11 04:06:08
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もし元の回路の形にこだわるなら、無信号時のコレクタ電圧を任意に設定して計算すればいい。たとえば3Vに設定するなら  (8-3)×(8÷(Y+8))=X  (8-3+X)÷Y+X÷8=0.15 の連立方程式を解けばいい。 pic.twitter.com/73HYMdiwfs

2016-01-11 04:22:43
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このとき、X=0.536[V]、Y=66.7[Ω]、Z=3.06[kΩ]。無ひずみ最大出力は18mWとなる。 まぁ、いずれにせよ大した出力は期待できないことがわかる。 pic.twitter.com/dPbrM5WmXC

2016-01-11 04:45:48
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つーか、何故僕はたかだか一石トランジスタ回路に6時間も熱くなっているのか・・・ ( ̄△ ̄;;;)

2016-01-11 04:57:41
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ちなみに、こんな重要な計算が、どこの本にも載ってない。 すごく重要なことなのに、かの有名な「定本 トランジスタ回路の設計」(CQ出版社)にも載ってない。 唯一僕が確認できたのが「実用電子回路設計ガイド」(総合電子出版社:絶版)に、ほんのさわりだけ載っていた。

2016-01-11 05:03:30
走れ走れヒノノ二㌧/(╮╯╭)ポテイトウ/齋藤和孝/富士の名水@ぽっけ🐢㌠ @pokke_yamada

実のところ、僕はこういう計算方法を独学で習得している。 そのあとで実用電子回路設計ガイドを入手して、手法が間違っていないことを確認した。それまでは本当にこの方法で正しいのかすら確認できなかったんだ。

2016-01-11 05:08:21
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余談だけど、トランジスタの最大定格に余裕があるならば、無ひずみ最大出力を決めるのは唯一コレクタ抵抗のみであって、その値はスピーカーのインピーダンスの√2倍のときである。 実際には多少増減してもあまり違いは無いので、1.4~1.5倍で計算するのがいいと思う。

2016-01-11 05:12:42

つづく!!\(^_^)/