女騎士ハラミを焼く#3 肉の死闘◆2

コテコテの中編ファンタジーツイッター小説です。 予備知識必要なし。バトル、戦略、そしてバトル! 主人公はカワイイ女騎士!  対するは異形の怪物。戦いの行方は……ただしこの女騎士、少々戦いが嫌いなようで。 前↓ 続きを読む
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減衰世界 @decay_world

女騎士ハラミを焼く#3 肉の死闘

2016-01-18 17:30:20
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_肉鎧に組み伏せられるセリマ。体重と腕力で、セリマの逃げる道などない。死を覚悟する。めまいがする。肉鎧はゆっくりとセリマの首を絞める。肉鎧の力が戻っていくのが分かった。解毒システムが存在するらしい。もう、終わりだ。 71

2016-01-18 17:39:31
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(なんて馬鹿なんだろう、なんてみっともないんだろう。負けたら死だ。それ以外の何物でもない。これで終わりだ。結局最後までかっこよくもないし、好かれることもなかった。さよなら)  セリマが抵抗をやめて、目を閉じた。そのとき。 72

2016-01-18 17:44:36
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_衝撃が一閃。重い音がした。肉鎧が悲鳴を上げて、セリマの首から手を放す。腫れた瞼をゆっくり開けるセリマ。  その眼には、肩に突き刺さっているクロスボウのボルトが見えた。青いストライプの矢羽。不愉快な叫び声をあげて身をよじる肉鎧。 73

2016-01-18 17:48:52
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(ダメだ、全く効いていない)  肉鎧は痛みに怒りを震わせているが、致命傷には程遠い。毒無しでは、クロスボウも無意味だ。誰か来てくれたようだが、毒矢を届ける位置にその味方はいない。 74

2016-01-18 17:52:52
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_肩に手を回して、クロスボウのボルトを引き抜く肉鎧。血が噴き出すこともない。傷口はすぐにふさがったようだ。 (頭がいいんだからできるはずだ)  思い出すのは金髭のエリートのセリフ。諦めに染まった脳内に怒りの生命力が灯る。 75

2016-01-18 17:58:19
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_目の前で引き抜いたボルトを折る肉鎧。醜く膨れ上がったその顔は、勝ち誇った嫌らしい笑みだった。再び首に手を持ってくる。そしてさっきよりも強い力で締め上げる。抵抗するセリマの手に、何かが当たる。鋏のペンダントだ。一つのアイディア。鋏の欠陥を思い出した。 76

2016-01-18 18:04:11
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_セリマは血の混ざった唾を飛ばして叫んだ。 「頼む! もう一度撃ってくれ!」  声を張り上げる。叫ぶ。力の限り、叫ぶ! 「頼む!」  肉鎧の力はどんどん強くなる。もうすぐ叫べなくなるだろう。 77

2016-01-18 18:08:22
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「効いてないぞ!」  見知った声が返る。 「いいから……ぐっ」  首が締まった。もうこれ以上は叫べない。息が止まり、顔が赤くなっていく。はやく……はやく。両手で鋏の……アーティファクトを握る。魔力の流れを意識する。意識が遠くなっていく。 78

2016-01-18 18:13:14
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(お前は頭がいいんだからできるはずだ)  思い出す言葉。クロスボウの発射を待つ。 (戦っている君が好きだよ)  そんなことも言われた。肉鎧を腫れ上がった眼で睨み返す。身長は3メートルはあるだろうか、肩が膨れ上がっている。十分だ。 79

2016-01-18 18:18:26
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(いいか、私はお前に思い知らせてやる。私は頭が良くて、誰よりも強い騎士だ。肉に当たることだってない。そして……戦っている姿が……美しいんだ!)  月明かりの下、クロスボウの発射音。風はなく、その音は天高く響いた。 80

2016-01-18 18:21:16
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女騎士ハラミを焼く#3 肉の死闘 ◆2終わり ◆3へつづく

2016-01-18 18:21:54