K_OSANAI氏による観客と劇団の距離の変遷まとめ

小劇場劇団と観客の関係が70年代80年代90年代とどのように変遷してきたかを簡潔に説明されていたツイートでしたので勝手にまとめさせてもらいました。このようなことがあったなんて全然知らなかった。誰でも編集可能にしています。
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K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 おはようございます。大変お待たせいたしました。星様から賜りました珠玉のお言葉に対し、徐々に応答させていただきたく存じます。

2011-01-25 07:17:37
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 続)「珠玉のお言葉」というのは勿論厭味でも贅言でもありません。やはりインサイダーという立場は言論では大変な強みだと思います。一方で、星様の現在のお立場を考えますと、劇場ご経営との兼ね合いから自ずと制約があろうとは理解しております。どうかご無理のない範囲で。

2011-01-25 07:17:55
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 続)そして今日明日と星様があまり呟けないことの由。恐縮ではございますが之を奇貨といたしたく存じます。現在意見交換させていただいている類の議論は、チャット並みの往還ですとなかなか考えが深まらないまま反応速度勝負になってしまうことを危惧いたします。

2011-01-25 07:18:22
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 続)従いまして、ゆるゆるとした公開往復書簡的に意見交換させていただけますと幸甚です。昨朝ご共感賜りましたとおり、(お互い?)すまじきものは宮仕えの身ですので(笑)。

2011-01-25 07:18:41
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 続)またツイッターの長所ですが、ご覧いただいている方々が横から入ってくださって、その方の体験談をお話しいただけたり、ご高見や異議を賜れる"可能性"は開かれております。経験上、大きな期待は抱いておりませんが、賜れれば僥倖くらいの気持ちで。では参ります。

2011-01-25 07:19:17
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 1) http://bit.ly/eyjBVY 「我々の世代の演劇人は、作品そのもので観客とコミュニケーションを取ることに全力を傾けてきました」 ご直観ではなく事実として仰るとおりだと思います。少なくとも90年代はそうだった、と私の体験からも申せます。

2011-01-25 07:19:37
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 2)例えば90年代前半のTops(ぎりぎり小劇場と言えましょう)を想起します。ショーマや東京サンシャインボーイズは多くここで公演していましたが、客出しが終わらないのに川原和久さんや西村雅彦さんが降りていらして観客と歓談する、なんてことはありませんでした。

2011-01-25 07:20:34
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 3)一方、ご高承のとおりショーマはファンクラブを持っていて、1年に1回程度イベントを行っていました。寸劇はありましたが主は役者さんと会員との交流で、西田薫さんや高橋美紀さんと作品や役につき会話でき、2ショット写真も撮り放題という素敵イベントでした(笑)。

2011-01-25 07:20:55
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 4)つまり、そのような形で公演=作品そのもので観客とコミュニケーションを取る機会と、役者さんと(関係者でない)観客とが直接交流する機会とは、かなりはっきりと分かたれていたと記憶しています。

2011-01-25 07:21:57
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 5)それが当時の作法であり、おそらく劇団や役者さんたちがごく自然に内面の規範としていた「けじめ」でありある種の「矜持」だったのだと思います。劇団制作さんや作・演出家さんと、劇場内で公然と直に作品について会話されていたのは、ごく一部の劇評家さんでした。

2011-01-25 07:22:20
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 6)少し余談めきますが、90年代前半、私の仲間内で「初日7列目のハゲ」と親しみと羨ましさを込めてお呼びしていた方がいらっしゃいました。本当に全ての芝居で、初日に行けば7列目中央にハゲが座っている。さてどなたか。星様のご想像されているとおりの方です。

2011-01-25 07:22:40
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 7)はい、小田島雄志先生でした。先生が例えばキャラメルの加藤さん、サードステージの細川さん、遊眠社の高荻さんらと親しげに会話されているのを目にし、「くーっ、羨ましい!」と歯噛みしていたことを思い出します。

2011-01-25 07:23:03
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 8)勿論、先生ご自身はとても気さくな方でした。ある公演の開場前、俳優座劇場のロビーで珍しくお一人でいらしたところを発見し、チャンス!と思った私は当時駒場の新入生であったというその一事を頼み&とば口にして話しかけ、楽しく会話することに成功しました。

2011-01-25 07:23:26
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 9)既に退官されて本郷裏の文京女子短大に移られたこと、当時進めておられたシェイクスピア新訳のこと、最近面白かった芝居のこと。夢のような15分間でした。初日7列目のハゲは大カリスマであり、スターであり、手の届かない人でした。演劇関係者とはそういう存在でした。

2011-01-25 07:24:40
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 10)一方勿論例外も。91年、青年団をこまばアゴラ劇場に観に行った際、終演後ほぼ間を置かず、役者さんたちが一升瓶片手にざざっと客席へお出でになり、「どうぞどうぞ、お話ししましょう」と語りかけてこられたときにはびっくりしました。今どうなのか分からないのですが。

2011-01-25 07:26:04
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 11)あくまでも一観客の視点ですが、90年代前半、興行側と観客との関係をがらっと変えた中心にいらしたのは、キャラメルの加藤さんでした。実際私もその渦中にあり、後に刊行されたご高著『いいこと思いついた!』に種々綴られているものと記憶しております。

2011-01-25 07:26:23
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 12)当時、演劇界では観客を単に「客」と呼ぶことが習わしだったようでした。彼はまずそこから変えました。「お客さん」と呼びましょうと。その後も次々と新しい試みを打ち出されましたが、それらは全て「顧客志向」なものだったと言い得ると思います。

2011-01-25 07:26:45
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 13)彼はおそらく、単に裏方として劇団運営&経営を業とする「制作」ではなく、「製作」として世に現れた初の大物だったのでしょう。高橋いさを氏『ブラック・フラッグ・ブルース』や三谷幸喜氏『天国から北へ3キロ』など座付以外の作家とのコラボで観客を楽しませました。

2011-01-25 07:27:36
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 14)彼は観客と興行側、特に役者との距離をどんどん詰めました。その戦略が大成功を収めたからこその今のキャラメルなのでしょうが、その過程で当然に問題が発生しました。西川さんや上川さんら、所謂スター男優たちを目当てにした女性客の出待ちと接触でした。

2011-01-25 07:27:59
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 15)上演後ですから役者さんたちは当然に疲れています。でも支えてくれるファンの皆さんを無碍にもできません。劇団が大きくなり大箱での上演。体力勝負。その後の出待ち。役者さんたちはどんどん疲弊していきました。

2011-01-25 07:28:47
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 16)流石というべきか、加藤さんはここでも問題をオープンにし、広報誌『ハテナ気象台』等を以て観客に訴え、かつ問いました。役者は舞台から最高のエンターテインメントを皆さんに届けるため全力を出し切って疲れている。だから出待ちはやめて欲しい。そこは切って欲しいと。

2011-01-25 07:30:27
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 17)冷たく言えば観客と役者との距離を詰めに詰めたツケでしょう。しかし彼はまた勝利を収めます。今でも忘れません。本件を巡り『ハテナ気象台』に掲載された一人の観客、K・Mさんからの投稿「拍手という花束を持って」。これが惹句&合言葉となり出待ちは沈静化しました。

2011-01-25 07:32:03
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 18)一方で、観客のあまりの熱狂を制御し切れず(勿論それはどうしようもないことです)疲弊した劇団もありました。第三舞台です。出典(掲載媒体)は忘れましたが、鴻上さんが非常に印象深い文章を記されています。

2011-01-25 07:32:21
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 19)ある熱狂的なファンが、花を胸の前に握りしめ、関係者口の中に無言で佇む。スタッフが「ご関係の方ですか」と声をかける。彼女は無言。「ご関係の方以外はご遠慮願っています。お花はお預かりします。○○に必ず渡しますので」彼女は敵意を湛えた目で無言のまま動かない。

2011-01-25 07:33:28
K_OSANAI @two_boats

.@hoshi_a1 20)スタッフははっきりと疲弊する。しかし彼女をどうすれば良いのか。役者に会わせるわけにはいかない。どうすれば良いのか。彼女に何と言葉をかければ良いのか。スタッフ1人の疲弊は劇団全体に伝播します。観客との関係の中で、劇団そのものが疲弊していったことでしょう。

2011-01-25 07:34:09