『みすず』5月号:伊藤浩志「なぜ「不安」は消えないのか1.―生物学的合理性から見た福島原発事故」について

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「みすず」5月号できあがりました! 執筆陣は小沢信男、大谷卓史、外岡秀俊、ギンズブルグ、ロス、伊藤浩志、岡真理、大井玄、池内紀、ブレイディみかこ、斎藤貴男、植田実(敬省略) 目次は msz.co.jp/book/magazine/ pic.twitter.com/TIxM19IhGH

2016-05-02 18:37:21
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もうれつ先生 @discusao

twitter.com/misuzu_shobo/s… 「みすず」5月号の伊藤浩志「なぜ「不安」は消えないのか1.―生物学的合理性から見た福島原発事故」って記事はかなり微妙な内容。

2016-05-23 19:12:07
もうれつ先生 @discusao

筆者の伊藤浩志は福島医大特別研究員で、放射線被曝における「不安」をめぐる政府・専門家・市民等の言説を研究とのこと(「みすず」執筆者紹介より)。内容は「安全安心論」の批判もしくは補強という、二面性を持ったもの。 twitter.com/discusao/statu…

2016-05-23 19:18:27
もうれつ先生 @discusao

見出し: ・はじめに ・不安(主観)と科学(客観)の狭間で  1.見かけ上進む復興・帰還政策  2.深刻な母親のメンタルヘルス  3.行き詰まる安全安心キャンペーン  4.フレーミング問題  5.「サイズ効果」とは何か  6.「過度な」不安の背後にある生物学的な合理性

2016-05-23 19:25:41
もうれつ先生 @discusao

伊藤浩志「なぜ「不安」はきえないのか1」要旨: 5年以上が経ち、帰還・復興政策が加速しているが、政府(帰還しても健康リスクが高まる可能性は小さい)と少なからぬ被災者(健康影響に不安を抱き続け、元の土地に戻らざるを得ない帰還政策に不信感)との溝が埋まる気配はない。

2016-05-23 19:56:22
もうれつ先生 @discusao

政府はこれまで、科学知識に乏しい被災者が放射線に「過度な」不安を抱いており、正しい科学知識を身につければ不安は解消するとの見地から、安全安心キャンペーンを展開してきた。しかし、今回の原発事故では、どの程度の健康リスクが生じるのか、科学者の間でさえ議論が続いている。

2016-05-23 19:57:53
もうれつ先生 @discusao

低線量被曝による健康リスクの見積もりに、高い不確実性がともなっているからだ。提供される情報の不確かさが、特に小さな子供を抱える母親の不安を増幅している。

2016-05-23 20:00:31
もうれつ先生 @discusao

福島第一原発が県の中で経済的に最も貧しいとされた地域に建設されたこと、原発作業員の多くが下請け業者であることなどを例示し、原発由来の放射線は自然放射線と違い全ての人に公平に降り注いでいるわけではなく、社会経済的格差が上乗せされている(リスクは格差によって配分されている)とする。

2016-05-23 20:10:51
もうれつ先生 @discusao

被曝による発癌リスクが「他の要因による影響で隠れてしまうほど小さい」ことは、健康影響がないことを意味しない。にもかかわらず、政府は、被災者の抱える不安は知識不足から生じる過剰な不安であり、正しい科学知識を身につけることで解消できるとの解釈を前提にしたリスコミ活動を展開している。

2016-05-23 20:16:54
もうれつ先生 @discusao

しかし、「私が無知だったために、しなくていい被曝を子供たちにさせてしまった」と自分を責める母親の苦悩には、国による安全安心キャンペーンは成果を上げているとはいいがたい。 福島医大・大津留晶「住民の感情的リスク認知と医療者・科学者の科学的リスク認知が噛み合わないためではないか」

2016-05-23 20:23:38
もうれつ先生 @discusao

坪倉正治「数字の話(=科学的事実)と、社会の感覚との折り合いをどうつけるか4年間取り組んできたが、数字だけで議論できず、ギャップは埋まっていない」 なぜ、科学による客観的リスク推定値と被災者の主観的リスク認知のギャップは埋まらないのか?フレーミング(問題を切り取る視点)が重要だ

2016-05-23 20:28:15
もうれつ先生 @discusao

疫病対策の選択肢をポジティブなフレームで切り取るか、ネガティブなフレームで切り取るかで選択結果に違いが現れる。 例:予想される疫病に対する対策 A案 確実に600人中200人が助かる B案 1/3の確率で全員が助かり、2/3の確率で全員死亡 この二択の実験では78%がAを選択。

2016-05-23 20:34:48
もうれつ先生 @discusao

A案・B案の別ヴァージョン C案 確実に600人中400人が死亡 D案 1/3の確率で誰も死なず、2/3の確率で全員死亡 この場合、78%がDを選択(全ツイートのA案は、正しくは「72%」でした)。

2016-05-23 20:40:10

訂正)
× 全ツイートのA案
○ 前ツイートのA案

もうれつ先生 @discusao

「年間20mSvで安全」と説明する専門家も、いざ自分が当事者となるとフレーミングが変わり、被災者と何ら変わりがなくなる可能性が高い。

2016-05-23 20:44:17
もうれつ先生 @discusao

放射線の講義を救急救命研究所の研修生100人に、「あなたが科学的に納得できる1年間の値(放射線量)はどれですか?」と質問すると、「20mSv」と答えた研修生が最も多かった。

2016-05-23 20:46:54
もうれつ先生 @discusao

次に多かったのが「50mSv」だった。同じ研修生に「家族と一緒に住むときはどの値にしますか?」と聞くと、「20mSv以下」の回答が圧倒的に多くなった。別のクラスの研修生100人に、「あなたが(一般住民を)避難させる立場だったら…」と質問すると20mSvが最も多かった。

2016-05-23 20:49:33
もうれつ先生 @discusao

救急救命九州研修所の郡山一明「自分が当事者ではない場合には、科学的な値で他者を説得しようとするけれど、自分が当事者の場合には、科学的な値では納得しない、こういうこころの動きがありそうだ」

2016-05-23 20:53:22
もうれつ先生 @discusao

人は10回ないし100回チャレンジできるギャンブルだと、客観的確率に従い堅実な賭け方をするが、1回しかチャレンジできないと分かると、リスクが高くても儲けが大きい賭け方をするようになるという。

2016-05-23 20:57:13
もうれつ先生 @discusao

幼い子どもを抱える母親が、一度しかない我が子の人生を案じて、安全か危険か、自分の信念の度合いに基いて白黒つけようとするのはもっともなことだ。> だいたいこんな要旨。

2016-05-23 20:57:55
もうれつ先生 @discusao

「今回の原発事故では、どの程度の健康リスクが生じるのか、科学者の間でさえ議論が続いている。低線量被曝による健康リスクの見積もりに、高い不確実性がともなっているからだ」 と 「なぜ、科学による客観的リスク推定値と被災者の主観的リスク認知のギャップは埋まらないのか」 という二つの文。

2016-05-23 21:06:50
もうれつ先生 @discusao

この二つの文で「科学によるリスク」の整合性は整っていない。前者は「議論が続いており」自明性は強くないが、後者では主観的リスク認知との対比のせいもあり自明的で結論が出ているものとして位置している。

2016-05-23 21:13:55
もうれつ先生 @discusao

認識が分裂している現状を表現しているのかもしれないが、出だし(前者)にあった「議論が続いている」という認識は後半では全くなくなっている(というか、「はじめに」だけ言及され、本文が始まると掻き消えてしまっているといった印象だ)。

2016-05-23 21:16:35
もうれつ先生 @discusao

また、「フレーミングの問題」というのにも疑問がある。研修生の回答は、他者を避難させる立場なら20mSv/y、家族と一緒に住むなら20mSv/y以下、科学的知見としては20mSv/y(次点50mSv/y)であり、「家族と一緒に住む」という条件は自分が当事者であるだけでなく家族もいる

2016-05-23 21:24:16