Orphe兄貴のマイアミ鎮守府 2014年8月

とある艦これ鎮守府の記録
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orphe @orphechin

羽黒と大和は至近の位置で対峙する。 提督と卯月も同じく。 大和の仲間である霧島、長門、武蔵は動揺と共に四名の鄒勢を眺める他なかった。羽黒への近接攻撃はすなわち死。かといって卯月に加勢すれば誤射の危険がある。卯月にダメコンはなく、万一の命中は即死を意味する。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:03:23
orphe @orphechin

大和と羽黒の砲が同時に鳴り、二者の艤装が歪んで砕け飛ぶ。飛び道具を失い、二名とも残るは夜戦闘法。すなわち四肢を以て為す対艦格闘である。 羽黒の、臓腑を抉る手刀。これに対し敢えて大和は直撃を甘受。腹部より大量出血。一方でシックス・バックが羽黒の手を拘束。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:07:13
orphe @orphechin

大和の正拳が羽黒の顔面を打たんとする。寸前羽黒は片方の手で流す。とはいえ主砲同然の威力のそれは、受け流した羽黒の腕の骨にダメージを与えた。 旗艦二名ともに負傷、同時に提督二名にもダメージ。マイアミ側の動きが激痛で乱れる。一方の卯月は口から出血するも乱れなし。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:10:21
orphe @orphechin

「なるほどこれが狙いか!いいぞ大和!後は私がこのカスを殺してやる」 小躍りしながら、卯月が蹴り- 俺は辛うじてそれを回避。 避けたところにお定まりのテレフォンパンチ- 這いつくばって避ける。 踏み砕き- 転がる。 嘲笑。「必死だな、カス」 俺は中指で応答。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:13:28
orphe @orphechin

大和は羽黒の攻撃を致命にならぬ程度に受け、その間に微弱なダメージを相手に与える。このカウンター戦法は大和の勝利を約束するものでは無論なかったが、提督二名の死合の帰鄒に影響を与えるには十分であった。 ケッコン下におけるダメージ修復は、提督の生命力を犠牲とする。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:16:26
orphe @orphechin

駆逐艦と人間の耐久力の差異が、この場合明確に現れる。羽黒のわずかな損傷においても、人間である提督には大きな負担となるのだ。後は卯月が、弱った提督を殺せばいい。 だが。 「おいどうした、ピンチだぞ。当ててみろやボロ駆逐」俺は息を荒げながら啖呵を切る。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:19:39
orphe @orphechin

「ボロ切れ同然の人間が」卯月は唾を吐く。「お前の大事な羽黒は大和を殺し切れない。そしてお前は私の攻撃をいつまでも避け続ける事はできない。蟻地獄に填まったアリが強がるなどとは滑稽だ」 「じゃあさっさと食えよ。キレるだけでアリが口の中に転がり込むと思ってんのか」 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:24:06
orphe @orphechin

卯月の連撃- 鈍くなる足取りで、重くなる上半身で、霞む目で、限界を迎えつつある五体を使ってヌーブな駆逐艦の攻撃を避け続ける。 なぜ当てられない?あいつの頭には至極当然の疑問と苛立ちが糞みたいにべったり張り付いてるだろう。 いいザマだ。 気持ちがいい。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:26:46
orphe @orphechin

艦娘になったとはいえ、人間の攻撃なんてある程度のパターンの集成でしかない。それが素人、ましてや頭に血の上ったバカならば、殺しのポートフォリオはますます貧弱になる。はた目から見てブタと分かる札に賭け続けるアホ。なぜそんな奴の手札に俺が負けると思うんだ? #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:29:38
orphe @orphechin

俺はもっともっと多くの手札のバリエーションを見てきた。 銃の使い手。人を痛め付けるために工夫を凝らし、チェーンやバットを使い分けるサイコ野郎。犬畜生。ヘロインで痛みを感じない屈強な用心棒。島風みたいに早い居合使いの殺し屋。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:33:01
orphe @orphechin

サディストの糞警官。スタンガン使いのオカマの刑事。そいつら相手に何十回何百回と殺され、殺し返した、あのフロリダでの狂った経験。 そして鎮守府では、羽黒に何万回となく殺された。 いいか、お前みたいな奴とは積み上げたモノが違うんだよ、ド素人。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:36:25
orphe @orphechin

だからこの綱渡りを俺はやりとげる。二日酔いの状態で、目を瞑ってでもやれる楽なサーカス。 その間に必ず羽黒は勝機を掴む。 だから- 卯月のパンチをイベイドし、耳元で怒鳴る。 「蟻地獄に填まってるのはてめえの方だ!」 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:39:11
orphe @orphechin

羽黒は攻撃を止め、構えを崩さず対峙する。これ以上の試行は奴の術策に嵌まるのみ。故に戦法を変える。 羽黒の目に赤い光が満ち、深紅の眼球へと変貌していく。 大和も最大限の注意を払い、その目をじっと見据える。 我が戦術に毫も揺らぎなし。被害を最小限に留めるべし。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:44:24
orphe @orphechin

大和は決然と、眼前の狂犬の眼光に怯まず対峙する。侮りも恐怖ももはやない。むしろ歓喜さえ覚える。 孤独な単純作業の過程で得た限界突破の力。当初は良い感触を覚えなかったが、強敵を相手にする今となっては、その力は頼もしい。 大和の目にも、次第に赤い光がたゆたう。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:51:11
orphe @orphechin

その瞬間を羽黒は逃さなかった。 羽黒が飛ぶ。 大和が気づいた時には、彼女の頭に羽黒の両手がかかっていた。二人の顔が、接触寸前まで近づく。 首を折るつもりか?いずれにせよ防御の手段を二つとも放棄するとは無謀。大和は羽黒のがら空きの腹部に正拳を打ち込む。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:55:25
orphe @orphechin

主砲に匹敵するそれは、羽黒の臓腑を無慈悲に打ち、背中から飛び散らせた。提督のマスクの隙間から暗く濁った血がぼたぼたと垂れ流され、膝を着く。卯月は提督の顔を掴み、首を引きちぎり、蹴飛ばす。「もうこれでダメコンはない。次でお前は投了だ、カスめ!」卯月は嘲笑する。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 11:58:29
orphe @orphechin

「お前の飼い犬、とうとう狂ったみたいだな!お前が苦しむ姿に耐えきれず、自暴自棄の自爆で無理心中か!嗚呼なんたる友愛と労り!お前の喚いた啖呵と合わせて、今世紀最大のギャグになってくれたよ!」 卯月は引きちぎった俺の頭からマスクを剥ぎ取る。 「ガキが、いいザマだ」#マイアミ鎮守府

2014-08-07 12:02:40
orphe @orphechin

そして盛大に叩きつける。 俺の元の頭がスイカのように割れて飛ぶ。 「もう一度同じことしてやるよ」 女神が失われた俺の頭を修復し、視界が戻る。マスクはない。 「ガキめ、ガキめ、ガキめ!お前の艦娘もお前ももう終わりだよ」 「いや、チェックメイトはお前の方だ」 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 12:05:52
orphe @orphechin

ポケットからタバコの最後の一本を取りだし火をつける。痛め付けられた肺に煙が染みる。 「お前も気が狂ったのか?それとも、あいつの行動に説明が出来るとでも?」 「知るか」俺は煙を吐く。 「だが羽黒は戦いを放棄などしない。敵を殺すまでは決して動きを止めない」 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 12:09:03
orphe @orphechin

羽黒と大和は対峙したまま、互いに微動だにしない。それを見て卯月が狼狽える。 「何をしてる大和!動け、殺せ!」そして長門たちを怒鳴る。「お前らもさっさと加勢しろ!重巡ひとりに何てザマだ!」だが長門たちは怯え、近づこうとしない。明らかに危険だと判断しているのだ。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 12:12:16
orphe @orphechin

大和は羽黒から眼を放さない-いや、放せなかった。羽黒の深紅の目の中に写る世界に、大和は引きずり込まれていた。赤黒く広がる天上と海原。燃え上がる艦。数多の人々の叫び。海の中から無数の血濡れの手が延びる。大和は自分の体に、その手が絡み付くのを幻視した。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 12:15:55
orphe @orphechin

大和の脳裏にノイズが走る。 そして億千のプロペラ音が大和の鼓膜を乱打する。赤い空をさらに紅に染め上げる炎上する航空機の群れ。それが大和を目掛けて一斉に飛び掛かる。耳にも口にも目にもそれらが入り込み火花を散らす。そして海の底から、左の足を掴む無数の手が延びる。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 12:20:14
orphe @orphechin

燃え上がる飛行機たちが、大和の上体を上へと引き上げようとする。 海からの手が、大和の下半身を水底に引きずり込もうとする。 やめてくれ。 懇願の度に上下からの力は増していく。大和の無敵の身体が細部から悲鳴をあげ、痛覚神経が粗雑に千切り取られる感覚が全身を襲う。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 12:23:34
orphe @orphechin

「なんだこれは!」 卯月が悲鳴をあげる。 大和の身体の四方から赤い光が迸る。光が激しくのたうつ度、大和の身体の各所が歪み、収縮と膨張がランダムに生成される。 こうした状況で、二名の目はじっと互いを見据えている。大和は恐怖の表情で、羽黒は狂犬の相貌で。 #マイアミ鎮守府

2014-08-07 12:27:27
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