【ライフ・イズ・ディザイア・ノット・ミーニング】#1
「あの様子じゃ、ダメそうですね」そしてふと左手を見つめる。ナヅケノミコン。あの本に刻まれた名前を持つ者が、そうも簡単に死ぬとは思えないが。「これもまた何か意思でしょうか…しかし、名付けの意味が無いですねぇ」彼はボトルを数本手に取ると、ゆったり外へ向かった。22
2016-07-17 21:13:14門の前では相変わらず、見窄らしいボロ切れが機能停止したオイランロイドめいて座り込んでいた。「ドーゾ」ゴッドファーザーが目の前に水のボトルを差し出すと、エンデューロは再びピクリと動き、震える手でボトルを受け取り、一気に飲み干し始めた。ゴク…ゴクゴクッ!「やはり休んで行っては?」23
2016-07-17 21:16:10ゴクゴクゴクゴク!「怪我も酷いですよ?」ゴクゴクゴクゴク!!「……何かに追われているんですか?」そう問いかけた時、エンデューロは3本目のボトルをカラにし大きく深く息を吐いた。そして「……ワカラナイ」小さく答えた。24
2016-07-17 21:19:32「そもそも何処に?」「ワカラナイ」ゴッドファーザーはため息をついた。これ以上の問答は時間の無駄か。エンデューロは再び大きく息を吐くと、「水、アリガトゴザイマス」深々と頭を下げた。そしてゆっくりと、まるで産まれたてのバンビめいて震えながら立ち上がった。足元は全くおぼつかない。25
2016-07-17 21:22:36ふらり、ふらりと揺れ動き、やがて、やっとの思いでバランスを取ると「助かった。ゴッドファーザー=サン…これで走れる」そう言った。「はぁ」ゴッドファーザーの目には到底これから何処かへ走り去る者には見えはしなかった。「ナンデ走るんです…」ゴッドファーザーはもはや呆れた顔で呟いた。26
2016-07-17 21:25:46「ナンデ……ワカラナイ…」「それもわかりませんか」「………ゴッドファーザー=サンは、ナンデ、俺に名前を?」不意に、エンデューロがそう言った。「エッ」ゴッドファーザーは言葉に詰まる。ナンデ?名付け?…一瞬考えた彼は「さぁ?ナンデでしょう」とぼけた様な答えを返すしかなかった。27
2016-07-17 21:28:51ナヅケノミコン、これを解き明かす事に何か意味などあっただろうか。何かあったはずなのだ。しかし。「では、俺が走るのも…同じだ…と思う」いつの間にかしっかりと地を踏みしめ立ったエンデューロが言った。「はぁ。なるほど」「…違うとしても…同じだ。」「はぁ。」彼の目はシリアスだった。28
2016-07-17 21:31:55「ありがとう。オタッシャデー」 やがてヨロヨロと走り出した背中がだんだんと小さくなるのを見送ると、ゴッドファーザーは欠伸をひとつ。伸びをしてまた空を見上げると、「狂人の戯言ってやつですか…」ぽつりと呟き教会へと戻っていった。29
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