室月淳さんのこの10年間考えつづけてきたこと

こういう体験はまとめた私にもあって共感するとこもありまとめてみました。
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室月淳Jun Murotsuki @junmurot

この10年間考えつづけてきたこと(1) 自分のなかでおりにふれては思い出され,いつも考えこんでしまうひとつの体験があります.他人からみればほんのささいなもので,もしかするとその意味すらも理解されないようなものかもしれません.しかしわたしのなかにはいつも澱のようにただよっています.

2016-07-26 20:35:42
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(2)自分のなかでわりきることができず,なんどもなんども反芻するように考えつづけていたこと.なんとかそれをことばにできないか試みます.きっかけは2000年代の産科医療の苦難の象徴ともなった県立O病院「事件」.あのときは、産婦人科医のみならず多くの医療者が抗議に立ち上がりました.

2016-07-26 20:38:17
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(3)きちんとした医療をして,結果が悪ければ逮捕されるではやっていられない,とみなが考えました.結果責任で訴追されるのならば,リスクのともなう医療はできなくなります.司法による医師の逮捕と訴追,そしてマスコミの一方的な報道にたいしては,多くの医療者が団結して抗議の声をあげました.

2016-07-26 20:40:00
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(4)結果的には刑事裁判は無罪,検察側の上告断念ということになり,産科医療は崩壊の一歩手前でなんとか踏みとどまることができました.もう10年も前のことになります.K医師が逮捕されるてみなが呆然としていたとき,真先に異議を唱え,抗議の署名活動をはじめたのは一部の有志の医師たちでした

2016-07-26 20:42:11
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(5)それはまさに草の根からまったくの自発的な運動でした.特定の組織が主導したのでは決してなく,医師たちのまったくの個人としての活動が,自然発生的なネットワークを生みだしていきました.わたしも友人にさそわれてこのネットワークに参加し,自分の周囲での署名集めに奔走しました.

2016-07-26 20:43:14
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(6)署名にこころよく応じてくださるかたも多かったのですが,一方でショックな体験もありました.当時は某病院で働いていたのですが,「自分は署名とか抗議とかそういった政治的なことはわからないので,どんなものであろうともいっさいかかわらない」として署名を断る若い同僚が結構いたのです.

2016-07-26 20:45:09
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(7) 話を聞くと,学生のときからそういった「政治」といえるものには,賛成とか反対とかではなく,とにかくいっさいかかわりをもたないというがポリシーなのだそうです.この県立O病院の問題についても,司法による刑事訴追にとくに反対しないから署名しない,というのならばまだ理解もできます.

2016-07-26 20:47:44
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(8)そうではなく,「署名」という一種の「政治」的行為に思えるものにはいっさいかかわらない,それが自分のスタイルであり,自分の生きかたなのだとそうわけです.そうであるから,とにかくそういったことは自分にはいっさいもちかけてくれるな,はっきりいえば迷惑との態度をとるわけです.

2016-07-26 20:51:12
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(9)わたしたちが社会の理想を求め,すこしでもそれに近づくよう生きていこうとするのは,いま自分が感じている生きがたさというものが,自分以外のいろいろなひとたちの生きがたさとも同じなのだ,という確信に支えられています.しかしその確信めいたものが,そのとき揺らでいくのを感じたのです.

2016-07-26 20:52:13
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(10)O病院事件は幸いにもわれわれが望むような形で決着がつけられました.そういった大義にくらべればわたしが経験したことは,きわめて私的で些細なことにすぎないでしょう.そもそもある程度めはしのきいた人間ならば,そんな蹉跌などだいぶまえに経験すみで,いまさらなにをといわれそうです.

2016-07-26 20:53:34
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(11)くりかえしますが,きわめて私的な内面的な経験だったからこそ,そのあともずっと解決できずにここまでひきづってきてしまったような気がします.自分の世界像のなかになんの理念も生じないひとたちがこの世の中には存在している.医師でありながらO病院のできごともすべては人ごとなのです.

2016-07-26 20:56:00
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(12)世界にたいする理想が生じないひとたちに,それではわたしたちがもっている生きかたの確信といったものはどのくらいとどくのだろうか.わたしたちを抑圧している現実をどのようにかえていくかという問題は,それをいくらことばで示しても,すでにもうとどかないのではないか.

2016-07-26 20:57:51
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(13) 竹田青嗣氏の表現をお借りすると,社会に批判的に対峙する思想から、さまざまな党派的思考や自己欺瞞といったものをそぎ落とし,そぎ落として最後に残るものが,無名の一市民として、世界の理想にむけて、自分の生きかたをどこまで投げだすことができるか,という姿勢です.

2016-07-26 20:59:15
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(14)こういった自分の考えかたの核ともいえるものが,いまでは他人にもう伝わらない時代にきているのでしょうか.この生きかたの土台からの崩壊をひきおこしたいまの状況は,わたしたちをこの閉ざされた世界から新しい場所へ解き放してくれるきかけになってくれるのでしょうか.

2016-07-26 21:03:10
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

(15)それとも別の閉ざされた暗闇の空間につれていくだけのでしょうか.もともと光など存在しなかったのだとあきらめるべきなのでしょうか.いずれにしてもわたしは,これまで世界と自分とを結びつけていたひとすじの紐を手放しかけつつあります.

2016-07-26 21:05:25