もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

「おや、詰将棋でありますか」 「…誰かと思ったら君か。暇なら向こうに行ってて欲しいんだけど」 「誰かとは失礼でありますな。ひとり寂しく詰将棋に励む最上殿よりはマシであります」 「言ったな…」 「暴力はいけませんよ」 「ちっ…」 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

「そんなに暇なら一局打たない？コテンパンにしたげるから」 「いいでありますよ。強がりを言っておきながら無様に負ける最上殿を見るのも悪くありませんな」 「…絶対に勝つ」 「負けませんよ」 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

〜 「…穴熊か」 「守りを固めるのは重要でありますから」 「おかげでだいぶ攻めることができたよ」 「囲いもせずに猪突猛進よりマシであります。ははは、後先考えない性格が滲み出てるでありますな」 「…君こそ、普段は強がりを言う癖に本当は臆病な性格が出てるよ」 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

「……最上殿の手番でありますよ」 「…ああ」 . （ったく。中々厄介な手を打つじゃないか） あきつ丸のことを強がりと言った最上だが、彼女も内心では冷や汗を掻いている。 あきつの敷いた穴熊という布陣が将棋の中で最も固い囲いだからである。 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

攻めに徹して防御を捨てていた最上にとって、この穴熊囲いは非常に相性が悪い。 （ジリ貧になる前に首筋を切る…！） だがそんな穴熊にも弱点が無いというわけではない。 穴熊の弱点…それは香車先。盤面の端の筋に玉が構える部分である。 鉄壁と言われる穴熊の急所だ。 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

（……こんな時になにを考えてるんだ） 首筋という単語が最上の脳裏をよぎったとき、ある夜に起きた出来事が思い出されていた。 彼女が必死の思いで忘れようとして忘れられず、記憶から消そうとする度に強く、そして深く刻まれたそれは……あきつ丸と一度だけ情を交わしたことだ。 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

その夜の宴会で最上は酒をたらふく飲んでおり、そのせいで酷く酔っていた。 そのため酔いを醒まそうとロビーに行って休憩しようとしたところ、同じく酔ったあきつ丸と鉢合わせをした。 そして普段しているような口論になり、ふとした弾みで彼女を押し倒してしまった。 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

その夜の宴会で最上は酒をたらふく飲んでおり、そのせいで酷く酔っていた。 そのため酔いを醒まそうとロビーに行って休憩しようとしたところ、同じく酔ったあきつ丸と鉢合わせをした。 そして普段しているような口論になり、ふとした弾みで彼女を押し倒してしまった。 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

「……」 「最上殿」 「……あっ。な、なんだい」 「やけに長考していると思いましてな。まぁ馬鹿の考え休むにでしょうが」 「…少し黙ってろ」 「おや怖い」 （なんでこんなときに、あの夜のことを……） あの夜の記憶は断片的だが、しかし強く刻まれていることが一つある。 #もがあき将棋

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

あきつ丸の首筋を噛んだときの苦悶の表情、そしてあまりに扇情的だった喘ぎ声が焼き付いて離れないのだ。 （心底嫌っているはずなのに、僕はあいつのあの声をもう一度聞きたいと強く思っている） あきつ丸と最上は因縁を超えた宿敵の仲である。あの一線を超えた夜も単なる過ちだと最上は思う。しかし

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

「……これで詰みだ」 「…今回は負けを認めましょう。参ったであります」 対局の結果は最上の勝ち。勝因は香車先を突いての攻めにあった。 「そろそろ夕飯の時間でありますか。負けましたがそこそこ面白かったでありますよ」 「…待てよ」 この場を離れようとしたあきつ丸に最上は言った。

ラスカる@固定に新作 @Not_Araiguma

「……今晩、僕の部屋に来い」 もがあき将棋 終