茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1868回「tropismの思想」

脳科学者・茂木健一郎さんの8月27日の連続ツイート。 本日は、随想です。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート1868回をお送りします。文章はその場で即興で書いています。本日は、随想です。

2016-08-27 08:51:08
茂木健一郎 @kenichiromogi

植物の性質に、「tropism」(向性)がある。環境の状況、周囲からの刺激に応じて成長、組織の形成が変わるということで、例えばheliotropismならば太陽光の方向で成長が変わるし、gravitropismならば、重力の影響で成長が変わる。

2016-08-27 08:52:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

一つの力場、影響力の場で、少しずつ組織が変化して、やがて大きな違いにつながるという植物のtropismはそれ自体興味深い性質だが、私たち人間にも無関係ではない。私たちの中には、植物的傾向があるからだ。

2016-08-27 08:53:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

脳の神経回路網は、その変化、成長においては植物に似ている。毎日の習慣によって、小さな変化が少しずつ積み重なって、長年の後には大きく変貌している。その際に、自分のやりたいこと、夢、希望が主要なパラメータとなるだろう。

2016-08-27 08:54:49
茂木健一郎 @kenichiromogi

たとえば、中学生が、将来留学したいという希望を持っていたら、その人は英語を一生懸命やるだろう。毎日少しずつ単語を覚え、文章を読み、発音をする。そうやって習慣を積み重ねると、やがて、少しずつ、そちらの方向に伸びていく。

2016-08-27 08:55:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

テニスをうまくなりたいという人は、ランニングしたり、サーブの練習をしたり、ラリーをしたり、選手のビデオを観たりと、少しずつ努力するだろう。そのような積み重ねで、年月が経つと、テニス向きの身体、身のこなしに変化している。

2016-08-27 08:56:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

植物が光の方に伸びたり、重力の影響で曲がったりするように、毎日少しの変化でも、積み重ねれば大きくなる。tropismの思想から言えば、変化はゆっくりでいいのであって、あせる必要はない。ただ、コンスタントに作用させる必要があるのだ。

2016-08-27 08:57:29
茂木健一郎 @kenichiromogi

人間はせっかちだから、「今すぐすべてを」と疾風怒濤に思いがちだが、ほんとうはゆっくり、じっくりでいい。大切なのは、作用の方向性を見誤らないことである。自分が植物だと思って、光や、水や、重力を、毎日うまく作用させるようにしよう。

2016-08-27 08:58:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート1868回「tropismの思想」をテーマに、7つのツイートをお届けしました。

2016-08-27 08:59:10