【隻腕の墓標】第四話

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ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-25 しかし偶然とは言え、深海棲艦を生身で倒したという事実は、その才もあって彼を英傑と仕立て上げる伝説となった。結果的に彼が南西海域総司令本部長となったきっかけはこの伝説によるものが大きい。

2016-10-11 14:29:48
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-26 が、元来として彼には天性の武人の持つ"覇気"を兼ね備えた人物であった。そもそも伝説などに頼らずとも、いずれ総司令本部長としての才能と素質は持っていた。

2016-10-11 14:29:57
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-27 伝説は、彼が総司令本部長の席に座るのを、早めただけに過ぎなかった。 故、彼は若輩ながらも、才能をも認められて、この椅子に座っている。

2016-10-11 14:31:18
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-28 「前回の会議で決定された、○○基地を主軸とした××基地と藻類基地との合同大規模作戦が、先日展開された。結果は伝令で聞いてはいるが、こと詳細に生の声を聞きたい。 報告せよ」

2016-10-11 14:31:26
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-29 青年将校の目は鋭い。 一同を見据える目に、否応無しに会議の空気は硬さを増す。年功序列も此処には存在しない。30を過ぎて敏腕の提督も、この青年将校を前には図を高く上げることはしない。

2016-10-11 14:31:38
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-30 だが、鈴谷は違う。鈴谷はこの会議に目的意識を見出していない。鈴谷の戦場はここになく、この青年将校との繋がりを作ることにあった。

2016-10-11 14:31:45
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-31 即ち、藻類基地の存続と一定の利権の確保。 鈴谷はそのために、自らの身体を男の欲望に染め上げて戦っている。

2016-10-11 14:32:43
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-32 (あー、お風呂入りたいなー) 故に会議の場での鈴谷の精神は、この硬い空気の中で微塵も乱れていない。交渉は既にベッドの上で済ませてあり、その成果は胸の谷間に流れる生暖かい男の汁が物語っている。

2016-10-11 14:33:08
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-33 形の上での会議の参加者であるが故、鈴谷の思考は会議のそれではなく、南西海域の敵深海棲艦との勢力図や政治的動向を、少しでもこの報告から情報収集することにある。

2016-10-11 14:33:17
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-34 起立して報告を行う提督に顔を向けつつ、鈴谷の目は忙しない。普段は裸眼の鈴谷だが、提督会議など重要な場では眼鏡を着用している。レンズ越しに、ちらりと他提督の顔ぶれの確認も行う。

2016-10-11 14:33:29
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-35 (今回は5名の艦娘が代理かぁ。前回より多いね。どこも今きっつい最前線基地ばかりだけれど…来れない提督が多いのは、深海棲艦側の動きが活発ってことかな)

2016-10-11 14:33:37
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-36 (代理を立ててる面子は、だいたい一緒だけど…△△基地が代理を出すのは珍しい。あそこの提督は、いつも顔出してるからなぁ。あー、あの代理の駆逐艦の子、総司令に若干怯えているなぁ。後で少し慰めておいた方がいいかな)

2016-10-11 14:33:52
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-37 「××基地からの報告は以上となります」 「ご苦労。次は藻類基地」

2016-10-11 14:34:02
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-38 あいよー、と鈴谷は場に合わない軽快な口調で立ち上がる。龍驤が用意した資料を巡りながら、咳払いを一つつくと、 「では、藻類提督に変わり秘書官鈴谷より、"深海棲艦鹵獲計画"第31回定時報告を行います」

2016-10-11 14:34:21
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-39 藻類提督が、何故南西海域の提督の中で総司令本部長の次点に席があるのか。それは、この深海棲艦鹵獲計画を一任された存在であったからに他ならなかった。

2016-10-11 14:34:32
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-40 深海棲艦という存在の解明と、その技術力や軍事力の吸収と活用。それらの期待が藻類提督にはかかっている。

2016-10-11 14:34:37
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-41 「現状としましては、新たに鹵獲に成功した深海棲艦はありません。以前の報告書通り、深海棲艦に触れた艦娘は精神汚染と肉体の深海棲艦化が進行する関係上、鹵獲は容易に行えません」

2016-10-11 14:36:07
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-42 「現在は継続して、鹵獲計画の副産物であるナガラシステムの様子観察に主点を置き、運用する五十鈴の戦闘情報の解析を継続して行ってますが、こちらも大きな変化はなく、安定状態にあります」

2016-10-11 14:36:18
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-43 「五十鈴の戦闘スタイルとナガラシステムのバランスも良好。現にさきの合同作戦では単機ながら潜水艦5隻を轟沈、軽空母から発艦した艦載機50余機の単独撃墜を記録してます」

2016-10-11 14:36:44
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-44 「新兵器として十二分な活躍と言えますが、量産体制の検討には到底至らないものであるのもまた事実なため、戦闘試験艦として戦闘経験を更に重ねて情報収集し、五十鈴自身の状態変化の観察を継続したいと思います」

2016-10-11 14:36:52
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-45 「…ってところでしょうか」 ふぅ、と一息つく鈴谷。資料の要点を要約して報告し、着席しようとする。

2016-10-11 14:37:40
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-46 「ふむ。つまり新しい成果はないということかな」 会議に参席する、他の提督から声が発せられる。

2016-10-11 14:37:50
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-47 「藻類の。ここ最近の報告は些か停滞していないか。そりゃ、正体不明の深海棲艦が相手だと言うことを考えれば、壁に当たったり行き詰まったりすることは当然あると思う。が、成果があまりにもなさすぎではないだろうか」

2016-10-11 14:38:08
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-48 ……きた、と鈴谷は歯を噛みしめる。 「俺はナガラシステムという革新的な新兵器の資料が配られた時のあの衝撃を今でも覚えている。深海棲艦鹵獲計画というのが、まさか深海棲艦を解析して艦娘の新兵器を開発する計画だとは思わなかったからな」

2016-10-11 14:39:08
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-49 「それが、ここ最近では新兵器に対して前向きであったのが、停滞めいた報告しか耳にしなくなった。藻類のは一体何をしている。むしろそれが聞きたい」

2016-10-11 14:39:32
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