サンズ・オブ・ケオス ＃３

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはもはや問わず、激烈な憤怒を込めて、瞬間的にスリケンを投擲した。メイレインは腿のホルスターから予備のレーザークナイを引き抜き、スピンさせてスリケンを弾き消した。床を蹴ったニンジャスレイヤーはタタミ1枚距離に接近した。ヤリめいたサイドキック。メイレインは横に跳ぶ。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH！ニンジャスレイヤーの蹴りが聖画を完全に粉砕した。メイレインは側転からのフリップジャンプで飛び離れようとした。その足首にフックロープが巻き付き、とらえた。「イイイヤアーッ！」ニンジャスレイヤーは強引にロープを振り抜き、対角の壁にメイレインを叩きつけた。「グワーッ！」

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ロープがシュルシュルと戻り、ニンジャスレイヤーの右のブレーサー（手甲）に巻き付いた。ニンジャスレイヤーは決断的打撃を叩き込むべく、着実に接近する。メイレインがどの方向へ逃げようと、必ずそれを阻んで打撃を叩き込む。「哲学だの無知だの、まだやるか？」ニンジャスレイヤーは問うた。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

追い詰めながら、ニンジャスレイヤーはこの空間の状況を把握しようとした。飛び回る鳩、聖画や聖餅、蝋燭、神棚、ここは様々な神秘的要素のキメラだ。祭壇めいた場所にUNIXデッキがある。メイレインを殺し、あれから情報を抜く。「クッ……クックックッ」メイレインは肩を震わせ笑った。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お許しくださいサツガイ＝サン。貴方の力をみだりにふるう事は自ら禁じておりましたが」メイレインは俯いていた顔をあげた。痛みと法悦に霞んだ目が見開かれた。ニンジャスレイヤーはメイレインを数度殴打するつもりで近づいていたが、そのとき正体不明の危機感が首筋を粟立たせた。「イヤーッ！」

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BOOM！超自然の唸りが室内の空気を震わせた。ニンジャスレイヤーは横に身を投げ出し、転がった。一瞬の状況判断が彼の命を救った。彼がいた場所に奇妙な黒い球体が生じていた。球体の奥には、遠く、緑色に光る格子が見える。ギュイイイ……音を立てて球体が収縮し、消えた。メイレインの目が笑う。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アッハッ！」メイレインが叫び笑った。「アッハッハッハッハ！」BOOOM！闇の穴がニンジャスレイヤーの足元で口を開けた。ニンジャスレイヤーは逆方向へ撥ね、再びのがれた。跳躍は危険だ。足を止めると、ほんの数インチ先の空間に闇の穴が生じた。「アッハッハッハッハ！なんという美だろう！」

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((何だと？)))ニューロンがざわめき、激しいナラクの念が伝わって来た。(((ムシアナ・ジツとな！これはマイニユ・ニンジャのユニーク・ジツだ。ツバメ・ニンジャ・クランのサンシタには到底縁なきジツぞ。サツガイの仕業であること間違いなし。まったくもって、何たる醜き歪みか！)))

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは牽制のスリケンを連続投擲しながら後退する。「アッハッハッハッハ！」メイレインは眼前に闇の穴を生じてスリケンを飲み込ませて消し飛ばすと、いかなる原理か、そこから黒い斧を引きずり出した。斧はバチバチと放電していた。まるでこの世の物理法則があげる悲鳴だった。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((アンタイ・ウェポンだ。決して打ち合うべからず。破滅ぞ)))ナラクが伝えた。メイレインは哄笑しながら歩き出した。ニンジャスレイヤーはスリケンを投げながら更に後退する。（打開策でもあるか）(((かつての昔、儂はヌンチャクを用いた。ドラゴン・ニンジャの武器ゆえ参考にならぬ)))

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アッハッハッハッハ！」メイレインは床を蹴った。暗黒の斧が斬り裂いた場所には何も残らない。羽根も、床も。ニンジャスレイヤーは連続バック転で飛び離れる。メイレインの攻撃が次第に勢いを増す。あっという間に壁を背にする。メイレインが壁を切り裂く。「サツガイ＝サン！嗚呼！アッハッハッ！」

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブウン、ブウンと音を立て、斧が床を壁を斬り裂き、抉り取る。ニンジャスレイヤーは回避に徹する。横へ転がり逃れる。「アッハッハッハッ！」メイレインが、暗黒の斧がそれを追う。今や形勢逆転、追われるのはニンジャスレイヤーか。「アッハッハッハッ……」KRAAASH……床が抜けた。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ZZZTOOOOM……BOOOOOM……瓦礫と共に、ニンジャスレイヤーとメイレインは下階へ落下した。落ちながらニンジャスレイヤーはスリケンを投擲、メイレインの左目を潰した。「グワーッ！嗚呼、嗚呼、アッハッハッハッ！」メイレインは狂い笑う。「美の前に、痛みなど、快……！」

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

着地と同時に床を蹴り、ニンジャスレイヤーは更に襲い掛かった。メイレインは暗黒の斧を捨て、闇の穴をもちいた攻撃に切り替えた。だがそれはニンジャスレイヤーを捉えられない。彼はメイレインの死角、潰れた左目側に動いていた。崩落する瓦礫が降り注ぎ、粉塵が空気を汚す。

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ここまでで幾つかの事実が明らかとなっている。メイレインは闇の穴とアンタイ・ウェポンを併用できない。遠距離に闇の穴を生じる事はできない。そして何より……「イヤーッ！」「グワーッ！」死角からの回転踵蹴りがメイレインの側頭部を捉えた。メイレインは床をバウンドし、血を吐いた。

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そして何より、いかに強力な神話のジツを得ようと、それを用いる者のカラテが乏しければ、いかようにも料理の方法はあるという事！「グワーッ！サツガイ＝サン！？」怯むメイレインの肩にスリケンが突き刺さる。「グワーッ！」「だいたいわかった」ニンジャスレイヤーは低く言った。「殺すぞ」

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「来るな！」メイレインは闇穴を生じる。だがニンジャスレイヤーは慎重に踏み込みを控え、この設置攻撃を回避する。メイレインは闇の穴から槍斧を引き出す。ニンジャスレイヤーのスリケンが大きくカーブを描いて飛び、アンタイ・ウェポンの柄をくぐって、メイレインの右目を捉えた。「グワーッ！」

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「心地よいか」ニンジャスレイヤーは呟いた。「哲学抜きでサツガイの事を話すか？」「AAARGH！」メイレインは絶叫し、めったやたらに槍斧を振るう。ニンジャスレイヤーは側転で躱しながらスリケンを投げ返す。KRAAASH！あっという間に床が斬り裂かれ、再び崩落した。二者は三階へ落下！

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ZZZTOOOM……！着地したニンジャスレイヤーはカラテを構え、眉根を寄せた。「エッ？」声をあげて振り返ったのは、淡いオレンジの髪の美しい女だった。この階の住人？ここは廃墟ではなかったか？女が着るアオザイや、壁一面のビデオテープ・ライブラリ……「AAARGH！」メイレインが叫ぶ。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーとメイレインの知る由もない事だったが、3階には出口の無い部屋が存在していた。所有者は閉鎖空間の中にオイランドロイドを飼育しようとしたのだ。オイランドロイドを閉じ込め、室内を愛好する電子戦争以前の偏ったカルチャーで満たした直後に、その所有者は心臓発作で死去した。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ARRRRRGH！」メイレインはアンタイ槍斧を無茶苦茶に振り回す。ニンジャスレイヤーは慎重に距離を取る。視力を奪われたばかりのニンジャが聴力をもちいて相手をとらえる事はおよそ不可能だ。攻撃機会はすぐにめぐって来るだろう。だが、メイレインの後方、驚きと共に彼らを見つめる女は……。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ、ナンデ？」彼女はぽかんとして口を開いた。調度を破壊し、床を、壁を破壊するメイレインと、距離をとるニンジャスレイヤーを交互に見た。「ニンジャ同士の戦闘です！本物なんですか？」「AAAARGH！」ビュッ、闇の刃が彼女の顔の数インチ手前を薙いだ。オレンジの髪が幾筋か散った。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ちょっと！やめてくださいよ！」女は叫んだ。メイレインは叫び声に反応し、そちらへ……(((好機だマスラダ！奴があれに襲い掛かる瞬間を狙え。背中から心臓を貫き、かたをつけるべし！)))ナラクが促す。ニンジャスレイヤーは床を蹴った。「イヤーッ！」槍斧が斬り裂いた。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウーッ！」ニンジャスレイヤーは間に割って入り、背中を斜めに裂かれながら、女を抱えた。そのまま対角の壁を蹴って撥ね、二回転して着地した。背中から血が噴き出す。(((愚かな。しかもそれは人形ぞ)))呆れ果てたナラクの声。驚くほどに重い身体を下ろすと、「驚きました」と女が言った。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【#4 に続く】