ヨグヤカルタ・ナイトレイド #6

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リンク note(ノート) 第4話【ヨグヤカルタ・ナイトレイド】 | ダイハードテイルズ | note ダイハードテイルズの限定公開ノート | 2016-11-08 00:22:20 +0900
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さてもさても!」グレイウィルムは嘲り笑った。ロングゲイトがニンジャスレイヤーと共に屋外へ飛び出し、二対一の利は崩れたが、依然として主導権はグレイウィルムのものだった。「成る程、あれはどうやらお前の雇った刺客ではないな。ではやはり、お前は何も考えず再び倒されに参ったと!」 1

2016-11-21 22:23:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スゥー……ハアーッ……」サツバツナイトは深く呼吸しながらグレイウィルムの打撃を防ぐ。関節が三つあるかのような長いリーチをもったグレイウィルムの腕から繰り出されるしなやかなチョップ突きは、常にサツバツナイトの反撃範囲外。一対一となったのちも攻撃の糸口は与えられなかった。 2

2016-11-21 22:25:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかるぞ、サツバツナイト=サン。今まさにこの時も、お前は呪死の崖めがけ転がり落ちておる最中よな。表情一つ動かさぬが、その実、精彩を欠いたカラテそのものが雄弁也。ロウ・ワンの呪いは一分一秒ごとにお前の心をくじき、命をくじく!」ムカデめいた突きがこめかみをかすめる! 3

2016-11-21 22:31:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツバツナイトは蹴り返すが、グレイウィルムは奇妙な軟体性を発揮して悠然と躱し、死角から蹴りつけた。「イヤーッ!」「グワーッ!」サツバツナイトが弾かれ、転がって、花瓶を破壊しながら受け身を取った。グレイウィルムは間髪入れずに躍りかかった。床を蹴り、撥ねて、車輪めいて回転する。 4

2016-11-21 22:35:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」丸まった百足めいた姿勢から瞬時に繰り出されたのは断頭斧めいた踵落しだ。サツバツナイトはその瞬間、俯き加減だった顔を上げ、赤い目を閃かせた。深い呼吸を止め、左腕を捻じり、肘を前に出す奇妙な防御姿勢をとったのは、目に見えぬほどの時間……ほんの一瞬だった。 5

2016-11-21 22:43:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

グレイウィルムの勝ち誇った目が見開かれた。彼は何故か胸の中央にサツバツナイトの右拳をまっすぐに受けていた。おかしい。そう思ったとき、グレイウィルムは螺旋回転しながら吹き飛び、壁を砕き、廊下に叩きつけられていた。「グワーッ!?」驚愕、痛み、畏怖、不条理。嘔吐しながらのたうつ。6

2016-11-21 22:45:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカな……これは」グレイウィルムは床に手を突き、起き上がろうとする。サツバツナイトが廊下に出てきた。一歩一歩、床を踏みしめ、ゆっくりと近づいてくる。グレイウィルムは呻く。「お前は敗れた」「然り」サツバツナイトは頷く。「シャン・ロア。恐るべきニンジャだ。確かに後れを取った」 7

2016-11-21 22:50:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オゴーッ!」グレイウィルムが身体を反らし、口からアンブッシュ・ムカデを吐く!だが苦し紛れだ。サツバツナイトは瞬時に反応し、飛び出しかかったムカデの頭を踏みしめ、床に縫い付けた。「オゴーッ!?」「……だが、オヌシではない」黒装束の橙の火がブスブスと音を立てる。「そして……」8

2016-11-21 22:55:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツバツナイトはチョップを振り上げた。「次は不覚を取らぬ。奴には後悔させてくれよう……」「おのれ!」グレイウィルムは身を守ろうとする。その手段がない。サツバツナイトの身体から、ミシミシと骨肉が軋む音が聞こえる。呪いだ。だが即死させる力ではない……「イヤーッ!」「アバーッ!」 9

2016-11-21 22:59:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

振り下ろされたチョップはグレイウィルムの脳天を砕き、脳漿を飛び散らせた。致命傷を受けたグレイウィルムの口にサツバツナイトは手をこじいれ、「イヤーッ!」力任せに引きちぎる!「アバーッ!」それはのたうつ舌だ。表面に焼き鏝めいた百足の印がある……。「サヨナラ!」高官は爆発四散した。10

2016-11-21 23:03:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツバツナイトがザンシンする姿はひどく苦しげだった。爆発四散者の灰が風に散る。彼は顔をしかめ、掌の上でいまだのたうつ舌を黒革のキンチャクに入れると、注意深く紐で縛って懐にしまった。「まずは一匹……」低く呟き、その声は深い呼吸にとってかわった。「スウーッ……ハアーッ……」 11

2016-11-21 23:07:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

戦いに力を使い過ぎた。グレイウィルムの殺意をとらえ、かろうじて勝機を掴んだ。危ういイクサであった。だがこれが第一歩だ。シャン・ロアは尋常のニンジャではない。彼は己の子らを護り、子らに護らせる。グレイウィルムもその一人。ムカデの王を倒し、呪いを解くには、いまだ機は熟さず……。12

2016-11-21 23:13:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ……スレイヤー……!」そして彼は口にした。赤黒装束に身を包んだニンジャの名を。彼はニンジャスレイヤーを知っている。果たして、いかなる呪いがあの者をニンジャスレイヤーたらしめているのか。だがもはや彼にあの者の後を追う力はない。この国を離れる力もない。縛られているのだ。13

2016-11-21 23:18:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

呼吸が乱れ、咳き込み、よろめく。背中を丸め、呼吸を立て直す。騒ぎをききつけ駆け付けた料亭の給仕が、黒橙の影を目の当たりにして立ちすくみ、静かに失禁した。 14

2016-11-21 23:21:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バオン!バオン!ロングゲイトのソニック・カラテ衝撃波が、密集するバンブーを根こそぎに吹き飛ばす。青々としたバンブーがガサガサと音を立てて斜めに倒れてゆくなか、ニンジャスレイヤーは連続側転して急接近し、鉤爪めいた手で薙ぎ払った。ロングゲイトの姿が掻き消える! 16

2016-11-21 23:27:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」直後、背後からロングゲイトが襲い掛かる。「イヤーッ!」だがニンジャスレイヤーは大振りの薙ぎ払いの勢いを乗せ、真後ろに回し蹴りを繰り出していた。ロングゲイトの脇腹を蹴り足が捉えた。「グワーッ!」 17

2016-11-21 23:29:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ロングゲイトは受け身を取り、バック転で間合いを取る。赤黒い眼光の軌跡が闇に閃く。ロングゲイトが林から庭へ逃れたコンマ2秒後、ニンジャスレイヤーが前傾姿勢で飛び出す。バオン!バオン!カラテ衝撃波が撃ちだされ、赤黒装束を切り裂く。致命には程遠い。「ヌルいぞ」彼は呟いた。18

2016-11-21 23:33:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

中距離間合いを制するカゼのカラテ衝撃波。ワンインチ距離に踏み込めば、その利を殺せる。それを補うのはマバタキ・ジツの瞬間移動だ。しかし変幻自在と思われた立ち回りも徐々に単調になっていた。ロングゲイトはアラバマオトシを逃れて猛追するニンジャスレイヤーの気迫に呑まれようとしていた。19

2016-11-21 23:39:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAASH!二人のニンジャの戦闘に巻き込まれ、庭の石灯籠が砕けて散った。ニンジャスレイヤーはロングゲイトのワン・インチに再び接近し、鉤手で抉り抜いた。ロングゲイトが消えた。ニンジャスレイヤーは打撃を振り抜き、しならせた手首からフックロープを放った。「グワーッ!?」捉えた! 20

2016-11-21 23:47:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーの360度を薙ぎ払ったフックロープは斜め後方に出現したロングゲイトの肩を捉え、動きを封じた!「イヤーッ!」「グワーッ!」すかさずニンジャスレイヤーはスリケンを投げつけ、腕の付け根に命中させた。ロングゲイトは身をもがきながら、掌を前に突き出した。「マッタ!」21

2016-11-21 23:49:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」ロープを引き絞ると、ロングゲイトはバランスを崩し、片膝をついてこらえた。「マッタ……ニンジャスレイヤー=サン!」「ならば話せ」ニンジャスレイヤーの目が燃えた。「おれはおれの目的を話した。お前はサツガイについて話せ……!」「話す……本当だ!」 22

2016-11-21 23:52:42