ジャーナリスト・烏賀陽さん(hirougaya)が和辻哲郎の「風土」を読み返して思ったリテラシーの大衆化

ジャーナリストの烏賀陽(うがや)弘道さんが和辻哲郎著「風土」を読み返して感じたことをツイートしたものをまとめました。なお、烏賀陽さんがここで使っている「リテラシー」は「情報リテラシー」のことです。
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烏賀陽 弘道 @hirougaya

新聞社が気の毒なのは、こうした構造をそのまま無自覚に引き継ぎ、時代遅れになっても、それに気付かない、改革できないことです。

2011-03-08 16:13:53
烏賀陽 弘道 @hirougaya

こうした「現場に行けるだけでも特権」という希少性を利用していたのが、かつての「ルポルタージュ」だったのです。

2011-03-08 16:14:54
烏賀陽 弘道 @hirougaya

世界のどこにでも、誰でも行ける時代(北朝鮮くらいですね、例外は)になって、こうした「フロンティア」は消滅しました。

2011-03-08 16:15:30
烏賀陽 弘道 @hirougaya

意思さえあれば、イラクにだって、パレスチナにだって、アフガニスタンにだって行けます(身の安全は保障しませんが)。すぐに写真や記事をブログに書いておくれます。リテラシーの希少性を基盤とする取材者の特権はもう蒸発してしまいました。

2011-03-08 16:16:59
烏賀陽 弘道 @hirougaya

今の時代、記者がこうした「フロンティア」に挑めるのは「戦場」くらいしかないでしょう。

2011-03-08 16:17:53
烏賀陽 弘道 @hirougaya

ですから、こうした希少性を基盤として特権的に発言しようとしても、反駁され、検証され、特権的に好きなことを言えるということは許されません。和辻哲郎も、本多勝一も、開高健も、石川文洋も、あのままの職業形態では、2011年には成立しないのです。

2011-03-08 16:19:32
烏賀陽 弘道 @hirougaya

なので、今では、チュニジアの政変をカイロで書いている新聞特派員がダブルスコアで滑稽に見えます。

2011-03-08 16:20:23
烏賀陽 弘道 @hirougaya

新聞社の特派員など、大半が生煮えの素人でも勤まったのは、過去の話になりました。

2011-03-08 16:21:18
烏賀陽 弘道 @hirougaya

360度からの激しい検証と反駁に耐えることを書かねばならない、という意味で、現在の記者は、はるかに高いハードルを要求されます。何とやりがいのある時代でしょう。実力のある者にとっては、ですが。

2011-03-08 16:22:45
烏賀陽 弘道 @hirougaya

以上、リテラシーの希少性の消失と知的特権階級、報道の特権性の消失についておしまい。

2011-03-08 16:23:51
烏賀陽 弘道 @hirougaya

1950年代のニュース映画見ていたら、「南極探検報道なら朝日新聞」ってCMが入っていて「れこないだ女性記者南極基地に派遣しとったがな」とそのトホホな時代遅れぶりにびっくり。

2011-03-08 16:37:50
烏賀陽 弘道 @hirougaya

いまフロンティアに挑む記者といえば、昔のような移動や情報、通信の希少性における特権者ではありません。「意思」なのです。例えば、戦乱のチェチェンから記事を書いて送るかどうかは、特権性ではなく意思の選択なのです。

2011-03-08 16:59:13
烏賀陽 弘道 @hirougaya

移動手段、通信手段、リテラシーの希少性が知性(報道、学問など)の特権性を担保していたという議論はいつか本に書くぞ。お楽しみに。

2011-03-08 17:00:06
烏賀陽 弘道 @hirougaya

特権性ではなくが記者の行動を決めるなら、もはや移動、通信、リテラシーの希少性を担保する組織に所属することが記者の条件ではなくなります。意思は個人がより決定するものであり、組織の意思の決定は常に遅れるからです。

2011-03-08 17:01:48