【書籍化決定】 3・11 心に残る140字の物語
- micanaitoh
- 24034
- 0
- 13
- 318
#twnovel 「あなたのために、そして何よりあなたを信じる僕自身のために、僕は小さな物語を書き続けることにした。今は悲しみに打ちひしがれるあなたがこれを読むことのできる未来。それが僕たちの望む未来だ。起こった現実が夢に戻ることはないが、夢はいつか必ず現実になる」古い手帳より。
2011-03-17 21:27:06#twnovel その百貨店では水やパンどころか、全ての食料品が棚から消えていた。マロニーさえ消えていた。「店員だけで独占してるんだろ!」「俺たちは客だぞ!」「自分たちさえ良ければいいのか!」殺到した人々の怒号が響いた。「全て被災地に送りました」店長の一言でその場は静まり返った。
2011-03-17 11:58:56スーパーは異様な雰囲気だった。皆、山のような品物をカートに載せ、憑かれたように歩き回っている。私はそんな人々の間をすり抜け、目当ての品を見つけると、それだけ持ってレジに並んだ。アールグレイの紅茶。あのひととあの日飲むはずの。それだけが、今の私が欲しいもの。 #twnovel
2011-03-17 03:46:15気やすく「助けて」「手を貸してほしい」と言えない。恋人ではない人。たったひとこと「だいじょうぶ?」とメールが来ただけでもありがたいと思わなくては。あの人のメールのおかげでふんばっている。大好きで大切なあの人が必ずまた会おうねと言ってくれたから。「だいじょうぶ」。 #twnovel
2011-03-14 03:18:16暗いね……手、つないでもいい? ごめんね、遠いのにわざわざ……あ、また地震! ……ごめんね、私、浮気してたんだ……遠くて、会えないからさびしくて……ごめん。言い訳だよね……ねえ、本当にいいの? 仕事あるんでしょ? うん……来てくれてほんとに嬉しい。ありがとう…… #twnovel
2011-03-16 21:52:23あの人は無事かしら。大きな地震が来たとき、真っ先に思ったのはそのこと。でもメールの送信ボタンを押しそびれたまま日にちが過ぎてゆく。ふと見上げると、大きな大きな満月。「月がきれいだよ」……思わず指が動いていた。すぐに返事が届く。「僕も今、同じ事を言おうとしてた」 #twnovel
2011-03-20 02:25:43#twnovel 流浪少女なみ:「火を借りますね」「どうぞ」「500ml缶に米半分、水6分目で火にくべて、ぐつぐつ吹くまでじっと待つ。くつくつふつふつ静かになったら、火傷せぬよう取り出して。こんな時でもだからこそ、炊きたてご飯が美味しいね」「美味そうだねー」「一緒に食べよう」
2011-03-13 03:17:46#twnovel 体をよせて見上げる満月。なあ、と白い息で彼。「これまでも、これからも。愛している」熱愛のころでも言われなかったセリフ。何よ、こんなときに…狼狽する私に「いま言っておきたかった」毛布の中で手をつなぐ夫。その肩に私は頭をのせる。避難先で迎えた、私たちのスイート10。
2011-03-20 18:43:14#twnovel 同じ空の下、どんなに遠く離れていても言葉だけでも繋がっていられる世界がオンラインなんだとずっとぼくは思っていた。そしてまた明日には「今何してる?」なんて聞けるんだと思ってた。君は今何をしているの? 君からの呟きがないタイムラインにただただぼくは気を揉んでいる。
2011-03-20 18:38:54#twnovel 魔女も魔法使いも妖精もさまざまな「魔法」を使う者たちは準備を終えて夜空を見上げた。誰もが月の光の力を借りるために様々な材料や道具を並べている。これから大量に必要になるだろう、「癒し」の魔法に必要な材料をこぞって作ろうとしている。人間には知られないよう密やかに。
2011-03-19 23:17:14#twnovel 祈るように息を吹きかけるが、また火が消えてしまう。上手くいかない。早くしないといけないのに。困惑していると「疲れたら交代します。諦めないで続けましょう」と声をかけられた。交代で続けているうちにやっと火がつく。もっと大きくして早く人間に届けないと。「春の灯火」を。
2011-03-19 22:43:35#twnovel UFOが飛来した。「艦長、日本という国から微量の放射線を検出。原発事故です」「なんと愚かな。やはりこの星は我々が統治すべきだ。所で、隣のメーターが振り切っているが?」「これは愛を測る計器です。世界中から被災地に愛が注がれていますね」「…。侵略はやめておくか」
2011-03-17 11:33:39つらいこと、不安なこと、なんでもいいです。紙にぜーんぶ書いてください。文字じゃなくてもいいですよ。絵でもなんでも大丈夫。それを眠る前、窓辺に置いといてください。ぼくが食べに行きます。太りすぎになろうがメタボになろうが、ぜーんぶ食べます。君の笑顔が見られるなら。 #twnovel
2011-03-12 23:40:50あたしは売れないミュージシャン。今度の曲が売れなかったらクビ勧告が出ている。今夜もいつもの時間いつもの場所でストリートライブをして、CDを手売りする。瓦礫の山を踏み越えいつものステージへ。今日は持ち歌はやらない。アコギ一本で子守歌をレクイエムを。夜が明けるまで。 #twnovel
2011-03-13 01:26:21不幸を不幸で上書きすることは許されません。不幸を上書きするのは幸福であるべきです。あなたたちに課せられた仕事は、この瓦礫の中にかすかに残っているであろう幸福を見つけ出し、人々の不幸に上書きすることです。簡単な仕事ではありません。しかしやらなければならないのです。 #twnovel
2011-03-13 00:15:24世界中のバクに告ぐ。世界中のバクに告ぐ。子どもたちの悪夢を全て確保せよ。充分な数の良い夢の確保を完了した。子どもたちの安眠のために悪夢を全て確保せよ。悪夢の確保次第、良い夢の配布に入る。繰り返す。世界中のバクに告ぐ。子どもたちの安眠のために悪夢を全て確保せよ。 #twnovel
2011-03-13 00:23:27#twnovel 幼い女の子が泣いていた。アメ玉でもないかとポケットに手を突っ込んだが、入っていたのは毛糸の手袋とティッシュだけだった。手袋でウサギを作った。「お嬢さんこんばんは。ウサギさんが持っているのは魔法のティッシュだよ、さあどうぞ」女の子は魔法のティッシュで笑顔になった。
2011-03-13 00:24:29#twnovel つきのうさぎは今日もせっせと団子作り。次から次へとどっさり、いつもより甘くておいしい団子をどっさり。積み上げられた団子の箱はしっかり梱包されてうちうじんボランティアの船へ。美味しい団子は張り詰めた心を少しは和らげてくれるはず。うちうじんはちきうに向けて出発した。
2011-03-13 00:32:30「ねえねえ、ママー」「ごめんね、今忙しいから静かにお絵かきしてて」いらいらと、クレヨンと紙を渡してしばらく。「ねえねえ」「ああもう、静かに出来ないなら返して!」ぎゃーっと泣き出す娘から取り上げた紙を、ふと見ると。『まま、がんばって!』今度は私が泣き出す番だった。 #twnovel
2011-03-13 00:51:44#twnovel あるところに笑わない少女がいた。「どうして」と友達の少年が聞くと、「お父さんにあげたから」と少女は答えた。すると少年は自分の笑顔を取り上げ、半分を少女に渡した。やがて二人は結婚した。彼らはお互いの微笑みを分け合って、末永く幸せに暮らしたという。 #twnvday
2011-03-14 21:06:40スマイルを購入する人が後を絶たない。店も据え置き価格0円で頑張っている。被災地にも今後大量に送付予定とのことだ。 #twnovel #twnvday
2011-03-14 22:51:20#twnvday 娘が笑わなくなった。理由を聞いても「誰にも言えない」と言う。「人に話すとダメなの」と口をへの字に結ぶ。そっとして様子をみるしかない。3日後、娘に笑顔が戻った。「せめて私の3日分の笑顔を、被災地の人に分けてあげて!と神様にお願いしたの」娘の願いはきっと届くと思う。
2011-03-15 00:48:17#twnovel 彼女たちが北へ向かうのを、私は路上で見送った。「どうしても届けずにはいられないんだもの。私たちは食料も寝場所もいらない、ただ行くだけよ」 道が届かなくても、声が届かなくても、静かな微笑みの香とともに彼女たちは行く。水仙、白梅、沈丁花、山茱萸、雪柳――そして桜。
2011-03-21 13:06:07#twnovel ある時計屋が被災地を訪れた。大震災の時刻で止まってしまった、数多くの時計たちを直して廻る為に。「いつか時が癒してくれる」そんな言葉をかけられるほど、人々の傷は浅くない。だから時計屋は、ただ時計を直して廻った。いつか時が。そう、願いを込めて。
2011-03-21 10:51:04#twnovel 流浪少女なみ:「祈りたいのですが」「千羽鶴より、大人の千羽鶴を」「送りたいのですが」「粗大ごみでないものを」「運びたいのですが」「プロであるならば」「手伝いたいのですが」「経験豊富で臨機応変ならば」「そうでない場合は」「日常生活をエネルギー充填120%で」
2011-03-20 23:45:09