『原子力の経済学 新版』の要点 〔その3〕 放射性廃棄物処理問題を巡る誤魔化しと先送りの実態
昨日ツイートした『原子力の経済学』(室田武著)〔http://togetter.com/li/141491〕の続きを、これから連続ツイートします。今日は主に〔放射性廃棄物の処分問題〕についての内容となります。これも衝撃的であり、また色々と考えさせられる内容です。
2011-05-30 04:59:59【原子力の経済学77】 原発の使用済み核燃料は、核分裂生成物(いわゆる死の灰)、プルトニウム239など、燃え残りのウラン235、ウラン238の、大別しておよそ4種類の混合物であるが、これを化学的に処理してプルトニウムを分離・抽出する技術全体を再処理という。
2011-05-30 05:01:23【原子力の経済学78】 原発の不経済性を端的に示すのが、使用済み核燃料の再処理である。その目的を建前からいうと、将来、高速増殖炉と呼ばれる技術が完成する時、その炉の燃料としてプルトニウムが利用されることになる、というものであった。
2011-05-30 05:01:34【原子力の経済学79】 そして、難点の多いこの再処理に一定の費用がかかるのは当然だとしても、えられるプルトニウムの燃料価値はその費用を上回るであろうから、再処理に要する経費を原価計算に含める必要はないという見かたがとられていた。
2011-05-30 05:01:45【原子力の経済学80】 しかし、排出される使用済み核燃料のごく一部をひきうけている動燃の東海再処理工場の実績、および日本からの委託により大量のそれをかかえこんでいる英仏の再処理工場の側からの要求などが具体的な数値を示すにつれ、以上に述べた前提は完全に崩れ去ってしまった。
2011-05-30 05:01:56【原子力の経済学81】 すなわち1981年、通産省の電気事業審議会料金制度部会は、再処理費が燃料価値を大幅に上回ることを認めた。したがって、電力の最終需要家の立場からみれば、使用済み核燃料は、再処理せずに保管しておくのが経済的だということになる。
2011-05-30 05:02:06【原子力の経済学82】 実際アメリカでは、商業ベースでの再処理の試みはこれまでに全て失敗し、実行されていない。ところが、上述の料金制度部会は、正味の大幅な損失を発生させることの判明した再処理をあえて強行する方針を打ち出し、そのために要する費用は発電原価に算入すればよいとした。
2011-05-30 05:02:15【原子力の経済学83】 このため、1981年度以降、原発保有各電力会社の会計には、損益計算書の電気事業営業費用の中に再処理費が、貸借対照表の負債の部には再処理引き当て料金がそれぞれ新たに計上されるようになった。
2011-05-30 05:02:53【原子力の経済学84】 ところで、再処理はいったいどれくらいの経済的損失を生むことになるのであろうか。この点についてのとりあえずの目安は、81年時点での通産省の見積もり数値を表示した表9-1から読みとることができる(後述)。
2011-05-30 05:12:15【原子力の経済学85】 通産省によれば、プルトニウムの燃料価値の評価法には、①ゼロ評価 ②ウラン節約額相当評価 ③エネルギー等価法、の3つがある。
2011-05-30 05:12:26【原子力の経済学86】 ①はイギリスが採用しているもので、増殖炉が実用化するまでの長期にわたるプルトニウム貯蔵に要する経費は、結局のところ燃料価値と相殺しあってしまうであろうから、プルトニウムの経済価値はゼロと見る考え方。
2011-05-30 05:12:36【原子力の経済学87】 ②は、プルトニウムを軽水炉の燃料の一部として利用する場合に、その分だけ節約できる天然ウランの価値額に等しいとする考え方。
2011-05-30 05:12:44【原子力の経済学88】 ③は日本の動燃が採用しているもので、同僚の熱エネルギーを発生するプルトニウムとウラン235は同じ価値をもつとしたうえで、成型加工費の違いなどを考慮してプルトニウム価値を求める考え方。
2011-05-30 05:12:54【原子力の経済学88】 表9-1は、これらのうち通産省見積りに数値の示されている①と③の両方についての燃料価値を示した。〔表9-1では、再処理で得られる燃料価値3400万円(①の場合)または6100万円(③の場合)に対し、再処理費用2億1100万円という数値が示されている〕
2011-05-30 05:13:28【kaameenのコメント】 はっきり言って、再処理で得られる燃料価値を最も低く見積もった①の計算方法でさえ、あまりにも楽観的に過ぎると思う。最も都合のよい数字が示されている一方で、最も都合の悪い数字が示されていないのは、余りにも偏っている。本当の経済性はこれよりも遙かに悪質。
2011-05-30 05:14:19【原子力の経済学89】 この結果、使用済み核燃料1tにつき、再処理は、評価法の下では正味で1億7700万円の損失、③では1億5000万円の損失を招来することがわかる。以上を換言すれば、再処理はすればするほど経済的損失を生む。
2011-05-30 05:14:58【原子力の経済学90】 こうした再処理損失がいかに巨額なものとなるかは、青森県上北郡六ヶ所村を標的とする電気事業連合会の核燃料サイクル3点セット構想の内容と対照させてみると明確になる。3点の1つは、…
2011-05-30 05:24:13【原子力の経済学91】 日本原燃サービス㈱を主体とする再処理施設であるが、予定としてはその再処理能力は、1年につき使用済み核燃料800t。従って、これがもし予定通りに稼働するとした場合、通産省の見積もり数値をそのまま用いるとしても、毎年1200~1400億円の正味損失が生じる。
2011-05-30 05:24:21【原子力の経済学92】 他方、六ヶ所村を含む下北半島は、日本経済の高度成長期に立案された新全国総合開発計画(いわゆる新全総)の下で、石油精製や製鉄をはじめとする一大コンビナートになるはずで、このためにむつ小川原開発株式会社が設立され、…
2011-05-30 05:24:29【原子力の経済学93】 …この会社は六ヶ所村に5200ヘクタールの土地を買収した。しかし、結果からいえばそこにやってきたのは国家石油備蓄基地の一つのみであった。そして、この会社の積年の累積赤字は、いまや1300億円に達しているという。
2011-05-30 05:24:37【原子力の経済学94】 このむつ小川原開発構想が大失敗であったことは誰の目にも明らかであり、その失政を一挙に帳消しにしたいという関係当局の意図が、巨大な核燃料サイクル基地構想の背後に見え隠れしている。
2011-05-30 05:24:45【原子力の経済学95】 しかし、そのうちの再処理一つをとってみても、たった1年で前述の長年月にわたる累積赤字相当分の正味損失を生じかねないのが、電気事業連合会の立案した今回の巨大構想なのである。
2011-05-30 05:24:56【kaameenのコメント】 責任逃れも高ずるとここまで悪質なものとなるのかと、考えさせられる。この暴挙を止められなかった、政府の当時のリーダーたちの罪深さは、無謀な戦争へと突き進んだかつてのリーダーたちと同じか、むしろそれ以上のものと言わざるを得ない。不幸の実態は今後明らかに。
2011-05-30 05:31:26【原子力の経済学96】 原発は、一言でいえば放射能、すなわち核のゴミ生産の技術であり、このゴミには数えきれないほどたくさんの種類がある。それらをあえておおまかに分類すれば、次のように大別されるといえよう。…
2011-05-30 05:48:39