ゲーム業界にも翻訳業界にもいないゲーマーが、PCゲームの公式翻訳者になった話

PCゲーム「クランキー・ヒーロー」が日本語化された経緯と、ゲーム翻訳の裏話。
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𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

よく知らない人に電話するのがすげえ苦手な民だけど、よく知らない人にメールを送るのもすげえ苦手な民であることを自覚してしまい辛い。 あ、私が日本語化した「クランキー・ヒーロー」、早期アクセスで販売開始されました。私には1円も入らないけどみんな買ってね。 store.steampowered.com/app/1687990/Cl…

2021-11-10 11:02:23
リンク store.steampowered.com Save 15% on Clunky Hero on Steam A story-driven platformer metroidvania with a touch of RPG and tons of humor! Made in 2.5D, with beautiful hand-drawn-looking backgrounds crowded with funny creatures. Join Rufus, the clunky hero with broom and bucket, on a journey full of surprises throu 225
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

ちなみに早期アクセス価格は、通貨レートの関係か予価より100円ほど上がって990円です。ごめんなさい。 んでも発売直後の15%オフにより、今なら予価より50円安い841円で買えます。なので買って。

2021-11-10 11:06:10

※追記
本作は早期アクセスとしての発売ですが、超少人数開発ゆえにテストプレイが不十分である、というのが早期アクセスになっている理由で、ゲームとしてはほぼ完成しています。

𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

せっかくなので、日本語化の裏話をズラズラと書きますね。あんまりゲームの日本語化をやったことがある人はいないと思いますし、おそらくかなり異常な経緯で日本語化された作品なので。 まず、本作はクラウドファンディングで製作されてて、私はその出資者の1人でした。 kickstarter.com/projects/piove…

2021-11-10 11:52:45

「クランキー・ヒーロー」の開発者について

𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

そもそも本作に出資した経緯ですが、作者のニコラ・ピオヴェサン氏は以前、短編CGアニメの「Robot Will Protect You」を同じくクラファンで製作してて、私はこれに出資してたんですね。本作は非常に完成度が高く、「個人レベルでこんなの作れるんだ!」と思いました。 kickstarter.com/projects/piove…

2021-11-10 11:52:46

※追記
「Robot Will Protect You」はニコラ・ピオヴェサン氏が以前に作った「Attack of the Cyber Octopuses」という実写SF短編のスピンオフです。この「Attack of the Cyber Octopuses」も、とても超小規模製作と思えない本格的なSF映画でした。

𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、同氏のことはすっかり映像作家として見なしてたんですが、突然「『Robot Will Protect You』の世界観でゲームを作る!」とか言い出しまして、「…ミニゲームかな?」と思ったらちゃんとしたのを作ったんですよね。それが「ENCODYA」。 store.steampowered.com/app/1137450/EN…

2021-11-10 11:52:46
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、「ENCODYA」の開発が一段落して落ち着くかな?と思ったところに、今度は「メトロイドヴァニアを作るよ!題名は『クランキー・ヒーロー』だ!」とぶちかまして来まして、そんな意欲オバケ、支援しない手はないではないですか。ということで、比較的大きい「NPCとして登場」枠で出資したわけです。

2021-11-10 11:52:47
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

ちなみに、「クランキー・ヒーロー」も一段落したところで今度はどう出るかなと思ったら、「また新しいゲーム作るよ!題名は『Soul Tolerance』だ!」とか言い出してるので、企画の立ち上げを待ってるところです。未来の札幌が舞台の、かなり新機軸の作品になりそう。 youtube.com/watch?v=oYZZIS…

2021-11-10 11:52:47
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𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、「クランキー・ヒーロー」ですが、元々は多言語対応する予定はなかったんです。クラファン開発でお金ないので。 でもメトロイドヴァニアは好きな日本人も多いですし、個人的にこれは日本語版があってほしいと思ったので、開発早期から「翻訳やるから日本語化しない?」って持ちかけてたんですね。

2021-11-10 11:52:48
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

その時は「考えとく」みたいな返事で、私も食い下がらずに長らく忘れてたんですが、開発終盤になってNPC出演の内容を詰める段になって、「日本語化する話、気が変わっていなければお願いしたい」と向こうから言ってきまして、「忘れてなかったのか!」と驚きつつ二つ返事で請けた、というわけです。

2021-11-10 11:52:48
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、日本語化が決まってから、出資者向けに「翻訳に参加したい人いない?」と声をかけたら、各国の出資者がそれに応えて、めでたく多言語対応作品になりました。 クラファン出資者って世界中にいますし、作品に参加したい人も多いわけで、こういう翻訳方法は結構画期的なんじゃないかって思います。

2021-11-10 11:52:49

※追記
「クランキー・ヒーロー」の最終的な対応言語は、英語、日本語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、中国語(繁体字)で、これはオプションから自由に選択することができます。

翻訳作業の裏話

𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

ここからは実際の翻訳の話。開発のニコラから送られてきたのは1つのExcelファイルでした。中身は、左にゲーム内の識別用と思われる「key」という行、右にそれに対応した英語文が載った2行のデータ。これの右に日本語の行を作るのが私の仕事です。 pic.twitter.com/u1px5QDI7A

2021-11-10 13:02:38
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𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、早速問題に直面します。 この翻訳用ファイルですが、全部「key」のアルファベット順に並んでて、物によってはkeyの表記から「それが何の文字列なのか」が漠然と分かるものの、アイテム名なのかUIなのか、どんな人が喋ってるのか、などの詳細が全く分からない項目が山ほどあります。

2021-11-10 13:02:39
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

かつて「Call of Duty 4」で、能力ブースト「Stopping Power」がゲーム目標か何かと勘違いされて「電力を止めろ」と翻訳されてしまう珍事がありましたが、その原因はたぶんコレ。私の電力も停止寸前でしたが、インディー開発ならではの風通しの良さを活かし、ニコラに伝えました。 「情報が足りん」

2021-11-10 13:02:39
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、何の情報が必要か伝えた結果、NPCの顔画像と、アイテムの一覧が送られてきました。これで屈強の兵士がおネエ言葉になるような事態は避けられます。 また、大分遅れてですが、会話がどういう順番で表示されるかも送られてきたため、微妙に会話が噛み合わないような事態も回避可能になりました。

2021-11-10 13:02:39
𝑷𝑲𝑨 @PKAnzug

で、最初の追加情報が届いたあたりで、開発のニコラから重要な提案が出されます。 「会話とかは、おおまかな意味が通っていれば、そっちの好きなように変えて構わない。むしろネイティブ的にいい感じにどんどん変えてほしい」 本作のキー要素である「ユーモラスな会話」が一部私に託された瞬間です。

2021-11-10 13:02:40