彼氏追跡アプリ「#カレログ」は #ウイルス罪 になるか!? 高木浩光が解説する! & McAfee がスパイウェア認定したが、カレログはウイルスなのか?
次に、カレログプログラムを作成、提供する行為が、不正指令電磁的記録供用目的作成罪及び供用目的提供罪(刑法第168条の2第1項)に該当するか、であるが、
2011-08-30 19:46:58さて、カレログのプログラムを作成、提供する行為が、不正指令電磁的記録供用目的作成罪及び同供用目的提供罪に該当するかであるが、その前に、カノジョの供用罪該当性についてもう少し深堀しておこう。
2011-08-30 21:42:38カノジョがカレシの同意を得てインストールするといっても、「ねえねえ、アプリインストールしていい?」「ああ、いいよ」というレベルの同意では、構成要件該当性は阻却されない。「『カレログ』ってアプリがあるんだけど、入れちゃっていい?」「ああ、いいよ」というレベルの同意でも阻却されない。
2011-08-30 21:48:47さらに、「『カレログ』ってアプリでいつでも居場所がわかるんだって。ダーリンがどこにいるかいつでも知りたいから、入れていい?」「ああ、いいよ」という同意だったとしても、通話記録まで送信されることをカレシが予見できていない場合には、不正指令電磁的記録供用罪の構成要件を満たす。カノジ…
2011-08-30 21:54:32…カノジョが通話記録を閲覧しており、かつ、通話記録まで閲覧できることをカレシに知らせていないことを認識しているならば、不正指令電磁的記録供用の故意が認められ、犯罪となる。
2011-08-30 21:56:28なお、これは身内だから可罰的違法性に欠けるといった性質のものではない。なぜなら、不正指令電磁的記録の罪は、親告罪でもなければ、個人的法益の罪でもない。社会的法益の罪であるから。すなわち、被害者が被害感情を持たなくても、犯罪は成立する。
2011-08-30 21:58:47
ウイルス罪が作られた目的について
カレログ、こんな違法行為を幇助するような下らないクソアプリ、本当に流行ったらもう俺は社会不信に陥って一週間寝込む。
2011-08-30 21:18:05今のリツイートのように、こうした行為が横行することが社会不安をもたらすのであり、そうした「プログラムに対する社会の信頼」を害する行為を罰するのがこの罪。例えば、彼氏に借りた千円を返すのに偽造通貨を渡したときに彼が後で気づいて彼女を許したとしても、偽造通貨行使罪が成立するのと同じ。
2011-08-30 22:05:00(教唆・幇助犯の話は飛ばして ⇒ 次の作成罪・提供罪の話へ)
マニュスクリプト社は教唆・幇助犯か?
カレシに無断でインストールしたカノジョは供用罪。では、このアプリを提供したマニュスクリプト社は、カノジョの供用罪を教唆(刑法第六十一条)・幇助(同第六十二条)したことになるのだろうか?
→ 結論: おそらく該当しない
さて、カレログのプログラムを作成、提供する行為が、不正指令電磁的記録供用目的作成罪及び同供用目的提供罪に該当するかであるが、その前に、カノジョの供用罪に対する、幇助犯ないし教唆犯が成立し得るかについて検討する。
2011-08-30 22:12:36一般に、罪を犯すために使用できるプログラムについて、その作成・提供者が幇助罪に問われるかというと、包丁の作者が殺人罪の幇助に問われるのはおかしいという喩えが持ち出されることがよくあるが、ここには、包丁は生活上欠くことのできない道具であって、もとよりありふれているという性質がある。
2011-08-31 00:15:38Winnyの作者が著作権法違反の幇助罪に問われた裁判で、有罪判決を出した一審は、「著作権を侵害する態様で広く利用されている現状をインターネットや雑誌等を介して十分認識しながらこれを認容し」などとされている。(なおこの事件は高裁では無罪判決となって、現在検察が上告中。)
2011-08-31 00:25:23この裁判では専ら作者の意図が問題とされたが、私の意見では、技術的価値中立性の成否を争点とするべきだったと思っている。すなわち、Winnyが持つ性質が他にないもので、それがなければ起きそうにない犯罪だったのか否か、またその性質が社会にとって欠かせないものであったか否か。しかし…
2011-08-31 00:28:57…しかし、検察がそのような観点からの主張をほとんどしていないため、裁判ではそこが争点になっていない。(もっとも、その性質が他になく、社会に欠かせないものではなかったからといって、それで直ちに幇助罪が成立するべきとは思わない。)
2011-08-31 00:33:16脆弱性診断プログラムや、無線LAN暗号解読プロブラムなどは、セキュリティ向上の為に用いる道具として開発されることがあるが、不正アクセス行為や電波法違反行為を犯す目的で使用されることもあり得る。欧州の一部の国ではそうしたプログラムの開発や所持を違法化してしまい、問題となっているが、
2011-08-31 00:35:18したがって、日本では、脆弱性診断プログラムや無線LAN暗号解読プログラム等、それがいかに社会にとって必要なものであるかが、説明がなくとも当然にわかるものであるか、又は、わかる形で提供されているならば、犯罪幇助とはみなされないだろうと思う。
2011-08-31 00:57:02他方、正当な用途がまるでなく、犯罪用途にしか使いようのないプログラムを作って提供した場合には、そうはいかないだろう。事例として、ロマンシング詐欺事件がある。この事件では、偽アプリインストーラを開発し、個人情報を入力させて詐取、掲示板に暴露して著作権侵害だと脅して金を払わせると…
2011-08-31 01:00:53…というものだったが、プログラム作者が詐欺罪の共同正犯に問われた。他にも、犯罪に使われたプログラムの作者が共犯に問われた事案はいくつかある。Winny事件が珍しいのは、不特定多数への提供で幇助罪に問われたからであろう。
2011-08-31 01:08:33プログラムの作成・提供者が罪に問われた事案は、主犯からの依頼により作成・提供したものが多いようで、共謀があって共同正犯とされるパターンな気がする。それとは逆に、プログラム作成者側がそれを用いた犯罪の実行を持ちかけた(教唆犯)という事案は、これまでに実際にあったという話は聞かない。
2011-08-31 01:30:25というのも、プログラムを与えられて、それだけで犯罪が可能になるという事態が、あまり多くはなさそう。ありそうなのは、特定サイトへのDoSプログラムを「さあやれ」という感じで渡される場合だろうか。
2011-08-31 01:40:34他にありそうなのは、実行すると一万円札っぽいものがプリンタで印刷されるプログラムを、そういうものだと説明して配布するとかだろうか。
2011-08-31 01:43:01ところが、平成23年7月施行の改正刑法で、不正指令電磁的記録に関する罪が創設され、これにより事態は変わった。人の意図に反する不正なプログラム実行をさせる行為が犯罪となったわけだ。
2011-08-31 01:48:09