ストーリー第7回目 メインプロットとサブプロットの構造を理解しよう
0.はーい、chimumuだよ。今日も映画のストーリーの構築方法についてつぶやいていくよー。
2010-05-06 00:10:081.まず、今日は注意点から。これまでの僕のストーリーの解説を聞いて映画の見方を変えてはいけないよ。これは最初に言っておくべきだったし、これまで映像学校で教えた時は必ず言い添えるようにしていた。
2010-05-06 00:11:052.映画鑑賞中に「はあ、ここがアクションポイント1だな」とか「これがミッドポイントというやつか」とかいうようなことを考えながら映画を見てはいけない。これは大事なことだ。
2010-05-06 00:12:133.フランスのシネマテークという場所で上映運動をしていた人物にアンリ・ラングロアという人がいる。トリュフォーやゴダールなどは彼の上映会で映画を浴びるように観て映画を学んだ。故にヌーヴェル・ヴァーグの作家群を「アンリラングロアの子供たち」と呼ぶことがある。
2010-05-06 00:15:164.アンリ・ラングロアは言う、「映画はあらゆる属性をはぎとって見なければならない」と。つまり空気を呼吸するように無心になって観ろということなんだ。ストーリーの構造がどうとかこうとかというのは、見終わって映画を反芻する時になってからでいいんだよ。
2010-05-06 00:16:245.さて、今日の話は映画のストーリーをメインプロットとサブプロットに分けて考える方法について説明するぞ。実はこの考え方が2幕目ではすごく大事になってくる。
2010-05-06 00:17:566.映画のストーリーは複数のプロットを抱えている。メインプロットとサブプロットだ。で、これらは何かと言うと、シナリオの教科書には、メインプロットはストーリーを構成する一番大事なライン、サブプロットはそれを補完するもの、なーんて書いてあるが、これじゃあ、まんまじゃん。
2010-05-06 00:19:357.これをいささか乱暴に解説するからよく聞いて。例えば、次のストーリー(ログラインという)を考えてみよう。
2010-05-06 00:21:558.登山家の父に対して心を開けない息子はひょんなことから父と雪山にでかけ、嵐に遭難する。はじめは父に非協力的だった息子は、雪山を行きながら父に心を開いていくが、父は息子を救うようにして死に息子は無事に生還する。その時息子は父へのわだかまりを解き、深く愛するようになっている。
2010-05-06 00:23:309.このストーリーで、観客に楽しんでもらうのはどこか? ここに注目しよう。この映画がエンターテインメント作品だとすると、観客は「果たして、この二人は生還できるのか」で映画を観ていく。「この二人は、和解できるのか」で観客の注意を引いているわけじゃない。こっちはいわば隠し味だね。
2010-05-06 00:25:2810.つまり、この場合「遭難した息子が登山家の父とともに雪山を彷徨い、生還しようする」という物語のラインがメインプロットだ。
2010-05-06 00:26:4111.「今まで愛することのできなかった父を息子が愛するようになる」というラインがサブプロットになる。
2010-05-06 00:28:1712.メインプロットとサブプロットは互いに交差し、影響を与えながら進む。これが2幕目をキープする一番大事なテクニックだ。
2010-05-06 00:29:2013.なんとなく、わかったかな。ではここでちょっと大胆にメインプロットとサブプロットを定義しよう。これはシナリオの教科書には必ずしも書いていないし、例外もあるが、わかりやすさを優先して説明するぞ。
2010-05-06 00:29:5114.メインプロットは“事件”である。ここでは遭難という事件が発生し、それを乗り越えるのが一番大事なプロット=メインプロットになる。
2010-05-06 00:30:3315.サブプロットは、“心”についてのプロットだと考えればいい。ここでは、息子と父の和解だ。心というのは映画では人間関係で表現される。つまり“事件”を追っていくメインプロットに絡む形で“人間関係”のプロットがある。これがサブプロットだと考えとけば一応 O.K.だ。
2010-05-06 00:34:5716.ここでまとめておこう。エンターテイメント作品は、事件を扱うメインプロットに、人間関係のサブプロットが絡んで進む。
2010-05-06 00:37:3417.事件は馬鹿でかいが、人間関係が類型的でキャラクター設定が記号的だと、ジャンル映画になる(『ダイハード』)。事件は小さくて類型的だが、人間関係やキャラクター設定が複雑で深いものもある(『刑事ジョンブック/目撃者』)。
2010-05-06 00:38:1018.しかし、このような説明は、ハリウッドのエンターテイメント映画には大体80%程は当てはまるが、残りの20% 程度はこの方法だと齟齬をきたすんだ。
2010-05-06 00:40:1519.たとえば『サイダーハウス・ルール』には事件と呼べるもの特にはない。この映画は人間関係だけで構成されている。ここでは、メインプロットもサブプロットも人間関係で構築されているということだ。
2010-05-06 00:41:2520.その場合は、主人公にとって(あるいは物語にとって)誰との人間関係が一番大事かを考えればいい。主人公とその人物のプロットがメインプロットだ。
2010-05-06 00:41:4721.『サイダーハウス・ルール』では主人公ホーマーとラーチ先生のプロットがメインプロットになる。
2010-05-06 00:42:4822.次に大事なのは、ホーマーとキャンディ。さらにホーマーとリンゴ農園で働く黒人労働者とのプロットがサブプロットだ。
2010-05-06 00:43:0523.もう一度いう。これらのメイン/サブのプロットどうしが、交差し、互いに影響を与えながら物語は進む。そうすれば、1時間という2幕目の長丁場を持たせることができるんだ。
2010-05-06 00:46:2124.はーい、今日はここまでだよ。GWの集中講座でした。明日から不定期に更新するよ。じゃあね!
2010-05-06 00:47:01