「ゼロ想」風に語る まどか☆マギカ論 ~まどマギは、2010年代の新しい想像力足り得たか?~
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そして、暁美ほむらは典型的な決断主義者だ。彼女が選択したのは、言うまでもなく「鹿目まどかの守護者」という立場である。暁美ほむらとって鹿目まどかとは、まず「自分の存在価値を認めてくれる(かもしれない)唯一の存在=友達候補」として現れる。
2011-09-18 03:24:55病弱であり、気弱であるといった己の劣等感に苛まれているほむらを肯定してくれる存在としてだ。しかし、その時点ではまだそれは可能性であり、決定的なものではなかった。そのすぐ後、ほむらはまどかに命を救われ、まどかが魔法少女であるコトを知る。
2011-09-18 03:25:05ほむらの視点から見れば、魔法少女とは超越者であり、劣等感の塊である彼女がなりたくてもなれないものの象徴だ。その後、ほむらは超越者=絶対的な力を持った存在に友人として認められるコトによって、ひと時の安息を得る。
2011-09-18 03:25:15ここで強い劣等感を持つほむらが、自ら超越者=魔法少女になろうとしないのは、彼女が求めているのは力ではなく、他者からの承認であり、この時点ですでに満たされているからだろう。しかし、それはまだ信仰というレベルではなかった。
2011-09-18 03:25:27ほむらのまどか信仰を決定的にしたのは、一度目のワルプルギスの夜との戦いでのコトだろう。勝ち目のない戦いに赴こうとするまどかがほむらに伝えた最後の言葉、「ほむらちゃんと友達になれてよかった」。
2011-09-18 03:25:37その言葉によって、ほむらにとってまどかは絶対的な存在となった。つまり真の意味で疑いなく、(少なくともほむらの中では)二人は友達になったのだ。
2011-09-18 03:25:47後のほむらの行動は周知の通りである。劣等感に苛まれ、一人で引きこもりがちだった少女は、まどか=魔法少女(という超越者)に友達として認められることで、承認欲求が満たされアイデンティティを得た。
2011-09-18 03:25:57しかし、それだけでは生き残れない=まどかを救えないと悟った彼女は、「鹿目まどかの守護者」という立場をより明確にし、それを邪魔する存在との対立を強くしていく。
2011-09-18 03:26:10この暁美ほむらの在り方の変遷こそ、90年代⇒「引きこもり系/セカイ系」から、ゼロ年代⇒「決断主義/サヴァイブ系」への変遷そのものではないだろうか。
2011-09-18 03:26:22しかし(いやだからこそ)、ほむらはまどかを絶対的な存在としながらも、「所有」しようとはしない。まどかへの信仰を唯一のアイデンティティー=生きる糧・目的としながらも、ほむらの行動原理はまどかを来るべき死から守るコトであり、その果てにまどかを「所有」しようという考えは希薄だ。
2011-09-18 03:26:46ほむらは言う「ごめんね。わけわかんないよね…気持ち悪いよね」。「わからなくてもいい。何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだから、あなたを私に守らせて」 。まどかに誤解を受けても、理解されなくても、ほむらはまどかに尽くす。
2011-09-18 03:26:55旧劇エヴァは、碇シンジが惣流・アスカにまったく同じ台詞「気持ち悪い」と拒絶された時点で終わってしまった。しかし、暁美ほむらは「なおそれでも」まどかに尽くそうとする。「気持ち悪いと思われてもいい」と。
2011-09-18 03:27:04「あなたさえいてくれれば」という強い想いを抱えながらも、「理解されなくともよい」というある種の自己犠牲、もしくは無償の愛に近い精神である。ほむらはすでにまどかから全てを与えられた。あとはそれに報いるだけなのだ。しかし、これは究極のエゴ=一方的な「母性の暴力」とも言える。
2011-09-18 03:27:22しかし、この押し付けられる母性は、最終回で当のまどか自身に否定されることになる。もっと正確に言えば、まどかとその母の在り方によって。
2011-09-18 03:27:33鹿目まどかは最強の魔法少女であり、最悪の魔女になる運命を背負っていた。魔女化したまどかの名前は「クリームヒルト・グレートヒェン 」。公式サイトの説明分曰く「救済の魔女」であり、その性質は「慈悲」である。
2011-09-18 16:59:38「この星の全ての生命を強制的に吸い上げ 彼女の作った新しい天国(結界)へと導いていく。この魔女を倒したくば 世界中の不幸を取り除く以外に方法は無い。もし世界中から悲しみがなくなれば 魔女はここが天国であると錯覚するだろう」
2011-09-18 17:00:14母(魔女)の作り上げた天国に、この星の全ての生命を強制的に吸い上げる。これと似た計画が90年代を代表するとある作品中で実行に移されている。 そう、クリームヒルトの能力とは「人類補完計画」そのものなのである。この二つが象徴し得るもの、それは母性の暴力=抑圧的な母の愛だ。
2011-09-18 17:00:40ほむらのまどかを守るという姿勢は、まどかの死の否定であり、魔女化の否定、つまり疑似天国の創造(人類補完計画)の否定である。 しかし、ほむらは他人からの「抑圧的な母性」を間接的に否定している反面、同じものを自分自身がまどかに与えてしまっているといった点で矛盾している。
2011-09-18 17:01:02その矛盾を祓う存在とは誰か。そう、未だに「引きこもる」コトも出来ず、「決断する」コトも出来ない、巨大な才能を秘めているが平凡な少女。鹿目まどか、ただ一人だ。
2011-09-18 17:01:47まどかはインキュベーターに願う。「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で」 。
2011-09-18 17:02:29