死ぬのがこわくなくなる話 第41話

Twitter上で連載中の渡辺浩弐さんの長編小説をまとめました。
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渡辺浩弐 @kozysan

ツイッターで、ライブで報告を続けると言っていたのにずいぶん間があいたこと、申し訳ありません

2011-09-24 01:13:53
渡辺浩弐 @kozysan

先に言っておくと、今は安全な状況   だと思う   座ることができている。湿ったコンクリートの上にネットブックを開いている。ケガはないです。

2011-09-24 01:14:28
渡辺浩弐 @kozysan

電波入るので 入るうちに じゅんばんが編になるかもしれませんがツイートできるときにとにかくしときます  ←ここまで 今のこと  ここから  今まで書いていたことをアップ→

2011-09-24 01:17:21
渡辺浩弐 @kozysan

地図はエレベーターの所在地点までしか描かれていなかった。エレベーターに入ると階を指定するボタンは上下2つしかなかった。下を押すしかない。ドアが閉まった。がくんと揺れてから、動き始めた。

2011-09-24 01:18:05
渡辺浩弐 @kozysan

止まった。降下していた時間は20秒余り。途中で強めの加速もあり感覚的にはビルの10階ぶんくらい、30~40メートルだろうか。

2011-09-24 01:19:24
渡辺浩弐 @kozysan

ドアが開いた。暗い。一歩踏み出す。背後でドアが閉まる。とても暗い。

2011-09-24 01:19:54
渡辺浩弐 @kozysan

進んでみる。壁に突き当たり曲がるとすぐ前方に縦穴があった。淵まで進んで覗き込んだ。直径20メートルくらい。底面までの深さ40メートルくらい。その筒の内側を螺旋状のスロープが取り巻いていた。手すりが設置され、人が歩けるようになっていた。

2011-09-24 01:20:11
渡辺浩弐 @kozysan

先に進む道はこれ一本しかない。僕はそのスロープを下っていった。足元は濡れていて、注意していないと滑りそうだ。しかも暗い。明かりといえば既にはるか背後のエレベーターから漏れている光だけなのだ。

2011-09-24 01:20:37
渡辺浩弐 @kozysan

底に着いた。何度もケータイ画面を明るくして足元を確かめた。進まなければならない方向はすぐにわかった。筒の底面には、細い横穴部分があったのだ。その細い通路を進んだ。

2011-09-24 01:24:32
渡辺浩弐 @kozysan

通路が終わると、その先が開けた。いや開けたといっても実のところ暗くてほとんど何も見えない。それがホールなのか、洞窟なのか、わからない。ただその空間の巨大さは感じ取ることができた。空気の冷たさ。そして匂いのせいだ。水の、それも山奥の深い湖のような匂いがした。

2011-09-24 01:24:55
渡辺浩弐 @kozysan

唯一の光源であるケータイを掲げてみたが、光は闇にすっかり吸い込まれて消滅してしまった。闇に向けた瞳孔が開いていくのを自覚した。そして海鳴りのような音。それはどこかから聞こえるのではなく、耳の奥に、感じられる。

2011-09-24 01:25:23
渡辺浩弐 @kozysan

深い地下においては電波や宇宙線のノイズもゼロに近くなると聞いたことがある。そのせいか、頭がとても澄んでくる。この場所に誘い込まれて次にするべきこともわからないままですでに10分以上経過したが、不思議と不安や恐怖は感じない。

2011-09-24 01:35:53
渡辺浩弐 @kozysan

ケータイの光でなんとか足元を確かめながら、段差を降りた。ばしゅん、と、低い音が響いた。いきなり、光。白い衝撃に顔を思い切り殴られたような気がした。目を閉じても世界は白いままだった。しばらくは何も見えなかった。

2011-09-24 01:36:13
渡辺浩弐 @kozysan

やがて目が慣れてくると、想像していたよりさらに巨大な空間が照らし出されていた。トンネルだった。幅、高さともに20~30メートルくらい。国道トンネルくらいの規模のものだ。地面に並ぶサーチライトがいっせいに点灯したのだ。

2011-09-24 01:36:45
渡辺浩弐 @kozysan

道は左右はるかへと延びていた。どこまで続いているのかその果てが見えなかった。

2011-09-24 01:37:12
渡辺浩弐 @kozysan

湾曲したコンクリートの壁面は湿っているようで、きらきらと反射していた。カエルの死体が1匹、中途半端な高さの位置にはりついていた。

2011-09-24 01:37:26
渡辺浩弐 @kozysan

渡辺さん と声。     人の声だ。

2011-09-24 01:37:44
渡辺浩弐 @kozysan

声はこだまする。   渡辺さん、    と、確かに僕を呼ぶ声。    反響のせいでどこから聞こえているのかわからない。

2011-09-24 01:38:18
渡辺浩弐 @kozysan

(自分用記録)以上23時過ぎのこと……………………………………………電波不安定だか゜ひきつづきツイートする 以下0時頃のこと

2011-09-24 01:39:11
渡辺浩弐 @kozysan

僕は暗い場所に1人でいる。ちょっと身動きできない状況だが、この時間を利用して、これまでに体験した奇妙な出来事を、少しでも、記録しておこうと思う。

2011-09-24 01:43:13
渡辺浩弐 @kozysan

そうさっきまでの文章とは違い、これは、目の前の出来事を書いているものではない。

2011-09-24 01:43:44
渡辺浩弐 @kozysan

終わったのだ。もう誰もいない。1時間ほどの会合は終わり相手だけがいなくなった。光は消えた。

2011-09-24 01:44:00
渡辺浩弐 @kozysan

まだ同じ場所にいる。  1時間ほどの出来事を思いだしながら書いている。  暗闇で、わずかに発光するケータイの画面だけを見てその中に文字を並べていると、これが現実なのかあるいは夢や妄想の中のことなのか、わからなくなってくる。

2011-09-24 01:44:19
渡辺浩弐 @kozysan

今、体験したことが本当にあったことなのか。  どうも確信が持てなくなる。あるいは僕は部屋に閉じこもって延々とおかしな小説を書いているだけなのかもしれない。

2011-09-24 01:44:43
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