『「原発から毎時10億ベクレル…」を子育てママが理解するまで』 の誤解と福島第一原発からのセシウム放出量
- miakiza20100906
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『総放出量/事故時からの時間』という間違い
以前から度々呟いていますが、このマトメ http://t.co/pgZOtY0n には複数の間違いが有ります。いまだにその間違いが拡散されてしまっている(例えば http://t.co/0SlHk0bW )ようなので、ここで一度その間違いと訂正をまとめておきます。
2011-11-10 03:34:52そのマトメでは、7月以降に東電から発表されるようになった福島第一原発からのセシウム放出率 [Bq/h] が議論されています。「(最大で)毎時10億ベクレル」や「(最大で)毎時2億ベクレル」と報じられたあれです。
2011-11-10 03:35:48「最初に大量に出たやつを今までの時間で割ると(約4ヶ月)、2億ベクレルが一時間に出たことになります http://t.co/2wG8cj57 」、 「総量を時間に合わせて割ってるだけ。別に意味のない数字 http://t.co/LcUYK7rl 」
2011-11-10 03:37:12この解釈は明らかに間違いです。東電はこれまでに一度も『総放出量/事故時からの時間』なる無意味な数値は出していません。この解釈が間違いであることは、以下のような簡単な計算で示すことができます。
2011-11-10 03:37:54まず、最新の報告では、Cs137の総放出量は 1.1×10^16Bq と見積もられています http://t.co/0JdkENW2 今回の事故ではCs134がCs137とほぼ同Bq出たので、両者の合計では 2.2×10^16Bq になります。
2011-11-10 03:38:40この総放出量をあえて「億」を使って書き直すと 220,000,000億Bq になります。これを例えば4ヶ月の時間(2880時間)で割ると、およそ 76,400億Bq/h になります。これは発表されている数値 10億や2億 より桁違いに大きい値です。
2011-11-10 03:39:45割る時間を1年に延ばしたとしても、76,400億の1/3になるだけです。半減期からくるCsの減衰を考慮しても、値はほとんど変わりません。したがって、『総放出量/事故時からの時間』という解釈は明らかに間違いです。
2011-11-10 03:40:47では、どこで解釈を間違えたのでしょう? ポイントは恐らくここです→ 『「放出量」じゃなく、「合計放出量」ね。 http://t.co/BjqB3xtv 』
2011-11-10 03:41:51放出率グラフ http://t.co/lsW04ZyC の注に有る「合計放出量」を「事故時からのCsの総放出量」と読み違えたようです。恐らく、これが全ての誤解の発端になっています。この「合計放出量」は、正しくは「Cs134の放出率とCs137の放出率の合計」のことです。
2011-11-10 03:42:45一つ具体例を示します。グラフの注1には安全委員会資料 http://t.co/bS6DICIs から合計放出率を求めたとあり、例えば「3/25 0時-3/26 11時」の分は 約2.5兆Bq/h とあります。この合計放出率は以下のようにして安全委員会資料から導くことができます。
2011-11-10 03:44:35資料によると、同時間帯のI131の放出率は 5.6×10^13Bq/h 、I131/Cs137比は 45 です。これより、Cs137の放出率は 約1.24兆Bq/h となります。Cs137+134の「合計放出率」はこれの倍ですので、約2.5兆Bq/h となります。導けました。
2011-11-10 03:45:51繰り返しますが、東電(安全委員会も)はこれまでに一度も『総放出量/事故時からの時間』なる無意味な数値は出していません。それなりに根拠のある方法で放出率を求めてきています。先の安全委員会資料の図3を見るだけでも、どれだけ丹念に放出率が見積もられてきたか分かると思います。
2011-11-10 03:46:25このマトメの末尾に放出率の計算法についての資料を添付するつもりですので、興味おありの方はどうぞ。 以下、幾つか余談:
2011-11-10 03:46:58現在の放出率
では、現在の放出率は幾らくらいか? これについては未だに謎が多いですが、恐らく10月発表の「約1億Bq/h」は「かなり良い線いってる」と思われます。というのも、この時に使われた測定法は、それまでのものと比べてノイズが入り難いものだからです。
2011-11-10 03:47:4410月の資料 http://t.co/v8rYWCox によると、この時には沖合2kmと原子炉建屋上部での測定値が使われています。海上で評価することで地面からの再浮遊の影響を減らし、また、建屋上部の開口部から排気を吸い取ることで、より直接的な評価をしようというわけです。
2011-11-10 03:48:25これらの方法により、沖合のデータからは 約0.7億Bq/h 、建屋上部のデータからは 約0.8億Bq/h 、そして、これらを総合しての判断から 最大1億Bq/h という見積が得られています。利用された測定値の性質からいって、この見積はそれなりの精度が出ていると想像できます。
2011-11-10 03:49:36また、このことからして、より精度の悪い方法で評価されていた7月の約10億や8月の約2億も、さほど大きくは間違えていなかったようにも思えます。少なくとも10倍は間違えていなかったのかも (10月よりも早い時期の評価値なので、10月分より値が大きくなるのは自然です)。
2011-11-10 03:50:2010月の発表にはもう一つ注目すべき点があります。この発表では約0.7億と約0.8億という2つの見積が示されています。もしも本当に『総放出量/事故時からの時間』で計算されているのであれば、見積値は1つしかないはずです。このことからも件の解釈が間違いであることが分かります。
2011-11-10 03:51:07最大1億Bq/hの新規放出がもたらす降下量
では、この「最大1億Bq/h」の新規放出が各地にもたらす降下量はどれくらいか? これについても過去に何度か呟いてきましたが、念のため繰り返します。結論は、ほとんどの地域でND(不検出)のはず、です。
2011-11-10 03:51:44安全委員会の評価によると、例えば4月初頭にはまだ 0.29兆Bq/h の放出がありました http://t.co/lsW04ZyC これと比較すると、1億Bq/h は 1/2900 です。
2011-11-10 03:52:30同じ4月初頭、東北~関東の地域には1日当たり最大 800Bq/m2 のCs137降下が有りました http://t.co/pO4P5hMF これを1/2900すれば 最大0.28Bq/m2 になります。
2011-11-10 03:53:15