斉藤環氏による家庭内暴力とネット依存に関する一般論

斎藤環氏が、豊川市の事件にヒントを得た「一般論」として記された一連のツイートをまとめさせていただきました。
216
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

豊川の事件、発達障害やら知的障害やらネットやらが絡んでややこしい感じになっているが、事件そのものの構図は単純に思える。要は年に何件か起きている家庭内暴力がこじれた末の殺傷事件のバリエーションという意味で。

2011-12-07 23:02:06
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

その推定が正しければ岩瀬高之被告(31)の障害がなんであろうと事件は2次障害的に起きたと考えられる。だとすれば予防もまた可能だったはずだ。

2011-12-07 23:04:25
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

以下、事件にヒントを得た「一般論」として記しておく。まず金銭管理。障害の有無にかかわらず成人した子どもの扶養をそのまま続けたいすべての親は、必ず小遣いを「月給制」にするべきである。

2011-12-07 23:06:13
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

報道が正しければ事件の家族は給与をいったんすべて被告に預けて、そこから「小遣い」をもらうという不思議な対応をしていた。なんとクレジットカードも持たせていた。残念ながら対応としてはタブー中のタブーとしか言いようがない。

2011-12-07 23:07:53
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

このさい与える金額や与え方といった全体の枠組みを決定するのは親の側の当然の権利だ。本人の要求に振り回される必要はない。こうしたフェアかつ毅然とした枠組みをはじめから構築できていれば、こうした悲劇は予防可能である。

2011-12-07 23:09:57
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

言うまでもないが家庭内暴力の臨床にあっては、いかなる理由による暴力に対しても絶対的拒否以外の対応はありえない。そのさい親は「ダメだ」「いけない」という言うべきではない。それはしつけであり誘惑の言葉だ。

2011-12-07 23:11:29
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

言うべき言葉は「暴力は嫌だ、絶対に拒否する」しかない。「ダメ」と「イヤ」の区別が理解できなければ、こうした暴力にまともな対応は難しい。

2011-12-07 23:12:45
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

暴力回避のためにする「通報」と「避難」は間違いではない。ただし「次に暴力があったら避難(通報)する」といった予告をしておくべき。ちなみに「避難」も「通報」も、暴力拒否の姿勢をアピールするためのパフォーマンスであることを忘れないこと。

2011-12-07 23:15:34
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

「避難」が「別居」に、「通報」が「逮捕・勾留」にならないようにする配慮が必要。やり方の詳細は以前にも示したけれど、下記にすべて書いてあります。http://t.co/ShbasFmN

2011-12-07 23:17:39
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

それと「入院」は最後にして最悪の手段。家庭内暴力を振るう子どもが入院で治ると考える人達は、同じことを夫婦間暴力に対して主張しないのはなぜなのか。何も考えない入院措置が2000年5月の西鉄バスジャック事件の誘因となった。

2011-12-07 23:19:51
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

入院に踏み切らざるをえない場合は、退院後の本人の生活をどうするかまで考慮するべき。経済的支援はするにしても最低限、別居を前提にしないことには、再発を予防するのは難しい。

2011-12-07 23:21:31
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

豊川の事件でも心配だったのはこの点。被告の母親は被告を許すと発言している。もし短期間で出所した息子を不憫に思った母親が自宅にひきとったら、次に何が起こるかは想像に難くない。

2011-12-07 23:28:49
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

「情だけ」で暴力は止められない。「暴力をすべて受け止めた母親のもとで立ち直った息子」などという、ありうるとしても激レアな事例(これを治療美談といいます)をお手本として吹聴する愚を繰り返すべきではない。

2011-12-07 23:31:26
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

ついでにネットについても。今回の事件でいかにもまずいのは、(被告にとっては)予告なしに回線を切断してしまったこと。これはパソコンの破棄とならぶタブー。

2011-12-07 23:33:22
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

オンラインゲーム依存の事例などでは、まずプレイ時間を制限(私の場合は上限6時間)したうえで、破った場合は親がプロバイダ料金の支払いをやめることを宣言してもらう。「続けたければ自分の小遣いでどうぞ」ということ。

2011-12-07 23:34:51
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

回線の切断はしばしば激しい暴力を誘発する。従来は親への子供の暴力など考えられなかったアメリカやカナダで、回線切断による殺傷事件が起き始めている。

2011-12-07 23:39:41
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

ネット依存が依存症の範疇に含まれるかの議論は決着を見ていない。DSM-Vには結局登録されないらしいけれど。物質依存との最大の違いは、依存対象との縁を切ることが治療目標にならないこと。

2011-12-07 23:41:04
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

ネットやめたら就活もままならない。目標はあくまでも、セルフコントロールしかない。その意味では”廃”にならない程度にやり込んで飽きておく、という免疫もありか。いや、やっぱりダメだ。

2011-12-07 23:42:48
よしながふみbot @yoshinaga_bot

あなたまだ家の中にひきこもってるの? 甘ったれるのもいい加減になさい これ以上うちに一銭も入れない気ならこの家からたたき出すわよ(『フラワー・オブ・ライフ』4巻)

2011-12-07 23:44:15
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

誤解されないように言い添えておきます。どんな場合も「受容」からはじめることが基本なのは言うまでもありません。でも「受容の限界」について何も考えていない受容は、単なる自暴自棄と区別がつかない。

2011-12-07 23:48:11
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

きちんとわが子を受容するためにも、一定のルールとフェアネスに基づいた限界設定と、一貫性のある毅然とした対応、および少々の演技力が必要となります。

2011-12-07 23:50:54
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

逆に言えば、それらがあれば十分であって、たかが家庭内暴力ごときに専門家の手を借りる必要はありません。

2011-12-07 23:52:35
斎藤環(共著)『「ひきこもり」の30年を振り返る』 (岩波ブックレット) @pentaxxx

以前ここで紹介した論文に登場する、親殺し・子殺し事例のほとんどが、曖昧に「受容神話」を信ずる「専門家」の誘導によって、いっそう状況をこじらせていった事実があります。

2011-12-07 23:56:17