東浩紀: なぜ「書く」のか

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東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

本を書くというのは、原理的に自分の死後の読者に向けて書いているようなものなのだというのはよく言われることなのだけど、ぼくは一般意志2.0でようやくそれを具体的にも実現できたような気がする。

2012-01-15 01:35:06
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

ぼくが「本を書く」ことを大切にしているのは、ぼくは基本的に「いま流行しているもの」に興味がなく、ひとは「書く」ことによってしか「いまここ」の限界を超えられないと思っているからです。——そんな発想そのものがぼくの限界かもしれませんが。

2012-01-15 01:38:58
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

エクリチュールが「いまここ」を越えるというのはデリダ筆頭にフランス系思想の基礎なのですが、さてそこで問題なのは、エクリチュールがすべていまここを越えるかといえば、そうではないということで。

2012-01-15 01:49:32
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

その点デリダの議論は誤解されていると思うんだけど、彼が主張したのは、要はエクリチュールはつねにいまここを越える読解の可能性に「開かれている」ということでしかないんですね。つまり、当然だけど、文章いくら書いても、端的に忘却されたり消滅したりすればそれで終わりなわけで。

2012-01-15 01:50:50
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

というわけで、ぼくはエクリチュール派の原理主義的主張には疑義があって、エクリチュールはつねに「いまここ」を越える可能性をもつ、それは消費に抵抗する、<だからこそ>その生存確率を上げるようつねに事後的に文脈操作をしていくことが重要と主張しているのです。「存在論的」ってそういう本。

2012-01-15 01:53:22
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

そして、このような主張をするぼくは、思想界の常識からすると自己矛盾のように見えるはずなのです。なぜならぼくは一方で、エクリチュールは消費に抵抗すると言っておきながら、他方でその抵抗可能性(生存可能性)を高めるためには消費や資本主義の論理への介入を怖れてはならないとも説くから。

2012-01-15 01:55:17
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

エクリチュールが消費に抵抗するということと、その抵抗可能性をあげるために事後的に消費に介入しなければいけないということ。この両立がわかってもらえないと、ぼくの立場はいつも分裂に見えるのですね。つまり、「シリアスにコンテンツ作るぼく」と「おちゃらけコミュニケーションのぼく」に。

2012-01-15 01:58:07
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

この両立が理解しないゆえに誤解される、というのは、もうぼくの人生では一貫していて、思想界や文学界とうまくいかないのもそれが原因だし、他方でサブカル批評とかゼロ年代批評と最近うまくいかなくなっているのも原理的にはそれが原因だと思う。

2012-01-15 01:59:43
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

前者は、「東は文学や思想の時代への抵抗性を理解していない」とぼくを批判するし、他方後者は、「すべてのコンテンツはしょせんはコミュニケーションの道具でしかないのに、東はそのラジカルな認識を拒否してロマン主義者だ」と批判する。でもその両者は、ぼくにとってはほとんど等価なのです。

2012-01-15 02:01:40
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

で、これって具体的にはどういうことかというと、こういうことなんですよ。ぼくはむろん、何十年も先に残るような本を書く。というかそのつもりで書く(この時点で、そういうつもりで本を書いていない多くのひとはぼくの関心外になるわけですが、まあそれはいいでしょう)。

2012-01-15 02:03:17
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

しかしその時点ではぼくの前には、「著書が50年後に残っている未来」と「跡形もなく消えている未来」が開けている。だからぼくは、前者の未来が近づくように努力する。それはとても世俗的な努力なのだけど、それはあくまでも自分の著者が歴史に残る価値があるものだと信じているからなのです。

2012-01-15 02:05:10
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

このように書くと絶対、「もし本当に著書が歴史に残る価値があると信じているなら、出版以後の努力は必要ないのでは」という反論が来るのですが(投瓶通信)、その点については、自己実現予告とか虚構世界の存在論とかもろもろあって、ぼくはそういう単純な時間観で動いてないとだけ言っておきますね。

2012-01-15 02:07:28
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

そして以上が、ぼくが、小説と評論ふたつやっていることの、というか、やらなければならなくなったことの、もっとも本質的な理由です。

2012-01-15 02:08:19
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

あ、補足。最後時間性が云々といいましたが、それも本当はデリダから教わったことです。彼の「『幾何学の起源』序説」って初期論文はすばらしくて、そこで彼は、幾何学は本当に超歴史的なのか?という問い——というとソーカル事件みたいに聞こえると思うけど、そうじゃなくて

2012-01-15 02:11:00
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

「幾何学のような超歴史的理念が歴史的に生まれてきたということはいったいどういうことなのだ?!」という、なかなか深い話について延々と考えているのですね。ぼくはこの論文にすごく強い影響を受けていて、だからなんとなく、「おれすごいことやってるからもうOK」とか信じられない性質なのです。

2012-01-15 02:12:14
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

なんで急にこんなこと書いちゃったんだろう・・・

2012-01-15 02:13:41
東浩紀 Hiroki Azuma @hazuma

実際にはぼくはいま、アニソンとかがんがんヘビーローテーションしながら書いているのです。。。

2012-01-15 02:14:15