スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第一部「ネオサイタマ炎上」より:「スワン・ソング・サング・バイ・ア・フェイデッド・クロウ」 #5

2012-01-23 22:01:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ヤモトの周囲を再び、桜色の光に包まれたオリガミ達が舞う。「ドーモ。初めまして。ヤモト・コキです」彼女はアイサツし、新手の敵を睨んだ。「ドーモ。ヤモト・コキ=サン。シルバーカラスです」鈍色のニンジャはアイサツに応えた。そしてカタナを抜いた。「見せてもらおうか。ワザマエを」)

2012-01-23 22:02:59
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シルバーカラスはカタナを水平に構えたまま、静かに、だが恐るべき威圧アトモスフィアを発しながら、徐々に間合いを詰めてくる。オリガミはひとりでに鶴やイーグルの形に折られ、彼女を中心に渦を巻いて乱舞する。彼女の瞳が桜色の火を帯びた。 1

2012-01-23 22:11:30
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爆発四散したサードアイのニンジャソードは空中へ跳ね上げられていたが、くるくると回りながらヤモトめがけて落下して来た。ヤモトはそれを掴み取った。その刀身が松明めいて、桜色の光を薄く帯びた。 2

2012-01-23 22:15:55
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「……このシルバーカラスは卑しいニンジャだ」シルバーカラスは間合いを詰めながら言った。「戦い方も知らぬ罪なき市民を、鳥でも撃つように殺めて来た。イクサではない。ツジギリだ。誇る物など何も無い殺しだ。ただ己のカネの為に殺してきた。無益なカネの為にな」「……」 3

2012-01-23 22:24:47
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ヒュン、ヒュン、時折、ヤモトの周囲を旋回するオリガミの中から幾つかが編隊を離れ、シルバーカラスへ飛び込んでゆく。シルバーカラスは火の粉でも払うかのように、無造作に、カタナで、あるいはもう一方の素手で打ち払う。オリガミ・ミサイルは爆発の機会すら逸し、撃ち落とされて墜落するのだ。 4

2012-01-23 22:28:09
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「仕事に。作業にしてしまえば、恐れも罪の意識も感じない」シルバーカラスは続ける。「楽なものさ。これまでに何百人殺して来たかわからん。そのほとんどが、死んだところで治安機構も問題にせぬような弱者だ。効率が大事なんだ」「……」ヤモトはニンジャソードを構えた。「俺にかかって来い。娘」5

2012-01-23 22:37:18
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ヤモトはシルバーカラスの足運びに合わせ、一定の間合いを保つようにした。乱すな。心を乱すな。カギ・タナカの教えを。相手の切っ先を、軌道を。ネイチュアを読み取れ。心を乱せばおしまいだ。敵の狙いはそれなのだ。……シルバーカラスが踏み込む!「イヤーッ!」ハヤイ! 6

2012-01-23 22:41:15
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ヤモトは大きく横へ跳んでこれを躱す。彼女は畏れた。タツジン。さっきのサードアイとは格が違う相手だ。オリガミ・ミサイル達が、とっさに間合いを取るヤモトへのシルバーカラスの追撃を防ぐべく、ツブテめいて次々にシルバーカラスへ飛び込んでゆく。「意味の無い攻撃だ」シルバーカラスが呟く。 7

2012-01-23 22:47:21
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彼は残像が見えかねぬ速さでカタナを小刻みに動かし、飛来する全てを切り捨てた。無感情な目をヤモトに据え、なおも近づく。ヤモトの周りのオリガミから桜色の光が失せ、同時に地面へ落下した。意図しての事だ。使えない。今のこのイクサでは。「そうだ。カタナだ」シルバーカラスが低く言った。8

2012-01-23 22:51:24
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「カタナを振るえ」「イヤーッ!」ヤモトが仕掛ける!シルバーカラスは自剣の鍔でヤモトのニンジャソードを受けた。圧力!ヤモトは押し潰されそうになる。彼女の目が見開かれた。「イヤーッ!」呼吸の隙間を縫うように、彼女はくるりと回転し、この圧力を逃れた。シルバーカラスの側面を取る! 9

2012-01-23 22:54:56
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「イヤーッ!」横薙ぎの一撃。シルバーカラスは身を沈めて躱す。ヤモトはその動きを予期していた。脛を斬りにくる斬撃をも。ヤモトは己のカタナを振り抜いた時には既に次の予備動作に入っていた。足元を薙ぐシルバーカラスのカタナを側転で躱し、着地と同時に斜めに斬り下ろす。「イヤーッ!」10

2012-01-23 22:59:48
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「イヤーッ!」シルバーカラスはそれを自剣の鍔で弾き、前蹴りを放つ。「イヤーッ!」ヤモトは後ろへ跳ばず、その蹴りの動きを悟り、わずかに身を逸らして回避した。シルバーカラスの目が笑った。「イヤーッ!」ヤモトはシルバーカラスの軸足を蹴って転ばせようとした。 11

2012-01-23 23:04:28
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「イヤーッ!」シルバーカラスはその場で跳躍して回避すると、身体を捻って地面に手をつき、逆さになりながらヤモトを蹴った。「ンアーッ!」ヤモトは不意を打たれ、横から蹴られて地面を転がった。転がりながら起き上がると、既にシルバーカラスは目の前だ。大上段から振り下ろされるカタナ。 12

2012-01-23 23:06:37
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「イヤーッ!」ヤモトは地面を蹴ってシルバーカラスの懐へ飛び込む。その顔のすぐ横を死の刃が通り過ぎる。彼女の黒髪が幾筋か断たれ、桜色の光を帯びて宙を舞った。彼女はニンジャソードを振り抜く。シルバーカラスは振り下ろしたばかりの刃を跳ね上げ、これを防いだ。「なぜ泣く。バカめ」 13

2012-01-23 23:13:25
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「イヤーッ!」ヤモトが強引に自剣を再度撃ち込んだ。シルバーカラスは造作なくウバステの鍔で受け止める。「イヤーッ!」ヤモトは再び振り上げ、撃ち下ろす。やはり同じだ。鍔で受ける。「イヤーッ!」再三の撃ち込みだ。これも当然、鍔で受ける。「折れるぞ」シルバーカラスは閉口して言った。 14

2012-01-23 23:18:36
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だが、ヤモトは撃ち込みを止めない。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」振り上げ、振り下ろすたびに、彼女の目から涙が溢れた。シルバーカラスは繰り返し受けた。「なあ、やめろ、せっかくの、最後の、なんだ」彼は弱々しく笑った。やがてヤモトの手からニンジャソードが零れ落ちた。15

2012-01-23 23:25:42
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「時間が来ちまうよ」シルバーカラスは肩を竦め、カタナを下ろす。ヤモトは彼にカタナ持たぬ手をぶつけた。繰り返しぶつけた。シルバーカラスは後ろへ倒れ、尻餅をついた。ヤモトはシルバーカラスとともに倒れ込み、繰り返し、震える手で叩いた。やがて彼の胸で、声をあげて泣いた。 16

2012-01-23 23:33:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺の事がわかっちまったらインストラクションにならねえんだよ」シルバーカラスは言った。「殺し合いをしねえとよ」「そんなの無理だよ。カギ=サンだってわかるよ。当たり前だよ」ヤモトは嗚咽しながら声を絞り出した。「できないよ」「できねえか」「できないよ」「そうか」 17

2012-01-23 23:40:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は震える手で、嗚咽するヤモトの背中をさすった。「虫の良すぎる話だったな。お前まだ子供だってのに」ヤモトは泣き続けた。「結局タバコが吸えねえままになったか。インガオホーだな」シルバーカラスは掠れ声で呟いた。「悔いはまあ、そのぐらいだ。お前のおかげだ。黙ってジゴクに行くさ」18

2012-01-23 23:49:27
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……二人はその後、どのくらいの時間、そうしていただろう。幾つか言葉はかわしたに違いない。だが、さほど長い時間ではない。やがて、二人のうちの一人が……ヤモトが起き上がった。彼女は己の涙を拭った。そして追っ手から逃れるべく、その場を足早に去った。そうするしか無かった。 19

2012-01-23 23:57:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

数日後、アケガネ駅のホーム、耐重金属ジャケットのフードを目深に被った少女がいた。名をヤモト・コキ。彼女の腰に吊るされたカタナの鞘には(マッポーの世、武器を持った少女は稀ではあるが異常ではない)「ウバステ」と刻まれている。もとはシルバーカラスというニンジャの愛刀であった。 21

2012-01-24 00:07:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女が背負うリュックサックの中には、着替え、制服、日用品の類いに加え、高額のクレジット素子が入っている。彼女自身知らぬ間に、カギ・タナカが……シルバーカラスが押し込んだカネである。彼女の髪は長かったが、今は肩のところで切られている。 22

2012-01-24 00:14:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「電車が到着ドスエ。轢かれると多大な迷惑が重点」マイコ音声の警告が騒がしい。ヤモトはぼんやりと電車を待っていたが、何かを察知、改札階段の方向を振り返った。ダークスーツを着てサイバーサングラスを装着した三人の男が慌ただしく駆け上がってくる。三人は三つ子のようにそっくりだ。 23

2012-01-24 00:19:12