リブート、レイヴン #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『…ズッキュンズッキュンズッキュンズンズズ、ズッキュンズッキュンズッキュンズン、なんでもないのに体温上がって来ちゃって夢みたいー!!ズッキュンズッキュンズッキュンズンズズ…』凡庸なハードコア歌謡テクノが流れる、アンダー第三階層の複合商業的施設。2人は助手的な服を探していた。 23

2012-02-04 23:05:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こいつはどうだ?」ガンドーは有能秘書めいたレトロ調セットアップを選ぶ。シキベはどうも気乗りしない。試着したが、違うシリーズのアクションフィギュアを首だけすげ替えたかのようだ。「ウェー……所長?」「何だ?」「こういう普通なの、苦手…なんスよね。あとBGMもダサいデスし……」 24

2012-02-04 23:15:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイオイ、勘違いするなよ。ブッダも怒るぜ」ガンドーは首後ろのカートリッジ型素子を抜き差しし、端子の接触不良を改善しようと試みながら続けた「今回の依頼は、アッパーでの情報収集がメインになる。いつもの服じゃあ、何度マッポや警備スモトリに呼び止められるか、わかったもんじゃない」 25

2012-02-04 23:25:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

確かにガンドーの言葉は一理ある。ガンドー同様、彼女は陽光差さぬアンダーガイオンの出だ。アンダー生まれのマケグミは一様に、不健康そうな青白い肌を持つため、艶々としたアッパーの連中とは外見が明らかに違う。その上シキベのように薄汚い古着を纏っていれば、一部施設には入れないはずだ。 26

2012-02-04 23:32:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウェー、そうデスね、仕事ッスからね」シキベは納得したようで、どこか憮然とした態度で返す「ならせめて、私のセンスで選んでも、いいデスか?」「ああ」ガンドーは肩をすくめた。軽い偏頭痛が走った。…確かに俺は保護者じゃないしセンスも古い。ニュージェネレーションに口出ししすぎたか。 27

2012-02-04 23:43:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

午後三時。浮付いたアッパーガイオン大路を、ダスターコートの探偵が歩む。横には探偵助手めいた服装のシキベ。黒いパンツにサスペンダー、白ワイシャツ。所々に控え目なパンク的要素が混じる。セル眼鏡は傾いたままだ。「体の線が見えた方がずっといいな」「そうスか?」その胸は標準的だった。 29

2012-02-05 00:20:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まずどこに?」シキベが少しハキハキした口調で問う。服のせいか、アッパーの空気のせいか、それとも初めて本格的な調査に同行できて喜んでいるのか。「ライブラリだ」ガンドーは素子カートリッジから脳内へ流入してくるデータとズバリガムを咀嚼しながら、市の総合情報集積施設へと向かった。 30

2012-02-05 00:41:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「リキシャーとか、使わないんスか?」大路を歩くシキベは早くも息が上がってきたようだ。「情報は街の中にも転がってる」ガンドーはダストボックスから新聞紙を引っ張り出し、放り捨て、観光客やアッパー住民たちの話し声に耳を傾け、歩みを止めず目も合わさず馴染みの薬売人に万札を手渡した。 32

2012-02-05 00:48:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---「神出鬼没、正体不明、鮮やかな手口……カトゥーンも真っ青の典型的怪盗って奴だな。時代錯誤も甚だしいぜ」ツキヌケ・ライブラリの薄暗い閲覧室、ガンドーはLAN直結で様々な合法情報や非合法情報にアクセスし、シキベは新聞各社の年鑑でスズキ・キヨシ関連の記事をコピーしていた。 33

2012-02-05 01:01:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---「犯罪に使ったガジェットを列記だ」「ウェー……ドリル、睡眠ガス、スーパーカー、無線LANジャミング装置……」---「被害に遭った連中が、どこのメガコーポ系列か調べるんだ。カチグミ名鑑データのディスクを」「借りて来たッスよ」「手が離せない、右の端子に挿してくれ」--- 34

2012-02-05 01:08:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---「大丈夫なんスか、これ?」地下情報集積室前で、シキベは渡された偽造IDをUNIXのスロットに通し、セキュリティプログラムの代わりに作動中の電子タンクゲームを操作する。「あと3分だ」セキュリティ檻の向こうに行ったガンドーからIRCメッセージが届く「撃破されるなよ」--- 35

2012-02-05 01:14:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---「アー、撃破されたんスけど」「コンティニューしろ。暇つぶしだ。ハッキングには支障ない」---「高級オイランハウスに行く、2時間後にスシバー『大人』だ」「仕事する気になったんじゃないンすか?」「最高の情報収集源だ」「アー、だから経費なんスか」「言ってなかったか?」--- 36

2012-02-05 01:22:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---月明かりの下、縁側でキナガシを羽織り、白砂の海に浮かぶ見事なコケシ灯篭を見ながらズバリキセルを吹かすガンドー。背中合わせでオコトを爪弾く、たおやかで知性的なハイオイラン。「危険ドスエ」「いつもの事さ」「…3人組で遊びに来る御曹司の…」「…スズキ・キヨシな…」--- 37

2012-02-05 01:31:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---上級スシバー『大人』。客同士は黒いノレンで顔を隠し、互いの素性は割れない。カラオケステージでは『大人』の文字が輝きラメ壁に乱反射する。「体温上がって来ちゃってー!!」シキベは頬を真赤に染め屈辱に震えながら歌謡テクノを歌う。リアルヤクザはガンドーにメモを手渡した。--- 38

2012-02-05 01:41:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---「……同類だからな」「俺が?俺は探偵さ」「ヤクザは人類が残したジーンでありミーミーであり、いつか文明に大破局が訪れた時、ポストカタストロフィーの後にヤクザの暴力が人類を導く。そのために俺はリアルヤクザであり続けるのだ」「絶滅危惧種ってか?俺は選民思想は好かねえ」--- 39

2012-02-05 01:50:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---ザリザリザリ「ハァーッ!ハァーッ!俺は有能なヨージンボーだ!スモトリだ!マイッタカ!」ローマ百人隊長めいた平行モヒカンの大男は、背中のダクトから圧縮空気を排出し、口からは唾を吐いた。床に倒れ伏すガンドーに向けて。ザリザリザリ「所長ーッ!」叫ぶシキベ!---REBOOT 40

2012-02-05 01:59:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---ザリザリザリ「イヤーッ!」ガンドーの右セイケンヅキがスモトリ・ヨージンボーの顔面にめり込む!しかもその手には殺人凶器49マグナムが握られているのだ!「ウォーッ!」背後から棍棒を持った別モヒカンが襲い掛かる!BLAM!射撃反動による背面への高速肘打!「グワーッ!」--- 41

2012-02-05 02:07:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---ザリザリザリ。記憶がやや安定する。落ち着いたレコードの音。暖かに揺らめく電子ボンボリの間接照明。「探偵なんてうんざりだろ?」「遥かに良いっスよ」シキベは眠た目を擦りながら、UNIXキーを叩いていた。ガンドーは腫れた顔を冷やし、推理机で無数の手掛かりと向かい合う。--- 42

2012-02-05 02:13:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

---「まだUNIXか?」「アー、もう少し……いいスかね。忘れないうちに……」シキベは事務所の隅にいるガンドーの遠い背中を見つめながら、ヤスイ社のコーヒーをごくりと飲下した。「雇用期間は、あくまでも3ヶ月間だぜ。延長は無しだ」「わかってまスよ……」シキベは欠伸する。--- 43

2012-02-05 02:18:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ボーナスも出す。それで、もう少しマシな仕事を探すんだ」「……所長ォ、そういや、アンコ、止めるんスか?……」「ああ」「……何かあったんスか?」「俺も少しはマシな仕事をする。せめて、クルゼ所長がいた頃くらいのな」「……フアー、今日も寝てって……いいスか?」「ああ、俺は寝ない」 44

2012-02-05 02:26:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

古い医療用パイプベッドが微かに軋む。ガンドーの巨体ではないことに、安堵の息をつくように。驚くほど暖かく、心地良い、穏やかな空間だった。巣のような。「所長ォ……?」「早く寝とけよ」「所長にとって、探偵って、どんな仕事なんスか?」「俺にはこれしかできねえ。最低で最高の仕事だ」 45

2012-02-05 02:29:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アー……この前……聞きそびれて……何で探偵やろうって、思ったんスか……?」シキベが問う。ガンドーは話をはぐらかそうとしたが、シキベは食い下がった。「あのな……俺がガキの頃だよ。最下層の最低な場所で育ったんだ。笑いも娯楽もない世界で、不安しかない世界で、小さなゴミを拾った」 46

2012-02-05 02:34:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーはズバリが回り推理に夢中になっていた。だから何の小細工も歳相応の照れもなく、シキベに手の内を明かした。そうすれば寝ると思ったからだ。「汚水にまみれてくちゃくちゃになって乾いたカトゥーンリーフだ。レトロな探偵ものだ。それだけが俺の希望だった。それだけが俺の笑顔だった」 47

2012-02-05 02:39:10