住田町のちょっと怖い昔話(2012年2月)

▽「五葉山(ごようざん)」に入る山師の老人の家(岩手県住田町)で起きた話。 岩手県遠野のご当地ヒーロー「マブリットキバ @maburitto_kiba 」さんの聞き語りシリーズです。 ▽「岩手県に住田町というところがある。山に囲まれた町だ。自然が美しく、有名な滝観洞は八つ墓村(渥美清主演)でロケ場所になったところでもある。この話はそこに住み、山師として自然と向き合ってきた87歳の老人が語った話だ。今より40年ほど前の話になるだろう」……。  →▼住田町ホームページ(岩手県気仙郡) http://www.town.sumita.iwate.jp/
1
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

ではぼちぼちと岩手の不思議な話をしていこうか

2012-02-29 22:33:21
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

ここからの話は実際に本人から聞いたり、オレやスタッフが体験した話だ。もちろん、意味のわからない話が大半になるが、こういった話はそういうもんだ。マブダチが意味や正体を導き出してほしいと思う。想像こそ、未知に対する鍵なのだ。

2012-02-29 22:37:10
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

もう一つ。話の実際の場所や語ってくれた方の都合もあるので、そこらへんもぼやかしておく。こういった話は話半分に聞くのが面白いと思うので、そういうつもりで聞いてみてくれ

2012-02-29 22:39:22

  

はじまりはじまり

用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

岩手県に住田町というところがある。山に囲まれた町だ。自然が美しく、有名な滝観洞は八つ墓村(渥美清主演)でロケ場所になったところでもある。

2012-02-29 22:43:54
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

この話はそこに住み、山師として自然と向き合ってきた87歳の老人が語った話だ。今より40年ほど前の話になるだろう

2012-02-29 22:46:36

  

用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

男は山師として五葉山の周辺に毎日入り、仕事をしていた。その奥さんは他の町からお嫁さんとして輿入れしてきて幸せに暮らしていた。町から昔の岩手の山村に来たことは大変だったと思う

2012-02-29 22:49:02
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

奥さんは幸せだったが、1つその家で気になる部分があった。それは家の上の窓が夜な夜な気になるということだ。今まで町にいたのだから、田舎の家の高い窓が気になるのは仕方がないと思っていたそうだ。

2012-02-29 22:51:25
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

もちろん、その窓が気になることを山師の旦那さんやその母にも話したが、今まで何も起こっていないので「臆病だなぁ」と笑い話にしかならなかった

2012-02-29 22:52:53
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

しかし、夜になるとふと奥さんは目を覚ますのだ、それは決まった時間。そして起きて本能的に家の上の窓を見てしまう。田舎の家の深夜の空気は静かで重い。奥さんは何かあるのではと不安が大きくなっていった。その度にだんなさんに話すのだが「今まで何も無かったので何かあるわけは無い」と笑われた

2012-02-29 22:56:18
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

そしてあるとき、とうとうそれは起きた。奥さんがいつものように寝ているとまた不安で目を覚ます。そしてまた高い窓を見る。しかその日はいつもと違っていたのだ。家の中で物音が全くしない。横に寝ている旦那さんの寝息すらしない。家の中には居るが、まるで全ての時間が止まってしまったようだった

2012-02-29 22:59:52
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

尋常ではない雰囲気を感じ取った奥さんはジッと高窓に目を凝らした。すると窓から藁のようなものがするりするりと家の中に入ってくる。それはまるで外から誰かが窓に着物や藁の束を差し入れているようであった。それはするりするりと水のように床にまで垂れ落ちてきた。

2012-02-29 23:03:58
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

高窓から何かが家の中に入ってくる、暗闇の中で奥さんは魅入られるようにジッと息をこらしてそれを見ていた。恐怖よりも、「それがなんなのか」という気持ちの方が強かった。しかし、その好奇心はすぐに掻き消える事になる

2012-02-29 23:06:13
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

窓の隙間からするりするりと入ってきている藁の束のような水の束のようなもの。それはなんと「人」であった。いや、厳密に言うと「人のようなもの」だ。着物を着た女がつながりあって、絡み合いながら高窓から家の中に水のように流れ込んできているのだ。

2012-02-29 23:08:40
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

家に流れ込んできている「人のようなものは」はどんどん流れこんでくる。窓から流れ込んで家の板床の上に泥のように溜まり、暗闇でずるずると動き出した。奥さんはハッと我に返り、横で寝ている旦那さんを「起きて!」と呼び起こした。

2012-02-29 23:11:30
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

旦那さんも山師、奥さんの尋常ではない問いかけにすぐに飛び起きて「何事だ!誰かいるのが!」と声を張り上げた。奥さんはすぐに旦那さんに「あそこだ、あそこだ、人が家さ流れ込んできてるんだ!」と指を差す。旦那さんは横にある仏壇から山刀を引っつかんで暗闇に大声でさけんだ

2012-02-29 23:15:53
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

「誰かは知らんが入る家を間違えてるぞ!うちには山刀があるがらな!」旦那さんは山刀を暗闇に向け叫んだ。すると家に入り込んでいた「人のようななにか」はすごい勢いでずるずるーっと高窓まで戻っていった。まるで着物をひっぱるようにするするーっとそれは窓の外に吸い込まれていった。

2012-02-29 23:19:37
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

そして家の中にいつもの静寂が訪れた。その空気で奥さんは感じた「もうアレは二度と来ない」なんとなくそう感じたそうだ。山師の旦那さんも始めての事でひどく驚いていたそうだ。丸一日話してもそれが何であるのか、夫婦と祖母が話しても正体はわからなかった。近所にも笑われるから話すまいと決めた

2012-02-29 23:23:05
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

それから二日後、向かいの家のお婆さんが亡くなったそうだ。しかし、それと「ひとのようなもの」の因果関係はわからずじまいだった。結果、なにもわからないままこの話は終わるのだ

2012-02-29 23:25:27
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

奥さんはもうおばあさんで笑いながら話してくれた「いや、あんだ。それは今でもわがんねえのす。でもあんたに話せばあれが何かわがるかなーって思って。きっとあれは間違って家に入ってきた何かなんでねえかなって思うしかねえのす」

2012-02-29 23:28:34
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

オレはおばあさんに言った「スライムじゃないの?トイザラスに売ってる奴かな?」横に居た相棒に激しく怒られた。

2012-02-29 23:29:58
用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

まぁこの話はここで終わりだ。結果、それは誰にもわからない。しかし、百戦錬磨の山師が本能的に山刀を振り向けるという事は尋常ではないという事がわかる。

2012-02-29 23:31:48

  

用心棒のキバさん(四代目キバ) @maburitto_kiba

ちなみにこの話に出てくる「山刀」ってのは昭和の初期まで代々山師として働く者が先祖から受け継いでいる「ナタ」の事だ。熊刀ともいって、ナタとは別に一本下げて歩く「護身の刀」の事。文字通り熊に襲われたとき、仰向けになってブスリとやる為のモノなのだ。

2012-02-29 23:35:38