- ishii_mamachyan
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では始めるとしよう。まずマブダチは動物好きが多いので、岩手の動物の不思議な昔話にしようじゃないか
2012-03-01 22:32:44この話は岩手で言うと、旧川井村から住田町、五葉山のあたりの話だ。語ってくれたのは85~94歳のお年寄りの方々。今はほとんどが亡くなったので貴重な話だ
2012-03-01 22:34:50みんなは「狼」をしっているかい。日本ではもう絶滅したニホンオオカミの事だ。岩手の山にももちろんいた。まずはそのおニホンオオカミにまつわる不思議な話をいくつかしよう
2012-03-01 22:36:54山師の老人はオレに「おおかみをご存知でしょう?」というので「知っているとも、偉大な山の守り主だ」というと、、山師の老人は「全くその通り。今は全滅しましたが、貴方は私たちのような山師や猟師が簡単に撃ち殺したと思っているのでしょう。それは違います」と神妙な顔つきで言う
2012-03-01 22:43:25山師の老人は言う「古来から山に入りたる者、山に生かされているものであれば、狼の重要性を知らぬものはいない。それを撃つなどとは恐れ知らずなのです」従って、流行の鉄砲打ち(趣味のハンター)以外に狼を撃つものはいなかった。と、老人は言うのだ
2012-03-01 22:46:32オレは言う「しかし、人間が撃ち殺して絶滅したはずでは」。それに山師が返す「狼を撃ってなんになろうか。肉が取れるわけでなし、むしろ撃てば自らに徳は無い。当時、鉄砲一発ぶつのにどのぐらいの手間がかかるか。政府の出した賞金では狼を撃っても全然元がとれない。従って撃つ者はいなかった」
2012-03-01 22:50:03オレは訪ねた「誰も撃たなかったのに、狼がいなくなったというのは理屈に合わない。いったい岩手からなぜいなくなったのか」。山師の老人はすぐに返す「いなくなったのです。彼ら狼は我等を捨てたのです。」そして老人は当時の話をゆっくりと話し始めた
2012-03-01 22:52:51政府から狼を捕獲するようにとお達しがあったが、山の掟に逆らうので誰も撃とうとしなかった。むしろ山で見ても見て見ぬフリをしたそうだ。狼は人に手出しをすることは無いので、元からいても害は無い。たまに狼を撃ちたいという一般のハンターがきたが、ウソを言って追い返していたそうだ
2012-03-01 22:55:22そうした時、山に狼が突然増えだした。見慣れぬ狼もいる。これはどうした事かと集落で集まってみんなで話しをしたが答えは出なかった。そしてある日にそれは起きたのだ
2012-03-01 22:57:02山師の仲間が夜中に家に飛び込んできた。聞けば山で大変な事が起きているというのだ。山師たちは集落で集まって山に様子を見に行った。そこには驚くべき光景が広がっていたのだ
2012-03-01 22:58:38山の谷間をうごめく多くの影、全ては狼だ。その数は200を越えるほどいるだろうか。目に見える範囲でその数だ。山師たちは天変地異があるのではないかと話しながら狼の群れの同行を見守った
2012-03-01 23:00:37山の谷間をうごめく多くの影、全ては狼だ。その数は200を越えるほどいるだろうか。目に見える範囲でその数だ。山師たちは天変地異があるのではないかと話しながら狼の群れの同行を見守った
2012-03-01 23:00:37山師たちが見守る中、突然狼たちは動き始めた。ゆっくりと大行進をして皆、早池峰山、つまりは北へと方向を決め歩いていくのだ。そうして、明け方には全ての狼がいなくなった
2012-03-01 23:02:47山師の老人は言う「どうですか?狼たちは自ら去っていったのです。見慣れぬ狼たちは南からやってきて合流してきたのでしょう。そして北を目指して去っていったのです。そしてそこからは誰もわからないのですよ」
2012-03-01 23:04:48オレは老人に言う「なるほど。つまりは狼たちが山を去っていった。だとしたら今はどこにいるのだろう」。老人は答える「それは人の知らぬ場所でしょう。鬼でもたどり着けぬ、そういうところにいるのではないかと思います。しかし、山はそこから寂しくなったと集落の人は口々に語ったそうですな」
2012-03-01 23:07:46最後に山師の老人は山を見ながら言った「貴方は狼が人を恨んでいるとお思いか?」。オレは答える「恨むだろうな」。すると山師の老人はカッカッカッと笑い答えた「狼は、この世の動物は、人がそういう生きものだと知っていたのではないのでしょうかな。人は奪い、駆逐する事で生きていく生き物だと」
2012-03-01 23:11:30老人は続ける「私たち人間の事を山の動物たちは知っている。だからこそ、人を知っているケモノ達は自ら争いを起こさず。人のみを残して去っていった。奥ゆかしく強いと思いませんか?」
2012-03-01 23:13:18オレは老人に言った「哲学は苦手なんで、うまいキノコのとれる場所を教えてくれないか?」一緒に行った相棒にすさまじい軽蔑の目で見られた
2012-03-01 23:15:15老人の狼の話はここまでだ、怖い話を期待した人には申し訳なかったがどうだったかな?オレはその後キノコをもらって上機嫌だった事をよく覚えているのだ
2012-03-01 23:20:05ここで小ネタを1つ。岩手には早池峰山がある。そこは今でも山師やレンジャーの訓練の人達が山の奥に入るのだが、そこである噂というか不思議な話をよく聞くのだ
2012-03-01 23:22:30それは早池峰山の奥で寝泊りすると狼の声を聞くということ。そしてナキウサギの鳴く声聞くというのだ。聞いた人は「間違いない」と言う。
2012-03-01 23:24:49オレはその度に山師の老人の言った事を思い出すんだ「鬼でもたどり着けないところに、狼たちはいるのでしょう」と。そして無性にキノコが食べたくなるのだ。
2012-03-01 23:26:04オレが話を聞いたとき、老人は家の奥から「山師代々に伝わる最高のお守りですよ」と狼の牙と爪を持ってきて見せてくれた。狼の匂いはあらゆる動物は敬遠する、山歩きには最高のお守りなのだと笑って言っていた。それは老人が山に還ったときに棺おけに大事に入れられた
2012-03-01 23:29:52