チューブド・マグロ・ライフサイクル #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第2部「キョート殺伐都市」より 「チューブド・マグロ・ライフサイクル」#2

2012-03-20 22:28:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エー、では次の人、中に入ってください」白衣を着たヨロシサン製薬の研究員が、サイバーメガホンで新たなアルバイターを呼んだ。白セルロイドの上から強化プラスティックでコーティングされたような、チューブめいた無機質な廊下には、白い清潔な服を着せられた下層労働者数名が列を作っている。 1

2012-03-20 22:36:13
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列の先頭にはヨシチュニ・ヒロシ。少し緊張していたが、研究員の物静かな顔とヨロシサン製薬のバッジを見て、落ち着きを取り戻す。(((そうだ、これはヨロシサンの新薬実験だ。大手企業じゃないか、安心だ!信頼感!儲かる!)))笑顔を作り、研究員に小さく一礼する。そしてフスマに向かった。 2

2012-03-20 22:44:42
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「おい、俺に先に行かせろや…」粗暴な腕がヨシチュニの肩を掴んだ。列の最後尾に並んでいた屈強な体つきの男で、名はヨダギ。岩から削り出されたように彫りが深く、筋肉質の体はヨシチュニの2倍の重量を誇る。「これで仕事は全部終わりなんだろ?とっとと帰って、オイランハウスに行きてえんだ」 3

2012-03-20 22:54:18
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「なあ、どうなんだい?」ヨダギは首を鳴らしながら研究員に問う。廊下の天井に備わった銃口付ビデオカメラ2機が自分の頭を捕捉していることに、彼は気付いていない。「いいですよ、どうぞ」研究員は壁のボタンを押し、ヨダギを小部屋に入れて「すみませんね」とヨシチュニに笑いかける。 4

2012-03-20 23:00:18
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2畳ほどの小部屋にヨダギが入ると、後ろでドアが閉まった。目の前には分厚いドアが。壁にはヨロシサン製薬の各種ドリンク自販機が埋め込まれ、カネを入れなくても自由に飲める。正面ドアに貼られたポスターには「静かに待ってください」「開くと奥へ」と、蛙と兎が吹き出し付きで解説していた。 5

2012-03-20 23:12:19
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少しして「開くドスエ」と電子マイコ音声。前方のドアが開き、圧縮空気が仰々しく排出される。「何だ、こりゃア……?」ドアから出たヨダギは驚嘆した。目の前に広がっていたのは、爆撃されたビル街めいた広大な廃墟である!BLAMBLAMBLAM!いずこかで銃声!「アイエエエエエ!」悲鳴! 6

2012-03-20 23:26:17
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「ウオオオーッ!?」困惑するヨダギ!後方でドアが自動的に閉じる!「もはや後戻りはできないドスエ」無機質な電子マイコ音声!「壁に掛かっている武器で武装ドスエ」ヨダギはドアの左右を見た。なるほど、確かに壁があり、各種装備が吊るされている。ここは恐ろしいほど巨大な戦闘実験室なのだ。 7

2012-03-20 23:34:00
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「ニイイイィィィーッ!」鹿の鳴き声が聞こえる。妙な胸騒ぎを覚える。「ブッダ!何が起こるってんだ!?」ヨダギは戦争映画のワンシーンを思い出しながらプロテクター付きの防弾ベストを纏い、ガレキから足を守るためにコンバットブーツを履く。それからオートマチック拳銃とカタナで武装した。 8

2012-03-20 23:42:37
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待合室で飲んだ四本のバリキドリンクと2本のコブラZが回ってきたのか、ヨダギは眼を血走らせ、歯を喰いしばり、ベトコンめいた形相でガレキの中を駆け抜ける。「畜生め、何だろうとやってやるぜ、ブッ殺してやる!」小高い場所に上ると、20メートルほど先にマシンガンで武装した人影が見えた。 9

2012-03-20 23:51:16
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(((あれを殺すのか?)))ヨダギが身を屈める。だが違った。マシンガンを持ったアルバイターは、別な方向にフルオート射撃を繰り出したのだ!「アイエエエエエ!アイエエエエエ!」アルバイターの絶叫!(((何だ!?マシンガンを持ってる奴が、あそこまでビビるような敵とは何だ!?))) 10

2012-03-21 00:00:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニィイイイイイーッ!」鹿の声!?「アイエエエエ!」断末魔の絶叫が響き渡る!四本足の黒い影が恐ろしいスピードで走りこんできて、一瞬でマシンガン男をキリタンポめいた死体に変えたのだ!そしてその奇怪な影は、今度はヨダギめがけて一直線に接近してくる!ヤリの穂先をぎらつかせながら! 11

2012-03-21 00:02:38
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「鹿!?人間!?…違う!」ヨダギは拳銃を乱射しながら、おそるべき敵の姿を見た。ナムアミダブツ!それは常人が正視してはならぬ、あまりにもおぞましき姿!逞しい大型バイオ鹿の四本足に、人間の上半身!しかも上半身はニンジャ装束に包まれている!「アイエエエエ!アイエーエエエエエエ!」 12

2012-03-21 00:10:36
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「ニィイイイイイイーッ!ニィイイイイイイーッ!」ギリシャ神話のセントールを思わせるそのニンジャ存在は、ガレキの山で作られた悪路を軽々と踏破し、駆け上り、銃弾を回避して、右手に構えた電磁ヤリを容赦なくヨダギに向かって突き立てた。…ヨダギは悲鳴を上げる間もなく、一瞬で絶命した。 13

2012-03-21 00:17:23
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モニタ室。全方位を防弾ガラスに覆われ、安全な高所から最新のバイオニンジャ被検体「セントール」の戦いぶりをモニタできる。室内には主任研究員のヨシダ先生、そしてザイバツ・シャドーギルドから監視役兼施設防衛役として派遣されたエージェント、スカベンジャーがいた。彼は当然ニンジャだ。 15

2012-03-21 00:26:18
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「今後想定される戦場の九割は、市民ゲリラを相手にした廃墟での戦闘。四本足なのでその辺は得意です」ヨシダ・アモト先生が解説する「しかも半分鹿なので、日本人は攻撃を躊躇します」「冒涜的なバケモノだな…」濃紫色のニンジャ装束を纏ったスカベンジャーは、メンポの奥で自嘲気味に呟いた。 16

2012-03-21 00:39:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しかしヨシダ=サン、問題はニンジャだ…」スカベンジャーが問う「鹿と人間をヨロシサン製薬のバイオ技術で融合させ、最強の殺戮マシーンを造り出す……そこまではいい。だが何故、あいつはニンジャなのだ?」「あれは……」ヨシダ先生は口ごもる「偶然の産物なのです、爆発事故によって……」 17

2012-03-21 00:45:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「爆発事故によって偶然ニンジャソウルが憑依した、と……?」スカベンジャーが射竦めるような目で主任研究員を見る。「ハイ」とヨシダ。「……ザイバツはニンジャソウルに対する実験行為を禁止している。支配階級たるニンジャがモルモットめいた扱いを受けては、我らの理想が揺らぐからだ……」 18

2012-03-21 00:55:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイ、リー先生は狂っていました。彼はもうヨロシサン製薬の人間ではありませんから、無関係です」ヨシダは理想的な回答を返す。ソウカイヤ壊滅後、リー先生はザイバツの後ろ盾を求め、両者間で協力体制が築かれかけたが、彼の実験はあまりにもシャドーギルドの理想にとって有害であったのだ。 19

2012-03-21 00:59:59
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「……まあ、堅苦しい話は抜きにしよう、ヨシダ=サン」スカベンジャーが小さく笑う「心配は無用だ。俺の見立てでは、セントールの実験に何も問題は無い。そしてそれが、ザイバツ・シャドーギルドの答えだと思って構わん。少なくとも、俺がヨロシサン実験部門の監視役である限りはな……」 20

2012-03-21 01:09:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイ。では、次のアルバイターを投入しますか?」ヨシダ先生がボタンに手をかける。「いや、待て」そう言いながらスカベンジャーは、自らの掌を天井のライトにかざした。血管の中を、緑色の特殊細胞が流れている。「ヨシダ先生、あんたが施してくれたバイオ手術の成果を、実戦で試すとしよう」 21

2012-03-21 01:15:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」スカベンジャーは中央モニタ室の床を開け放つと、軽やかに前方回転しながら眼下の戦闘実験区画へと降下!「イヤーッ!」崩落した四階建てビルディングの給水塔、隣のビルの「おうどん」カンバン、さらに隣のビルの「ザンダー」カンバンを蹴り渡り、ガレキの山の上に着地した! 22

2012-03-22 21:32:11