チューブド・マグロ・ライフサイクル #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、セントール=サン、スカベンジャーです」流れるようなアイサツ。背後で崩れ落ちるカンバンが、日常と地続きのポストカタストロフィー感を醸し出す。「ニィイイイーッ……ドーモ、セントール……です……」異形のニンジャもまた、鹿めいた知性を振り絞り、ぎこちないアイサツを決めた。 23

2012-03-22 21:39:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オジギ終了から、わずか0.5秒!「ニィイイイーッ!」狩猟本能に衝き動かされたセントールは、後脚で棹立ちになってから、電磁ヤリを水平に構えて一直線に騎兵突撃を敢行!廃墟と化したビル街を神話的生物兵器が駆け抜ける光景は、とてもコワイ!古事記に予言されしマッポーの一側面なのか!? 24

2012-03-22 21:47:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」スカベンジャーは2枚のスリケンを投擲!さらに前宙でセントールの突進を回避!「ニィイイイーッ!」胸に2枚のスリケンが突き刺さり血が吹き出すが、怪物は意に介さない!すぐさま突進を中断し、後方を取ろうとする敵めがけて鹿めいたキック!「ニィイイイーッ!」「グワーッ!」 25

2012-03-22 21:51:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

肋骨胸骨粉砕!ワイヤーアクションめいて吹っ飛び、黒焦げのビル壁へと叩きつけられるスカベンジャー!間髪入れず、電磁ヤリをぐるぐると回しながら、セントールが突進してくる!「ニィイイイーッ!」「グワーッ!」電磁ヤリがスカベンジャーの腹部を貫通!壁に串刺しにされ動けない!ナムサン! 26

2012-03-22 21:55:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここでスカベンジャーに不可解な動き!自らのニンジャ装束の懐に手を差し込み、何か小型の……キノコじみた物体を取り出す。これは一体!?だがそれを口元へ運ぶ寸前、セントールのフックが叩き込まれた!「ニィイイイーッ!」「グワーッ!」続けざま顔面へと左右のカラテ連打!吹き飛ぶキノコ! 27

2012-03-22 22:01:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

さらにセントールの猛攻!前脚で腹部にケリキックを連発する!「ニィイイイーッ!」「グワーッ!」二本の腕と二本の脚が同時に襲い掛かる非人間的カラテ!ヨシダ先生は緊急停止ボタンに指をかける!だが「止めるなよ!実戦に緊急停止は無い!」スカベンジャーが右手を掲げ人差指を左右に振った! 28

2012-03-22 22:12:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

半死の状態でも、彼の戦意は未だ衰えていないのだ!「イヤーッ!」電撃的なチョップでヤリの柄を破壊し、窮地を脱する!さらにセントールの肩を踏み台にして跳躍し、傾いたビルの壁を蹴って、反対側の屋上へと着地!そして胸元から再び……キノコじみた物体を取り出し……咀嚼するというのか!? 29

2012-03-22 22:16:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……一方のセントールは、禍々しい割れ蹄を打ち鳴らして怒りを露にすると、自らも逞しい四本足でビル壁を蹴り、マウンテンゴートめいた巧みさで垂直移動。血の跡を辿り、手負いの獲物を追う。人間の狡猾さと、野生動物の狩猟本能、そして邪悪なニンジャソウルが三位一体となった……冒涜的怪物! 30

2012-03-22 22:26:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

屋上で獲物を発見!背を向けている!セントールは大角を低く構えて肉弾突進!だが、振り返ってジュー・ジツを構えたスカベンジャーの目には余裕の笑み。ナムアミダブツ!腹部の傷が泡立ち、驚くべき速さで肉体再生が行われているではないか!「ニィイイイーッ!」「イヤーッ!」交錯するカラテ! 31

2012-03-22 22:29:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニィ……イイイイイーッ……」首の後ろにチョップを叩き込まれた怪物は、泥酔したパン神めいてよろめき、床の崩落部を踏み外すと、そのまま転落して失神した。「……やはり、戦闘中には使えんか……」給水塔の上に立ったスカベンジャーは、完全に塞がった傷跡を撫でながら冷静な分析を行った。 32

2012-03-22 22:37:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一体何故、彼の傷は再生したのか?ジツを使ったのか?…否、マツタケである。ニンジャにしか耐えられない特殊バイオ手術を受けた彼は、マツタケと呼ばれる特殊なキノコを経口摂取することにより、驚異的速度で肉体再生を行える体を手にしたのだ。彼もまた、恐るべきバイオ技術の怪物なのである。 33

2012-03-22 22:46:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨシダ先生、手術の結果は上出来だ。むろん、今後の手術で、対象となるキノコの幅は増えるのだろうな?」スカベンジャーはインカムのスイッチを押し、通信を行う。「もちろんです」と先生。「セントールの能力も把握した。手加減したとはいえマスター位階の俺に手傷を負わせた。悪くない……」 34

2012-03-22 22:53:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「大変お世話になっております!」とヨシダ先生。「それでだ……ニンジャではないただのバイオ騎兵は、すでに完成しているのか?」「いいえ……」ヨシダ先生の表情が曇る「先の爆発事故で研究員数名が死亡し、バイオ融合手術のエキスパートも失いました。彼の置き土産がセントールなのです……」 35

2012-03-22 22:59:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……何だと?」ニンジャの眉根が動く。「も、勿論ネオサイタマから人材を補充し、融合バイオ手術やクローン実験は継続していますよ!そのために材料を集めています。しかしどれも拒否反応が起こり、2~3日で絶命、または狂死するのです」「なるほどな……実験を継続しろ」「ヨロコンデー!」 36

2012-03-22 23:06:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((この再生能力と俺のジツ、そしてヨロシサン製薬の後ろ盾があれば……グランドマスターの座も夢ではない。おお、全てはロード・オブ・ザイバツと、来たるべき理想世界のために……!ニューワールドオダー……!)))スカベンジャーは直立不動の姿勢で、静かにバンザイ・チャントを捧げた。 37

2012-03-22 23:13:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

直前で実験が中断されたため、ヨシチュニ・ヒロシは他のアルバイターたちと共に、下の階のリラクゼーション・ホールに返された。ここでは被験者たちのヘルスコンディションを崩さないように、木製の板に盛られた上質なオーガニック・スシが支給される。スシは完全食品だからだ。 39

2012-03-22 23:22:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

上品な畳の香りが漂う広いホールには、真白い服を着せられた三十人ほどのアルバイターたち。ガスマスクを被ったクローンヤクザたちが、消毒液噴霧器を背負って定期的に巡回している。「やっぱりうまいなァ、これ……」ヨシチュニはチャブに座り、マグロやグンカンやイカを黙々と口に頬張った。 40

2012-03-22 23:27:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

緑茶を飲み干して息をつくと、彼は白い天井を見上げ、ここ3日間のことを反芻する。……ヨロシサン製薬施設に到着した彼らは一列に並べられ、基礎的な身体検査が行われた。血液検査の段階でいつの間にかマサムネとは別れており、その日はスシを食って寝た。それだけで日当1万円がもらえるのだ。 41

2012-03-22 23:35:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二日目も体力検査や知能検査などが続き、スシを食って万札をもらって寝た。そして三日目。昼のスシを食った後に、上階に送り込まれ……最終実験の直前でアクシデントが起こり中断した。誰も文句を言う者はいない。またスシを食って寝るだけで、万札が手に入るからだ。あとは明日まで自由時間だ。 42

2012-03-22 23:40:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

残念ながら私物は一時没収されたので、ガイド本で勉強はできないが、キョート観光ガイドTVが流れているので、それを観ればよい。ホールには埋め込み式TVモニタが複数あり、あちらでは何人かが最新PV映像に合わせてテクノダンスを踊っている。ここはまるでブッダの理想郷、ニルヴァーナだ。 43

2012-03-22 23:44:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……こんな簡単でいいのか?」ヨシチュニは少し疑問を抱いた。周囲を見渡すと、他のアルバイターたちは一様にリラックスした……あるいは下層民特有のボンヤリとした顔つきでスシを食ったり、TVを見たり、寝たりしている。「俺の考えすぎだよな…」彼はタノシイドリンクを開け、飲み干した。 44

2012-03-22 23:51:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ホールにも無料の自販機がある。バリキ、ザゼン、タノシイ、コブラZなど……ヨロシサン製薬から市販されている栄養ドリンク類は、用法用量を守らずに服用すると、様々な麻薬的効用を得られる。タノシイドリンクであれば連続3本摂取で軽いトリップ。多幸感を前借りし、いずれ感情が枯れ果てる。 45

2012-03-22 23:55:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

まだ疑念と不安が治まらないヨシチュニは、三本目の蓋を捻ろうとする。不意に誰かの手が横から伸び、それを止めた。ターコイズ色のモヒカンパンクス。記憶を失った男、マサムネだ。別のホールにいたのか、時間がずれていたのか、初日に別れて以来の再会である。「ここ、座っていいな?」「ハイ」 46

2012-03-23 00:01:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マサムネが同じチャブに座り、ニヒルな表情でスシを食う。ヨシチュニは少し安心感を覚えた。マサムネはドリンクを飲まない。「……何万儲かった?」「2万です。寝たらさらに1万」「何万でも同じだ……全員死ぬ」「エッ?」理解不能。再びヨシチュニを不安感が襲う。「……記憶が少し、戻った」 47

2012-03-23 00:13:05