“経済成長で社会発展”という考え方の3つの矛盾点

経済成長が人々の幸福を阻害することもあるというお話。
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メテオラシャワー @meteor_showr2

脱成長に関する本を読んだので一部分を要約というか解説してみるよ。

2012-03-28 22:10:11
メテオラシャワー @meteor_showr2

参考本では経済成長がすべての社会問題を解決するという考えには、欲求、蓄積、生態系という3つの事柄に関する矛盾があると批判されている。

2012-03-28 22:13:22
メテオラシャワー @meteor_showr2

一つ目は欲求。経済というのは「負」の克服を前提にしている。

2012-03-28 22:31:22
メテオラシャワー @meteor_showr2

負の克服というのは、空腹を満たしたいとか厳しい暑さ寒さを和らげたいという基本的な欲求からはじまり、手間のかかる家事を楽にしてくれる家電やさえない見栄えをカムフラージュしてくれるファッションやステータスシンボル的な高級ブランドといった高次の消費行為もある。

2012-03-28 22:34:05
メテオラシャワー @meteor_showr2

先進国では新商品を売るために無用な不安、不満を煽ることで新しい欲求が創出される。スポーツ用品や健康サプリを売るには自分は不健康だ、とか不健康になるのでは、とか感じる消費者がいないとけない。非経済的な人間活動が経済の一部として組み込まれ、生活の全てが商品化されていく。

2012-03-28 22:41:24
メテオラシャワー @meteor_showr2

また、自由主義の経済理論は、ムラ社会的しがらみを個人の自由に対する敵といわんばかりに非難する。

2012-03-28 22:46:18
メテオラシャワー @meteor_showr2

しかし、しがらみは非貨幣的な互助関係を保つ大切な連帯でもある。自由主義は、現金収入が低くても人付き合いや家族内の助け合いによってなんとかやっていく、という生活スタイルを抑圧の典型とみなしがち。

2012-03-28 22:46:24
メテオラシャワー @meteor_showr2

一方では人為的に創出された欲求不満に苦しむ人たちがいるし、他方では生存を脅かすほどの生活必需品の欠乏と労働の搾取に苦しむ人たちが生じている。それが、経済成長こそ社会の問題を解決するという主張がかかえている矛盾のひとつ目。

2012-03-28 22:53:31
メテオラシャワー @meteor_showr2

矛盾の2つ目は、蓄積に関するもの。資本の蓄積は、とくに発展途上国においては、一部の者が強引にでも蓄財して経済力を獲得すれば、そのあとで貧しい者もそのおこぼれにあずかれるという考えのもとに正当化されている。これはトリックル・ダウンと言われる理論。

2012-03-28 22:59:27
メテオラシャワー @meteor_showr2

財産の蓄積は所得の不平等なしには起こらない。もちろんその経済圏の状況によっては成功することもあるし、そのへんはwikipediaに詳しいけれど、そもそも不平等を解決するためにはまず不平等を拡大しなければならないというのは蓄積を肯定するトリックル・ダウン理論の矛盾。

2012-03-28 23:10:56
メテオラシャワー @meteor_showr2

3つ目の矛盾は生態系に関する矛盾。経済成長のための活動はしばしば成長率低下の元凶になる。鉱山や化学工場の排出物質が公害を引き起こし、近隣住民の健康を害した場合、彼らの労働力は低下する。

2012-03-28 23:20:02
メテオラシャワー @meteor_showr2

また、森林破壊によって森の保水能力が失われ、大雨で大きな土砂災害が起こることもあるし、過剰な農地開発は土壌を荒廃させてしまうこともある。とある報告によると、1985年におけるドイツでの環境破壊による損失額は、GDPの6%に上ったとも言われている。

2012-03-28 23:23:29
メテオラシャワー @meteor_showr2

あるいは単純に、外延的な経済成長では資源の枯渇という問題も生じる。いずれにしても生態系の汚染と破壊が即座に経済的な損害になるわけではない。のちのちになって、ときに世代を越えて、当事者の関知しない人々の上にツケとなって振りかかることもある。

2012-03-28 23:35:43
メテオラシャワー @meteor_showr2

外延的(経済)成長。※英語です。 Extensive growth - Wikipedia, the free encyclopedia http://t.co/5rD8zfLB

2012-03-29 00:17:40
メテオラシャワー @meteor_showr2

開発が生態系への大きな負荷を伴うものならば、経済活動が社会的な経済損失に転換されうる。この矛盾は外部不経済とか世代間倫理とかのキーワードによって論じられてきたものでもあるし、昨今の原発問題はこの典型だろう。

2012-03-28 23:41:22
メテオラシャワー @meteor_showr2

以上、経済成長の3つの矛盾はこちらの本に書かれていたもの。それぞれの内容は個人的に咀嚼した結果です。 Amazon: 経済成長なき社会発展は可能か?――〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学 [単行本]: セルジュ・ラトゥーシュ, 中野 佳裕 http://t.co/NZnlUA2I

2012-03-28 23:46:49
メテオラシャワー @meteor_showr2

参考本の著者はラトゥーシュというフランスの経済哲学者。フランスの文人はなにかとアメリカ的価値観に反発していることが多い。本書は脱成長=デクロワサンスを主題に、現在主流の社会福祉論とか環境保護論、人権保護論より急進的な主張を展開している。

2012-03-28 23:55:23
メテオラシャワー @meteor_showr2

急進的であるがゆえ、残念ながら経済成長の負の側面ばかりをあげつらって経済成長が社会幸福に寄与した反例の言及には乏しい。

2012-03-29 00:02:52
メテオラシャワー @meteor_showr2

ラトゥーシュの主張は貨幣経済批判、市場原理主義批判、グローバリズム批判など、これまでさまざまな人によってなされてきたテーマと同じ方向性。ノマド論とかニート論とか評価経済社会とかとも親和性が高い。ローマ・クラブが論じたところの「成長の限界」がこれらの源流にあたる。

2012-03-29 20:02:52
メテオラシャワー @meteor_showr2

次代のあるべき姿のヒントとしてトフラーが生産消費者と言ったり、岡田が評価経済と言ったりしているが、どちらも経済の概念を延長して考えている点は、田舎を出て東京で牛を飼いたいと歌う吉幾三のような滑稽な倒錯を感じざるをえない。

2012-03-29 00:41:31
メテオラシャワー @meteor_showr2

一方で、悪い経済から良い経済に変革するのではなく、経済自体から抜け出すことを説くラトゥーシュの主張はトフラーや岡田より根本的だと言える。

2012-03-29 00:42:03
メテオラシャワー @meteor_showr2

まとめると、経済発展を社会のお題目にすえるというのはひとつの主義だということ。経済というのは物質とお金と労働というトライアングルの交換のことだけれど、豊かさとは、なにも物神崇拝や拝金、やりがいのある労働だけではない。

2012-03-29 20:09:19
メテオラシャワー @meteor_showr2

関連する話題。以前私が書いたもの。脱経済成長というのは生産-消費の拡大をやめるということにほかならない。 スタバから「おうちカフェ」へ:生産-消費パラダイムの終焉とその後 - Togetter http://t.co/aW8sVyqR

2012-03-29 00:23:50
メテオラシャワー @meteor_showr2

"経済の統計にのる人間活動と、のらない人間活動がある。経済成長が低くなっているというより、お金の重要性が低くなってきていると言ったほうが正確だ。ネットを中心に、直接対価を払わなくても主体的に楽しみを得ることができる機会は増えている。" http://t.co/tn7tuCl2

2012-03-29 00:24:36