双子のそれぞれの恋の話 【clum】
小学4年生。風呂に別々に入るようになった。小学6年生。部屋が分かれた。中学1年生。好きなひとができたと嬉しそうに話すきみの姿をみて、オレも自分の恋を自覚した。気付かなきゃよかったなんて、後悔はしてない。きみと兄妹として生まれ落ちたことも。後悔は、ない。 #twnovel
2010-01-05 02:16:06初めて、男子と話していて楽しいと感じました。樹 _ 双子の兄以外の人と。感じたこと考えてたことを、共有し共感し、ときには意見を言い合える。そして、どんなに意見が食い違ってもケンカにはならない。あなたは心に繋がる耳を持ってるから。わたしの言葉が胸に届くから。 #twnovel
2010-01-05 02:17:19全部知ってる。全部聞いてる。相手がどんな人間で、どんな話をしてるのか。放課後の家庭科室をのぞきに行かなくたって、全部。玲がどんな顔で話してるのか。どんな声で笑ってるのか。全部分かる。きっと、オレに話しているのと同じように。この笑顔で。このやわらかな声で。 #twnovel
2010-01-05 08:53:53こうして話してると、わたしの印象が変わると言われました。こうして話してると、わたしの考えが分かって楽しいと言われました。そして、「俺は好きだけどな、そういうの」わたしが自分で嫌だと思ってるところを、好き。だって。そう言われると、わたしも自分を好きになれそうです。 #twnovel
2010-01-05 08:54:45相手の男が玲の外見だけでなく中身を見ていること、受け容れてくれたことを、玲が話す。そんなの、オレだっていつも見てたのに。ずっと前から知ってるのに。安い嫉妬心が、オレにある計画を思い付かせた。作戦は春になったら開始しよう。焦らなくても大丈夫。調べはついている。 #twnovel
2010-01-05 15:59:52なぜ女の子はこういうことばかり聞きつけるのが早いんでしょう。「折館くんと仲いいけど、付き合ってるの? 」なぜ他人の噂話が好きなんでしょう。「ね、知ってる? 折館くんの好きな人」なぜ恋愛が破綻するのを見たがるんでしょう。「幼馴染の佐野さんのこと、好きなんだって」 #twnovel
2010-01-05 16:02:30玲の話が減った。あいつの話がなくなった。何かを知ったことくらいすぐに分かる。玲は違うと思ってるみたいだけど。それは、恋だよ。四六時中、あいつのことが頭から離れないんだろ。オレには分かるよ。好きなやつに好きなやつがいることにショック受けてさ。…恋だから、だよ。 #twnovel
2010-01-05 16:46:44いい加減に目を覚ましなさい。これは、恋なんかじゃない。あのとき、あの人の口からこぼれただけの「好き」という単語にしがみついてるだけ。あれはわたし自身に向けて言った言葉じゃない。やっぱりあの子のことが好きなんでしょう。気付いてたよ。ずっと前から。出逢ったときから。 #twnovel
2010-01-05 16:48:13相変わらず、本人に自覚はなし。でも、玲のそれは失恋だ。だから安堵した。オレたちは同じになった。同じ片恋同士だ。玲がオレに気付くことがないように、玲の想い人も玲に気付かなければいい。そしたら、ずっとオレたちはこのままでいられる。仲のいい双子のままで。 #twnovel
2010-01-05 17:34:07こんな話題に触れたら、もう今までのようには話せないかもしれない。家族の話と恋愛の話はしてこなかった。でも、訊きたかった。訊いてはっきりさせたかった。あなたがきちんと話してくれるなら、わたしはそれを受け止めたい。自分の中に芽生えかけたこの気持ちを温めてしまう前に。 #twnove
2010-01-05 17:35:25春になり、オレはそいつと同じクラス同じ班になった。名字が50音順で近ければ、四月に前後の席になるのは必然だった。玲に聞いていたイメージとは随分違う。普通にしゃべるやつかと思ってたら、教室では殆ど口を開かない。その外見でそれじゃあ、怖がられて友達少ないだろうな。 #twnovel
2010-01-05 18:07:51春が来て、わたしはこれまでと同じように一人で家庭科室へと向かう。もう、あの人は来ない。来ないように仕向けたのはわたし。バスケ部の休憩時間に合わせて図書室に逃げる。だから本当は、来ているのかいないのかは知らない。あんな話をしたばかりだもの、来てないはずだけど。 #twnovel
2010-01-05 18:09:19「これ、根元からこの色だから地毛なんだろ?」髪を触ったのが余程不意打ちだったのか、振り払うこともせずやつは固まっていた。「やっぱり地毛かー。おれ、てっきり折館はヤンキーなんだと思ってた」近くの席の男子が寄って来た。「…祖母がドイツの出だから」やっと口を開いた。 #twnovel
2010-01-05 19:03:55今年もクラスが違ってよかった。今さらどんな顔をして会えばいいのか、分からないから。人に話したくないようなことを、わたしは無理矢理聞き出したんだ。あんなに話しにくそうにしている姿、初めて見たもの。廊下であの淡く光を弾く髪を見かけるたび、胸が痛む。罪悪感かな。 #twnovel
2010-01-05 19:05:22「4組の岡本さん、最近いいよな」誰かが言った。「髪型、変わったしな」違う。これまで三つ編みにしてたのを下ろしただけだ。これまで毎朝オレが編んでたのを拒むようになっただけだ。髪を切ることじゃなく、全てを自分ですることで失恋を振り切ろうとしてる。玲はそういう子だ。 #twnovel
2010-01-05 20:16:59人から逃げてるだけの自分は嫌い。だから逃げるのを辞める。人に甘えてるだけの自分も嫌い。だから甘えるのを辞める。まずは、樹に髪を編んでもらうことを辞めた。そして、折館くんから目を反らすのを辞めた。他の人を好きでもいい。やっぱり、わたしはあなたを好きだと思うから。 #twnovel
2010-01-05 20:17:10最近、いろんなやつが玲を見ていて落ち着かない。折館が玲を見ている気もして落ち着かない。だから「オレも岡本さんのこと好きなんだ」折館だけに、釘を刺すように言った。双子だということを、一年の始めに職員室で口止めしておいてよかった。玲を好きだと口に出せる。 #twnovel
2010-01-06 07:58:22今年は同じクラスに佐野立夏さんがいる。昨年、わたしが憧れた凛とした姿そのままに。最近好きな人ができたんだって。他の子に話している声が聞こえた。そっか。だから前よりキレイになったんだ。…相手が誰かは分からなかった。やっぱり折館くん、なのかな。胸が、痛い。 #twnovel
2010-01-06 07:59:04制服が夏服に変わる頃、折館とオレはもうすっかり親友だった。作戦通りとはいえ、正直やり過ぎたかも。まぁいい。事は概ねうまく運んでいる。親友の想い人に必要以上に近づかないようにしようと、折館が考えているのが手に取るようにわかる。こいつはわかりやす過ぎる。胸が、痛い。 #twnovel
2010-01-06 14:09:31佐野さんは、わたしにとって、光みたいに眩しい人。毎日元気一杯で、よく動いてよくしゃべってよく笑う。この年頃独特の女子の卑屈さや不条理に対しても、それはおかしいとしっかり言える強い人。あぁ、折館くんが彼女の事を好きなの、わかるなぁ。わかって、しまうなぁ。 #twnovel
2010-01-06 14:10:17玲を気にしてる男子は、オレが把握してるだけでも何人かいる。が、その中には告白に踏み込む行動力を持つやつはいない。ただ憧れて会話を交わすだけ。それで玲の本当の良さがわかるわけないと、腹立たしくもあり、同時に安心していた。そんな軽い気持ちの人間に玲は渡したくない。 #twnovel
2010-01-06 23:53:35最近、少しずつクラスの男子とも話せるようになってきました。折館くんとよく話してたから免疫ができたのかな。話すといっても、あの時とは違う簡単な会話だけなのだけど。せめて、また、このくらいでいいから話せたらいいのに。今年は委員会も違うからなかなか会えないままだけど。 #twnovel
2010-01-06 23:54:15「俺、岡本玲と同じ委員会だったけど、話しやすい子だったと思う」折館が、俺たちの前で初めて玲の名前を口にした。誰かが岡本さんには近寄り難いと言ったせいだ。全員の目が一気に折館に集中する。折館は、玲と男子の橋渡し役に任命された。なんだあの、交換日記みたいなノートは。 #twnovel
2010-01-07 13:40:27佐野さんが一冊のノートを持って、わたしに話しかけてきた。「岡本さんに渡せって、折館くんから預かったのよ。ふーん。ふたりがそーゆー関係だったなんてね~? 交換日記だなんて古風なことしてるわね」…? なんだろう。こんなの初めてもらった。折館くんはどういうつもりで? #twnovel
2010-01-07 13:41:08年頃の女子が考えることなんて想像もつかないけれど、男子が考えることもさっぱりだ。岡本さんのことを知りたいからノートにいろいろ書いてもらってきてくれ。って。これ、折館と玲が交換日記始めただけに見えるんだけど。玲もそういうつもりで書いてるみたいだし。いいのか、これ? #twnovel
2010-01-07 15:58:35