サツバツ・ナイト・バイ・ナイト #8
アガメムノンは沈思黙考の姿勢を崩さぬまま戦略チャブを見つめ、次なる一手を練った。今回の失敗は、大きな問題にはならない。大局で見れば、プラスになるだろう。ラオモト・チバが思っていた以上に使える駒であることが解ったからだ。「……サツバツナイトも……正体不明のまま死んだ……か?」 70
2012-05-28 01:21:44……そう、サツバツナイトもまた、ニチョーム・ストリートを守るために犠牲となり、地上数百メートル上空で散ったのか?……否、いかなる監視カメラも、その瞬間を捉えることはできなかっただろう。着弾直前の跳躍で爆炎を逃れ、撒き散らされたタケウチ・ウィルスからも逃れた、ひとつの影を! 71
2012-05-28 01:26:02賭けに勝利したその影は、額の汗を風圧で拭い、黒ニンジャ装束を脱ぎ捨てる。中から赤黒いニンジャ装束が現れた。そして百メートル下を飛行していたマグロツェッペリンに向け、ドウグ社の鉤付きロープを投げ放った!「Wasshoi!」放物線を描き上昇する彼の正体は……ニンジャスレイヤー! 72
2012-05-28 01:31:26そう、ニンジャスレイヤーである!彼はニチョームとの関係性を否定すべく、サツバツナイトを名乗り戦っていたのだ!「Wasshoi!」ドウグ社の鉤付きフックロープを駆使して、彼はマグロツェッペリンの上へと回転ジャンプして着地し、そのままネオサイタマの夜闇へと消えた! 73
2012-05-28 01:35:14「良かった……ニチョームは……守られたんだ……」ヤモトは遥か上空を見上げながら、そう呟いた。目が霞む。限界だ。ヤモトは緊張の糸が切れたかのように、ふらりと背後に倒れそうになった。それを支えるアサリ。戦闘が終わったと見た彼女は、一目散に外に駆け出し、手を握り合っていたのだ。 74
2012-05-28 01:38:57未だストリートに出てきている民間人は一人もいない。自警団員ですらも。ほとんどヤバレカバレで、外に駆け出してきたのだ。アサリの足もおぼつかない。言葉もなく、そのまま血の海に二人、腰を下ろした。膝の上に、ヤモトの頭。目を閉じて寝息を立てるヤモトの顔を見て、ほっとしてまた泣いた。 75
2012-05-28 01:43:49……その時!数メートル離れた路地裏の影に、アサリの背を狙う銃口あり!「ザッ……ケンナコラー」何たるしぶとさか!下半身を切断されたアサルトヤクザが上半身を起こし、震える右手でチャカ・ガンを握っていたのだ!ブッダ!寝ているのですか!?ザクロも自警団員もこの脅威に気付いていない! 76
2012-05-28 01:46:32ようやく再会を果たしたヤモトとアサリ……そのユウジョウは、最悪の形で引き裂かれてしまうのか!?……その時!遅れてきた男が路地裏へと静かに降り立ち、両手を突き出してカラテ・シャウトを放った!「イヤーッ!」「アババババババア-ッ!?」生命力を吸収され絶命するクローンヤクザ! 77
2012-05-28 01:49:53アフロヘアーのシルエットを持つその謎めいた男は、アサリがクローンヤクザの絶叫に気付くよりも速く、背を向けて再び路地裏の闇に消えた……。 78
2012-05-28 01:57:01