斉藤清二先生による「『あ!萌え』の構造」 その2

斎藤清二先生 @SaitoSeiji による連続ツイート、「『あ!萌え』の構造」のまとめです。最初のまとめが長くなってきたので、分割してみました。 その1 http://togetter.com/li/297098
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斎藤清二 @SaitoSeiji

しばらくご無沙汰していた「『あ!萌え』の構造」であるが、「萌え体験」と「依存」「中毒」などと呼ばれる現象との関連についての連続ツイートを再開してみたいと思う。とりあえず表層的(現実的ともいう)な議論から始まるがご容赦を・・。

2012-07-08 09:05:22
斎藤清二 @SaitoSeiji

① 「萌え体験」が「中毒」や「依存」といった状況に陥っている時、これをなんとかしなければならないと本人や周りが意識すれば、「萌え現象=AFP」は、「解決すべき問題」として認識されることになる。例えば「ゲーム中毒」などと呼ばれる現象が、この代表例だろう。

2012-07-08 09:06:51
斎藤清二 @SaitoSeiji

②子供が(大人や大学生でもいっこうに差し支えないが)TVゲームやオンラインゲームに熱中して自分では時間をコントロールできず、そのために現実生活が破たんしてしまうような場合、その状況は通常「解決すべき問題」としてまわりから定義され、時には当人もこれを「問題」として認識する。

2012-07-08 09:09:45
斎藤清二 @SaitoSeiji

③しかし、「萌え体験」が持つ強い苦痛抑制効果のことを考えに入れると、「ゲーム依存」という状態そのものが「問題」なのかどうかは慎重に考える必要がある。つまり、「ゲームに没頭する」と言う現象は、何らかの苦痛に対する対処行動であるかも知れないということだ。

2012-07-08 09:10:47
斎藤清二 @SaitoSeiji

④もし、その子供(あるいは大学生)が通常生きている世界が(理由はなんであるにせよ)常に苦痛に満ちた世界であり、その苦痛は簡単には取り除けないものである場合、ゲームに没頭することによって得られる「萌え体験」は、その苦痛を緩和するためのほとんど唯一の「有効な対処行動」かも知れない。

2012-07-08 09:12:03
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑤つまり、「ゲーム依存」といった目に見える現象に対して、それを「問題」と定義することもできれば、「問題に対する対処行動」として定義することもできる。後者の場合、問題は「世界が苦痛に満ちていること」であり、「萌え現象」は問題解決のための手段であり、一種の自己治療であると言える。

2012-07-08 09:13:27
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑥ 「ゲーム依存」などの「萌え現象」を、「解決すべき問題」と考えるか、「対処行動」と考えるかは、どちらもありとしか言えない場合が多いが、どちらの捉え方が、「中毒」や「依存」に対する有効な働きかけになりうるかというと、まちがいなく「対処行動」として理解する方が役にたつ。

2012-07-08 09:16:08
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑦その最大の理由は、「萌え現象」そのものを「解決すべき問題」と定義すると、「萌え現象は意識的にコントロールできない」という萌え現象の本質的な性質とぶつかってしまうからである。これは特に自分で自分の行動を評価する時に典型的に起こる。

2012-07-08 09:18:56
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑧結局は「解決すべきなのに解決できない(ゲームをやめることができない)自分はダメな人間だ」という自己嫌悪につながり、世界は益々苦しいものとなり、その苦しさを緩和するために再びゲームの世界へと戻っていくという悪循環が生ずることになる。

2012-07-08 09:20:37
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑨結論として、「ゲーム依存」などの萌え中毒現象を「苦しみの緩和のための対処行動」と認識し、対処行動をとらざるをえなくさせている「世界が苦しみに満ちていること」に対してアプローチする方略を設定することが、より有効な「萌え中毒」へのアプローチとなるだろう。ここで休憩します。

2012-07-08 09:24:48
斎藤清二 @SaitoSeiji

「ゲーム依存」に代表される萌え中毒現象は、それ自体が「解決すべき問題」ではなく、むしろ「苦しみに満ちた世界」を生き延びるための「対処行動」だとしてアプローチすることが「有効」であるという趣旨をツイートしてきたが、その続きを今しばらく連続ツイートとしてみたい。

2012-07-12 16:50:06
斎藤清二 @SaitoSeiji

①あまり大きな声では言いにくいのだが、「耐え難い苦しみに満ちた世界」への最強の対処行動は「自分自身の意識を消してしまう」ことであり、これを文字通りにとると、「自分の存在を消す=自殺する」ことが唯一の対処行動であると勘違いしてしまう。

2012-07-12 16:52:47
斎藤清二 @SaitoSeiji

②「耐え難い苦しみ」を感じているのは間違いなく「私の意識」であるから、「甚だしい苦痛」に対する対処法で最も強力なものは「私の意識を消す」ことである。例えば「寝逃げ」と呼ばれる行動が可能な時は、それは決して逃げているのではなく、有効な対処法が選択できているということになる。

2012-07-12 16:54:56
斎藤清二 @SaitoSeiji

③意識を完全に消すことから、意識を何らかの形で変性させるというマイルドな方法まで、「耐え難い苦痛」を緩和する方法はたくさんあり、たくさんあるということを知っているということ自体が、極めて重要な対処能力になるのである。

2012-07-12 16:56:25
斎藤清二 @SaitoSeiji

④「対処行動」を考える上で重要なのは、1)選択しうる対処行動の種類や数を増やす。2)その対処行動自体が持つ非可逆的な害ができるだけ少ない対処行動を選択する。といったことだろう。異論があるかも知れないが「自殺という対処行動」は、あまりにも非可逆性が甚しすぎるのでお勧めできない。

2012-07-12 16:59:48
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑤このように「対処の方法は多ければ多いほど良い」ということを、文字通りに訓練する方法の一つに「弁証法的行動療法」と呼ばれる技法がある。そのマニュアルの一つに、「大人向けの楽しいイベントリスト」というものがあり、ここにはなんと173通りもの方法がリストアップされている。

2012-07-12 17:02:20
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑥当然のことであるが、自分独自の方法をこのリストに加えて、もっと数を増やすことはとても役にたつだろう。 多くの場合、あなたにとって有効な対処行動は、私にとって有効な対処行動であるとは限らないからである。

2012-07-12 17:08:12
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑦アトランダムにこのリストを引用してみる。23.仲の良い友達と夜を過ごす。26.美しい景色を思い出す。27.お金を貯める。28. ギャンブルをする。30.食事をする。31.カラテ、柔道、ヨガをする。32.定年退職後のことを考える。36.セクシーな服を着る。39.株を売買する・・

2012-07-12 17:10:30
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑧40.泳ぎに行く。41.だらだら過ごす。55.家の中で歌い回る。58.体重を減らす。100.白昼夢を見る。102.セックスについて考える。114.脂っこい太りそうなものを食べる。141.政治について議論する。・・・本当にアトランダムである。

2012-07-12 17:11:43
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑨大切なことは、「自分を楽しくさせるための方法はたくさん持っていたほうがよい」「他人に言われたことではなく、自分が楽しめることを探すことが大切」「道徳に反しているとか、理屈に合わない、といった理由で選択肢を狭めないこと」などである。

2012-07-12 17:13:00
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑩対処行動(コーピング)には非常にたくさんの方法があり得るし、たくさんの選択肢があればあるほどよい。大きく分類するならば、コーピングには1)問題解決型のコーピングと、2)情動調整型のコーピングがあり、さらに3番目の有力な要素として3)社会的資源の利用というのがある。

2012-07-12 17:16:02
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑪問題解決型コーピングとは、直球勝負で困っていることを解決すること、情動調整型は「気分を変えること」、社会的資源の利用とは「他者とつながること」である。これらの方策は全て有力で、どれが良いかということはない。

2012-07-12 17:18:59
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑫問題解決型コーピングは確かに正攻法であり、それがうまくいけばそれに越したことはない。社会に問題があれば社会の問題を解決する。個人に問題があればその個人の問題を解決する。しかし多くの場合、それができるならばとっくにしているのである。

2012-07-12 17:21:02
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑬そもそもひどく困っている状況ということは、問題解決がすぐにはうまく行かないということことなのである。そこで、問題解決にこだわりすぎると、解決しないうちに当人やその集団がつぶれてしまう

2012-07-12 17:22:19
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑭情動調整型のコーピングは、問題がすぐには解決できない状態の中でもつぶれてしまうことを防ぐ、強力なコーピングである。しかし、このタイプのコーピングは、「逃避」とか「ごまかし」といった否定的な価値判断をされてしまうことが多い。しかし、おそらくその判断は間違いである。

2012-07-12 17:23:48