「キョート・ヘル・オン・アース」序「エンタングルメント」#3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーは頭を振って起き上がった。衝撃で裂けた背中の装束が血で覆われ、再生してゆく。カラテゴーレム達はニンジャスレイヤーを二対一で殺すべく、挟み撃ちの位置関係をとりにゆく。ガンドーはケイビインを見上げる。武器が飛び戻り、まさにアスラめいて頭上に並ぶ! 22

2012-07-16 20:56:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「当然、こちらの優勢です」ストーカーが残像が出るほどの高速タイピングを繰り出しながら呟く。ヴィジランスは戦略机に肘をつき、眉間にシワを寄せた。「完璧な成果を求めろ。油断はならぬ」そして奴隷ハッカーを見た「用意しておいたタラマキ社の偽インサイダー情報は予定通り流せ。粛々とやれ」24

2012-07-16 21:06:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「女狐……どこだ……女狐」ストーカーはマントラめいて呟く。ヴィジランスは株価折れ線グラフを高速参照しながら、侵入者に対処するストーカーのどことなく危ういアトモスフィアを並行監視する。タイピング速度は図抜けて速いが、それを必殺の武器たらしめるのはヴィジランスの状況判断力なのだ。25

2012-07-16 21:15:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フラミンゴが一斉に飛び立つ!毒々しいまだら模様の空が鳥達の影に覆われて真っ黒い闇が訪れた。「ping!ping!ping!」巨大なエイが空を埋め尽くすフラミンゴの黒雲をバクバクと咀嚼してゆく。ナンシーは巨大なエイを上から見下ろす……フラミンゴの一羽に紛れて、上空に逃れたのだ。27

2012-07-16 21:19:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーはフラミンゴ状の己の身体を捻じ曲げ、黄金立方体の下で、桃色の翼をもった天使めいたフォルムを形成した。彼女は身をそらし、手足を拡げた。頭上に生じたヘイローが虫メガネめいて黄金立方体の光を吸い込み、彼女の身体はにわかに輝き出した。 28

2012-07-16 21:32:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そこか」巨大エイの背中にギョロリと巨大な一つ目が開いた。ナンシーは戦乙女めいた笑みを返した。「貴方の邪魔が間に合うなら、補足させないわよ」「メ!ギ!ツ!ネ」エイのヒレの下から煙の軌跡を残した無数のミサイルが放たれ、うねりながら上昇してくる。ナンシーは長文コマンドを実行した。29

2012-07-16 21:35:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ZAAAP!ナンシーから放たれた巨大な光球は眼下のエイめがけ恐るべき速さで飛んだ!光球の軌跡は螺旋状の光る風を生じ、ミサイル群は渦潮に飲まれる小魚めいて吸い込まれていった。光球はエイの眼球を貫き、爆発した。「AAAARRRR01GG00GHH010%翹1101!!」 30

2012-07-16 21:49:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

010001011アバーッ!」ストーカーは突然仰け反り、吐血した。「イヤーッ!」ヴィジランスは回転ジャンプし、その傍に着地!彼はジャンプ中に状況判断を終えていた。ストーカーが重篤な精神衝撃が為に押し損ねたエンターキーを彼がヒット!「イヤーッ!」010010010101 (31

2012-07-16 21:59:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

01010001ナンシーは溶け崩れてゆく巨大エイを見下ろし、隣接するキョート城チャネルへ再びjoinした。たちまち紫の海とフラミンゴの光景は影と化し、あの不気味にミニマルで無機質なネットワーク・イメージの世界が戻ってきた。 32

2012-07-16 22:09:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ナンシーは舌打ちした。エイの死体からウジ虫めいて続々とハエめいた飛行隊が羽化し、彼女を追うようにしてキョート城チャネルに飛び込んで来たのだ。ナンシーは飛行体に姿を変え、追いすがるそれらを振り切るべく、飛翔した。 33

2012-07-16 22:13:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

多重ログインしてくるハエ群めがけ、ナンシーは後方拡散機雷めいたkickコマンドを実行した。パルス爆発めいた無数の0と1に背後を照らされながら、ナンシーは中庭エリアへ注意を振り向けた。監視カメラから盗んだリアルタイム映像は、いま冒すべき危険、取るべき行動を彼女に自覚させた。 34

2012-07-16 22:23:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

kickコマンドを生き抜いた敵飛行体群はその一つ一つがハエから急速成長、ピクシーめいた剣呑な人型飛行生命体に姿を変えてゆく。ナンシーは逆に、これから行う攻撃の妨げとなる背中の翼を切り離し、その場に浮遊した。彼女は全身を緊張させ、中庭と電算室をつなぐネットワークへ右手を翳した。35

2012-07-16 22:31:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「SHHHH!」ピクシーの群れがナンシーを包囲し、逆棘のついた投げ槍を一斉に構えた。アブナイ!だがナンシーは危険を冒した。投げ槍が放たれた。彼女は目を見開き、翳した手を握り込んだ。36

2012-07-16 22:41:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KABOOOOM!「アバーッ!」数人の奴隷エンジニアがUNIX爆発に巻き込まれ、黒焦げになって吹き飛んだ。「アバババ、アバババ、アバババ」しかし爆発箇所に隣接する奴隷達は過剰な薬物投与によって高速タイピングを維持している。「チィーッ!」ヴィジランスは爆発を振り返った。 38

2012-07-16 22:46:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クソが!」ZBRとザゼンの危険なカクテルを動脈注射されて意識を取り戻したストーカーは血反吐を床へ吐き捨て、高濃度精製バリキドリンクを一気に飲んだ。「まだやれる!」「当然だ。遅れを取り戻せ!」ヴィジランスは叫んだ。そしてニュース配信画面へ視線を戻した。「平常通り進めろ!」 39

2012-07-16 22:52:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバババ中庭に!UNIX爆発IRCフィードバックが……」奴隷エンジニアの一人がモニタ表示を見て涎を垂らした。「中庭?」ヴィジランスは身構えた。「中庭だと!?」 40

2012-07-16 23:05:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カタナ、ジュッテ、サイ、斧、メイスが渦巻いてガンドーめがけ飛来しかかった、まさにその瞬間である!「ヌウッ!?」ケイビインの集中がコンマ数秒、断絶した。放たれた武器はそのままガンドーめがけ降り注いだが、生じた違和感を見逃すガンドーでは無かった。 42

2012-07-16 23:20:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーの全身をニンジャアドレナリンが駆け巡った。泥のように鈍化した時間感覚の中、彼はマイめいて身を捻った。飛来する武器はアスラ・カラテのコントロールをどういうわけか失ったようだった。ニンジャ反射神経とニンジャ動体視力は五つの武器の飛行軌道を予測した。彼はその軌道線を避けた。43

2012-07-16 23:26:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カタナがガンドーの頬をかすめ、胸先をかすめて、白砂に突き刺さった。ジュッテがガンドーの首筋をかすめ、白砂に突き刺さった。サイがガンドーの腕先をかすめ、白砂に突き刺さった。斧がガンドーの左腿をかすめ、白砂に突き刺さった。メイスがガンドーの右脚をかすめ、白砂に突き刺さった。 44

2012-07-16 23:36:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーは両手の49マグナムの引き金を引く。銃口から黒い弾丸が放たれる。彼の視界には二つの光の輪が焼きついていた。ひとつはケイビインの額。ひとつはカラテゴーレム一体の喉の炉だ。弾丸はある地点までは並行して飛んだ。突如、弾丸それぞれに黒い羽根が生え、羽ばたき、飛行角度を変えた。45

2012-07-16 23:40:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

羽ばたいた羽根は一瞬で散り落ちた。ケイビインめがけた弾丸はコントロールを取り戻した丸盾によって阻まれた。もう一方の弾丸。ニンジャスレイヤーは左右から襲い来たカラテ・ラリアットを垂直跳躍で躱した。そのすぐ側を弾丸が通過し、さらに羽ばたいて再び角度を変えた。 46

2012-07-16 23:44:55