海法紀光氏.@nk12による、シリアスな/文学的なバットマンの系譜

『ダークナイト ライジング』映画公開を受けて--。 公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/batman3/
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森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

ところで、『ダークナイト ライジング』パンフレットの寄稿者複数名によるアメコミ・ヒーロー史観がたいそうアレなので、.@nk12せんせいに御出座・御講釈いただき、Togetterにて後世に遺すべきと存ずるが如何に。

2012-07-31 01:18:39
海法 紀光 @nk12

@Molice むちゃぶられた!死ね!

2012-07-31 01:20:30
海法 紀光 @nk12

さてさて、「ダークナイト・ライジング」のパンフを見て、つらつら思ったのですが、アメコミというのは歴史が長いだけあって「○○は××である」と断言しようものなら「いや△△という例外が」と、即、いえてしまいます。このへんは日本の漫画でもアニメでも同じで、そんだけ豊かということですね。

2012-07-31 01:22:53
海法 紀光 @nk12

なんでまぁパンフにあった、フランク・ミラーの「ダークナイト・リターンズ」「イヤーワン」がアメコミの歴史を変えたという言説は、もちろん、それなりに正しい上で、色々なものが気になるという、要するにオタクの重箱気質です。

2012-07-31 01:25:38
海法 紀光 @nk12

そんなわけで、シリアスな/文学的なバットマン/アメコミそのほかの系譜について、少し書きます。詳しい諸氏のツッコミ歓迎。  ※しばらく連投します。目障りでしたらすいません。

2012-07-31 01:26:45
海法 紀光 @nk12

さてさて、元々のバットマンは、1939年、戦前の連載開始です。日本だと、のらくろが連載してた頃ですね。実は、この登場初期のバットマンは、今のシリアスでクライム・ノワールな感じをすでに漂わせています。ジョーカーも登場時から、ジョーカーヴェノムで暗殺を行う知能犯として登場しています。

2012-07-31 01:30:38
海法 紀光 @nk12

なぜかというと、この頃のバットマンは、子供向けコミックというよりは、主に、大人向けのパルプマガジンからとってきているからです。そもそも、この頃のコミックの一番大きな需要は子供ではなく、「戦争中の兵隊さんの暇つぶし」でした。なので、必然的に大人向けなわけです。

2012-07-31 01:33:24
海法 紀光 @nk12

(当時の、そしておおむね今の)兵隊さんにとって、戦争の99%は、じっと待ってるか歩いてるかなので、暇つぶしの娯楽は、死活問題なのです.アメリカの場合、コミックスを大量に刷って、大量に渡していたと聞いています。

2012-07-31 01:34:30
江波倉子(CV雨宮伊都) @serpentinaga

“、「戦争中の兵隊さんの暇つぶし」でした。なので、必然的に大人向け”というのがよくわからないなあ。

2012-07-31 01:47:54
海法 紀光 @nk12

@serpentinaga 購買メイン層が大人(少なくとも徴兵年齢以上)なので、その層が目指されたということです。少年ジャンプとヤングジャンプで内容が違ってくるのと同じです。もちろん俺は今でも少年ジャンプを読んでるし、ガキの頃にヤンジャンも読んでましたが。

2012-07-31 01:51:08
海法 紀光 @nk12

もちろん、コミックは子供も読むわけですし戦争も終わるので、バットマンの内容も、どんどん子供を意識していきます。ロビンの登場がそれです。このあたりは、江戸川乱歩の大人向け、エロで猟奇で18禁な探偵小説が、子供向けの「少年探偵団」になったのと、ほぼ同じです(時代もかぶってる)。

2012-07-31 01:36:10
海法 紀光 @nk12

戦争が終わると、アメリカは赤狩りの時代に入り、コミックも「こんな大人向け犯罪漫画はいかーん」ということになり、バットマンの内容も子供化します。 ※ただし子供化が進むのは戦争が終わってからというわけではなく、ロビンは連載の翌年1940年には、すでに登場しています。

2012-07-31 01:38:15
海法 紀光 @nk12

このあたりはコミックだけでなく、当時のバットマンの映画やドラマ化とも関連した流れなんで、ここに書いたのは、「ほんとは、こんな単純じゃないけど、すげーおおざっぱにそんな感じ、といえなくもない」くらいです。

2012-07-31 01:39:07
海法 紀光 @nk12

ともあれ、1966年のバットマンのTVシリーズ(実写に、擬音で、POW!とか入るアレです)が人気を博し、バットマンもそれに乗って、子供向け路線になってゆきます。ただし、それが行き過ぎると売れなくなって、またシリアス路線を志すようになります。

2012-07-31 01:41:25
海法 紀光 @nk12

そんなわけで、バットマンが、「シリアスだったりストイックだったりサイコだったりする犯罪物」と「カラフルで、おもちゃっぽいガジェット満載で子供大喜びな作品」の間で揺れるのは、連載当初から始まっており、60年代にも70年代にもあった運動なのです。

2012-07-31 01:43:32
海法 紀光 @nk12

そして、1986年に、フランク・ミラーが、「バットマン・ダークナイト・リターンズ」を発表し、暗い未来で生きる暴力的で孤高のヒーローとしてのバットマンとその死を描き、「バットマン:イヤーワン」でバットマンの誕生を描き、新たなバットマン像を確立します。

2012-07-31 01:46:11
海法 紀光 @nk12

こいつが大変に面白く、自分を含む大勢の人が痺れたわけですが、バットマンの歴史の中で、シリアスなバットマンの人間像を掘り下げようとした最初の試みでないことは書き添えておきます。極端にいえば、「イヤーワン」は、ボブ・ケインらの初期バットマンへの回帰でもあるのです。

2012-07-31 01:47:40
海法 紀光 @nk12

なおバットマンやジョーカーの初登場号や、その近辺(英語版)はiPadで買えます。comixologyというアプリが便利です(170円くらい)。便利で、(財布には)恐ろしい時代であることです。

2012-07-31 01:54:55
海法 紀光 @nk12

このフランク・ミラーの「ダークナイト・リターンズ」および、ほぼ同時期に出た、アラン・ムーアの「ウォッチメン」の、ダークなヒーロー解釈は、当時のアメコミに大きな流れを作り、ダークなヒーローものの流れ(grim and gritty)を作り出してゆきます。

2012-07-31 01:58:12
海法 紀光 @nk12

なんだけど、バットマンと同じく、それ以前のコミックは、みんな明るくて元気だったか? というと、もちろん、そんなことはありません。長いアメコミの歴史の中で、明るいヒーローと暗いヒーローは常に往復運動をしています。また、流行と違う作品も常に出ています。

2012-07-31 01:59:37
海法 紀光 @nk12

たとえばアラン・ムーアは、「ウォッチメン」の前に「ミラクルマン」という作品を書いており、これは「子供の夢から生まれた無垢なる変身ヒーロー」であるキャプテン・マーベルを再解釈したら「全ては偽造記憶で軍の人体実験で悪堕ちしたヒーローが大虐殺で(略)」という、どこの鋼屋ジンか的な

2012-07-31 02:03:36
海法 紀光 @nk12

大傑作。版権が面倒なんで(なもんで、キャプテン・マーベルがミラクルマンになってる)、なかなか再録、翻訳がでなかったんですが、そろそろケリがついたらしいんで、再録、翻訳されるといいなぁ。

2012-07-31 02:04:33
海法 紀光 @nk12

もっと遡りますね。アメコミヒーローの代表が、バットマン、スーパーマンといった「責任感のある大人」がメインだった時代に、マーベルコミックスがぶつけたのが、「大人になりきる前の、青春に悩む学生の等身大ヒーロー、スパイダーマン」です。※これももちろん、おおざっぱな話ですけどね。

2012-07-31 02:08:03
海法 紀光 @nk12

そして、スーパーヒーローが、みんな正義で無垢だった時代に、幕を下ろしたのが、そのスパイダーマンにおける、グウェン・ステーシーの死という事件(1973年)だったとされています。もちろん、これもおおざっぱな話ですが、人気タイトルで、「本当に取り返しのつかない死」を描いたことは、

2012-07-31 02:10:26
海法 紀光 @nk12

当時のコミックファンに、大きな影響を与えたということは確かと言っていいでしょう。 ※でもあとになって、グウェン・ステーシー蘇ったり、また死んだりしたよね? というツッコミもありますが、忘れましょう。

2012-07-31 02:12:33