「キョート・ヘル・オン・アース」破「ライジング・タイド」#3
「グワーッ!」……「グワーッ!」……「グワーッ!」……「脚は?折るか?」「そうさなァ……おい、ジャビー!」「おっと!イヤーッ!」「グワーッ!」「なかなかやるな、こいつ。油断も隙もないぜ」「ヘッ」「手はどうすんだ、オーブ?」「哀れんでくれよ」「ははは」 1
2012-08-01 15:34:52第2部「キョート殺伐都市」より:「キョート:ヘル・オン・アース」 破「ライジング・タイド」 #3
2012-08-01 15:35:17コロセウムめいた円形巨大ホールの中央、円柱状に迫り上がった円形カワラ屋根付きの円形台座を覆う円形ハイ・テック・ショウジ戸が展開し、中のものが明らかになると、広間を埋め尽くすニンジャ達は一様にどよめき、嵐の前の雷鳴めいて、パイプオルガンと歌奴隷オイランによるBGMをかき消した。 4
2012-08-01 15:58:57円形台座の左右の縁には、鋭利な尾を真上に逆立てる金のシャチホコ・ガーゴイルがあった。尾の先端からは金の鎖が伸び、それぞれが左右の枷に接続されている……腰の薄絹一枚の他には何も身に纏わぬドラゴン・ユカノの腕枷に。彼女は鎖で両腕を引っ張られた格好で、歯を食い縛り、もがいていた。 5
2012-08-01 16:12:28ユカノの白い裸体を背後に、玉座に腰掛けるはロード・オブ・ザイバツ。白く大きい衿飾りのついた白いハカマキモノを身につけている。その顔にヴェールは無い。かわりに、古代神器のメンポがその顔を覆い隠している。メンポの頬には「罪」「罰」のカンジがレリーフされていた。その傍にはパラゴン。 6
2012-08-01 16:16:10パラゴンは腰の後ろで手を組み、無表情な目で、広間を埋め尽くしたザイバツ・ニンジャ達を見渡す。台座の真下には囲むようにタタミが重ねられている。グランドマスター席だが、そこで正座するのはパーガトリーとスローハンドだけだ。ヴィジランスは電算室。ニーズヘグは集中治療を受けている。 7
2012-08-01 16:24:48パラゴンは片手を上げた。ニンジャ達は静まり、音楽も停止した。彼らは固唾を飲んで、この小柄な大参謀の挙動を見守った。「……式典に先んじて、まず、悼まねばならぬことを残念に思う」 8
2012-08-01 16:47:02広間後方の壁、吊るされた巨大な掛け軸が次々と開かれていく。「イグゾーション=サン」「ダークドメイン=サン」「サラマンダー=サン」……既に死んだグランドマスター・ニンジャの名をあらわすルーンカタカナ。「彼らはこの美しく荘厳な瞬間を知らぬまま、逝った。加えて……ケイビイン=サンだ」9
2012-08-01 16:57:25事情をいまだ知らぬ者達が訝しげな囁きをかわす。パラゴンは目を閉じ、頷いた。「まこと忠義のニンジャであった。残念でならぬ。死亡の報せがもたらされたのは、つい先頃だ。だが、彼は名誉に包まれてアノヨへ向かったであろう。なぜなら全ての憂いは絶たれたのだから」 10
2012-08-01 17:05:48ふたたび、囁き声の連鎖。パラゴンは片手をあげた。巨大掛け軸と同様に、巨大スクリーンが引き下ろされ、城内あまねく流されていた例の映像が映写された。「見よ。邪悪なる反ギルド存在、ニンジャスレイヤー=サンのドゲザである。この者は卑劣な手管でグランドマスター暗殺を繰り返してきた」 11
2012-08-01 17:11:20「だが見よ。卑劣な悪はついに寛容なるロードの御怒りに触れた。さすればかように醜いザマを晒し、恥辱に塗れ地に伏すが必定」パラゴンは睨み渡した。ドゲザ映像がループする。ニンジャ達の中から、ニンジャスレイヤーのブザマをせせら笑う声が聴こえてきた。パラゴンは頷いた。 12
2012-08-01 17:22:57「実際この哀れな男の手により、尊いザイバツ・ニンジャの命はあまりに多く失われた。諸君らとかつて同じ茶室のチャを飲んだ者らの中にも犠牲者はいよう!だが!ギルドの権勢にいささかも曇り無し!なぜなら我らは一人一人の細胞一つに至るまで、ロードに奉仕するザイバツという単一存在である!」13
2012-08-01 17:29:31「ロードの美しく勿体無き御涙粒をもって、今ここに尊き犠牲は栄光のニンジャ・ヴァルハラ戦士に昇華されたのだ。悲しむなかれ!彼らはギルドであり、我らはギルドである!その情報遺伝子は絶えず永遠であり、そしてここに……聖なる三神器と……絶対審判機構構築者たるドラゴン・ニンジャを見る」14
2012-08-01 17:39:06ロードの玉座の隣の床が開き、下からゆっくりと迫り上がってくるものがあった。琥珀ニンジャ像である。ユカノは慄いた。なお激しくもがいた。その裸の胸は豊満である。パラゴンはユカノの顎を掴んだ。そしてロードの方へ顔を向けさせた。ロードは震えながら玉座から立ち上がった。 15
2012-08-01 17:46:02「ムーフォーフォーフォー……今宵は実際めでたい……」巨大掛け軸が巻き取られて行き、再び、パイプオルガンと、音域を人工的に制限された歌奴隷オイラン達による邪悪なるニンジャ讃美歌が再開された。ニンジャ達が固唾を飲んで見守る中、ロードはヨロヨロと琥珀ニンジャ像へ歩き進む。16
2012-08-01 17:52:34歩きながら、ロードは暴れるユカノを諭すように片手を掲げた。ユカノは抵抗をやめ、ロードへ頷いて見せた。パラゴンはユカノから手を離した。玉座の後ろにしゃがんでいたジェスターが身体をくねらせて現れ、戯画めかした仕草で、ロードが倒れぬよう補助した。 17
2012-08-01 17:58:57まずロードは己の腕に装着していた聖なるブレーサーを外し、琥珀ニンジャ像の腕に装着した。次に、腰に吊り下げていた聖なるヌンチャクを取り出し、琥珀ニンジャ像の手に構えさせた。最後に、ロードはニンジャ達に背を向け、琥珀ニンジャ像と対面すると、聖なるメンポを取り外した。 18
2012-08-01 18:16:30……(((あれが聖なるメンポ?神器?)))列席するニンジャの一角、シャドウウィーヴは息を呑んだ。(((発見されていたのか?一体いつ……そのような情報は……)))彼は反射的に周囲を見渡した。当然、答えなど得られよう筈もない。ニンジャ達は熱狂めいたアトモスフィアを共有している。 19
2012-08-01 18:30:19ロードは己の聖なるメンポを琥珀ニンジャ像の顔に嵌め込んだ。パラゴンは懐から、新たにロードの顔を隠すものを取り出した。それは白金のキツネオメーンであった。恭しく差し出すと、ロードは受け取り、装着して、ニンジャ達の方へ向き直った。拍手が沸き起こった。 20
2012-08-01 18:31:19「まだ、お体に障りますから」パラゴンは言った。「……ヤンナルネ」ロードは呟き、玉座へ座り直した。パラゴンはユカノを見た。「さあ。パワーハイクを詠むのだ、ドラゴン・ニンジャ=サン。汝、神器システムの構築者よ。当然、汝のニューロンに今、滑らかな文言が湧き出でて参った筈」 21
2012-08-01 18:41:55ユカノはパラゴンを睨んだ。「貴方が私に命ずる事などできようか?」「……」「私、ドラゴン・ニンジャの意志において、ロードの為に力をお貸し申し上げるゆえ。わきまえよ下郎」「……左様でございますか、ニンジャ六騎士殿」パラゴンは陰気に睨み返した。 22
2012-08-01 18:45:27両手を鎖に繋がれたまま、ユカノは琥珀ニンジャ像を見やった。……彼女は唱えた。「旧く空/洗う白波/夢の穂な」……ズン!広間の空気が震えた。琥珀ニンジャ像は回転しながら台座の中へ再び吸い込まれて行った。パラゴンがニンジャ達へ両手を翳し、鳴り響くような荒々しい大声で演説を開始した。23
2012-08-01 19:15:17「諸君は何であるか?ニンジャである。ニンジャとは何か?力持たずへつらうばかりの犬でなく。博物館に陳列される時代遅れの骨董でもない。我々こそは選ばれた新人類である。ロードの勿体無き寵愛を受け、太古の愚かな半神の魂を知恵と意志でねじ伏せ、現世において金剛の力を引き出す神人である」24
2012-08-01 19:27:03