「森の防潮堤」構想と宮脇昭氏への土木工学的観点からの批判(2012年3月-6月)

▽東日本大震災の津波被害を受けて提唱されている「いのちを守る森の防潮堤」(「森の長城プロジェクト」)構想と、主唱者である宮脇昭氏の「潜在自然植生」概念に関する @MaystormJournal (寺山光廣)さんのtweetをまとめます。「森の防潮堤」の土木工学的な脆弱性の問題を中心に、「人命に関わる計画」として事前に検討されるべきさまざまな論点が提起されています。 (※なお、ダム災害の事例を参照している部分に関しては、まとめコメント欄での @f_zebra さんによる解説も参照ください。) ▼森(緑)の防潮堤について/強度の検証と郷土の設計図が見えない〔2012年06月25日〕|Maystorm Journal 寺山光廣 http://maystormj.exblog.jp/16132898/ ▼「いのちを守る森の防潮堤」「森の長城プロジェクト」と宮脇昭氏の「潜在自然植生」概念に関するまとめ - Togetter http://togetter.com/li/426192
45
リンク morinobouchoutei.com いのちを守る森の防潮堤 いのちを守る森の防潮堤推進東北協議会のウェブページです。
リンク GREAT FOREST WALL PROJECT | GREAT FOREST WALL PROJECT 森の長城プロジェクト~ガレキを活かす~ 瓦礫を活かす森の長城プロジェクト- 私たちは、青森県から福島県におよぶ太平洋岸に、ガレキを活用して盛土を築き、その上にタブノキやカシ類・草花からなる森を育て、巨大津波から命を守る森の防潮堤を築いていくことをめざします。

2012年3月25日

MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

緑の防潮堤という提案がある。森に憧れる都会の人には受けが良いだろう。比重の軽い木材や可燃物瓦礫を含み空隙の多い土の山の強度は?地下水脈のない人工の山に植えた木の根は深く延びるのか?塩分の影響は?充分な強度がなければ、津波は緑の防潮堤を崩して土石流の状態になり被害を増やさないか?

2012-03-25 05:34:17
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

ロックフィルダムという工法。岩を積み上げたダムで、コンクリートの巨大防潮堤のような従来のダムとは異なる。岩の間に水が浸透すると浮力が生じるため遮水が重要。津波の第一波が緑の防潮堤を乗り越えた時に生じる浮力。第二波、第三波で土と瓦礫と木の山が浮き崩れれば、海水は土石流と化す可能性。

2012-03-25 05:35:17

 →▼ダムの形式|資源エネルギー庁 http://www.enecho.meti.go.jp/hydraulic/device/form/top.html
 →▼ロックフィルダム|Wikipedia http://tinyurl.com/ce42apw
  

2012年5月

MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

緑の防潮堤計画。土木工学上強度の裏付けがあるのか?木質瓦礫を含む堰堤を津波が越えれば水が浸透。浮力が生じる。第2波3波に耐えるか?余震で液状化しないか。福島では震災でアースダムが決壊、7名犠牲。アースダムやロックフィルダムでは水の浸透を防ぐ事が重要。決壊すれば土石流状態で被害増。

2012-05-01 10:29:18

※言及されているのは2011年3月11日の東日本大震災で決壊した「藤沼ダム」(福島県須賀川市)。土で造成された灌漑用のアースフィルダム。この決壊は戦後日本最悪のダム災害と目されている。
 →▼【置き去りにされた被災地を歩く】第4回・福島県須賀川市 全国でただ一つ震災で決壊した「藤沼ダム」 地元農家支える「水の恵み」復旧なるか〔2012/3/17〕|J-CASTニュース http://www.j-cast.com/2012/03/17125799.html?p=all
※福島大学流域環境システム研究室が東日本大震災による被害状況について調査資料を提供している。
 →▼溜池・アースダム調査|福島大学 流域環境システム研究室 https://sites.google.com/site/kawawater/tameike
※また次のブログ記事も参照。
 →▼藤沼ダム決壊事故まとめ〔2011-03-23〕|「まずまずのダム日和」 http://d.hatena.ne.jp/dambiyori/20110323/1300889800

MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

土木工学上の強度の裏付けは?木質瓦礫を含む堰堤を津波が越えれば水が浸透。浮力が生じる。第2波3波に耐えるか?余震で液状化しないか?震災時福島でアースダム決壊、7名犠牲。アースダムやロックフィルダムで水の浸透は危険。決壊すれば土石流に@HELPTakata ・・高田もやってみない?

2012-05-01 10:46:44
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

陸前高田の松原は津波で流された。宮脇昭氏は、松を植えたのが失敗だと言う。岩手・宮城の海辺でたくさんの松を見た。磯に続く岩場に根を下ろした松は津波に耐えた。高田の松原は砂浜。広葉樹なら残ったのか?塩分の地下水へ深く直根を伸ばしただろうか?白砂青松が自然に適応した歴史も破れた歴史も。

2012-05-01 15:24:58
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

田老の破壊された防潮堤。鉄筋は見えなかったが入っていたのか?重力を頼りに積み上げられただけなら、水が堰堤を越えて浮力が生じた可能性。時速100kmでぶつかる水の壁に、宮脇昭氏、青山貞一氏と池田こみち氏の提唱する防潮堤が耐えられるのか?実際に波をぶつけるモデル実験強度計算が必要。

2012-05-02 20:49:12
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

緑の防潮堤。堰堤は水を浸透させない事が基本。フィルダムなど粘土を突き固めで不透水性の中心部を作る。木質瓦礫を混ぜてグサグサの堰堤に地震動で亀裂が入れば、津波の水は容易に浸透。青山貞一氏のモデルではコンクリートで囲われた瓦礫の上に緑の堰堤。下段のコンクリ構造も上段の土盛りも強度は?

2012-05-02 21:27:12
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

防潮堤の強度は次の災害で住民の命に直結する。綿密な強度試験必要。瓦礫処理と一石二鳥という発想自体が安易すぎる。コンクリート瓦礫を石材として使うのは解るが、まず考えるべきは町の基本設計。環境大臣がパフォーマンスで出る問題ではない。大槌町のモデルに津波をぶつけてテストする事は不可能。

2012-05-02 21:38:55
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

宮脇昭氏の考えは潜在自然植生・極相林ホンモノの森とする。究極の状態が強く正しいと。草原や陽樹林など遷移の途中はニセモノ。微地形・微気象に適応する多様性は視野の外。自然観に違いはこの際おくとしても、タブ等の被覆で土と木質瓦礫の堰堤は津波越流水による洗掘に耐えるのか?人命に関わる

2012-05-03 06:41:21

※「潜在自然植生」概念の理論的性格については、次のまとめも参照。
 →▼宮脇昭理論(「潜在自然植生」)による森づくりをめぐって。(2012年11月6日) - Togetter http://togetter.com/li/403075

MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

宮脇氏が植えて津波に耐えたモデルと紹介する多賀城市のイオンを訪れた。幅1~2m、長さ数10mの低い土塁にまばらな照葉樹の列。一部は損壊? 海から約1km、海側には屋根付き駐車場。実証例とするにはあまりにもお粗末。スギ林は津波で流されたと言うが、塩水で立ち枯れた多くのスギを見た。

2012-05-03 06:57:21

※津波被災後のイオン多賀城店の「ふるさとの森」を宮脇昭氏が紹介する様子を次の動画で確認できる。(2011年4月8日撮影の動画を短く再編集したもの。)
 →▼宮脇 昭 緊急提言 瓦礫でイオンの森を作ろう - YouTube http://www.youtube.com/watch?v=UUkrZg4OBO0

※なお、宮脇理論にもとづく「イオンの森」については、青森県の事例を実地に検証した次の報告も参照。
 →▼イオンの森批判(宮脇理論批判ではありません) 鹿糠耕治〔2004.11.20〕|青森の自然環境を考える会 http://thinkaomori.sakura.ne.jp/kanuka/ion-hihan.html

※また、「森の防潮堤」の盛り土の強度の問題については、たとえば次のまとめにある @kaztsuda さんによる津波被災地(仙台)からの報告も参照。
 →▼毎日新聞記者さんの「森の防潮堤」推奨発言をめぐる議論(2012年12月14日) - Togetter http://togetter.com/li/422963
 →▼1) http://twitter.com/kaztsuda/status/279515942793408512
 →▼2) http://twitter.com/kaztsuda/status/285323996780691456
 →▼3) http://twitter.com/kaztsuda/status/218206533220184068

MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

宮脇昭氏の緑の防潮堤を批判してきた。根底には自然観の違い。究極の森を是とするか、変遷と混沌を楽しむか。人生の大半、もの作りを生業としてきた。これこそホンモノと言える出来上がりはない。明日はもう少しましなものをの連続。業界の頂点にはわれこそホンモノと言う巨匠・鉄人・職人がひしめく。

2012-05-03 08:06:57
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

@karuizawaleaf 緑の防潮堤の一番の問題点は、土木工学的に強度の検証がされていない事。河川の堤防でもアースダムやロックフィルダムでも、堤体内に水が浸透すれば崩壊の危険。激しい越流水が浸食する危険。木質瓦礫を含む軽い土砂は浮力で動く。津波も地震も繰り返す。人命に関わる

2012-05-06 08:37:55
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

緑の防潮堤。何度も言うが、その強度を土木工学から検証したのか?ネットを検索しても言及がない。原発安全神話と同じ楽観と願望。浸水しやすい軽い土塁が繰り返す津波と余震で崩壊すれば、海水だけの津波より大きい破壊力に。モデル実験と強度計算を徹底した上でなければ、人命に関わる無謀な提案だ。

2012-05-07 06:19:11
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

緑の防潮堤かコンクリの壁かを言う前に、その町でどんな暮しがしたいかが先。高台に住むのか、海岸部にはどんな産業か、交通網の位置は、港は、景観は、自然海岸は・・・何よりもそこに住む人の暮らしと町作りの設計があって、そのための防災計画だ。自然エネルギーも緑の防潮堤も都会からの押しつけ。

2012-05-09 08:08:38
MaystormJournal 寺山光廣 @MaystormJournal

緑の防潮堤とホンモノの森がネットに溢れている。宮脇昭氏はホンモノの森のモデルは鎮守の森だと言う。鎮守の森にも人手が入っている。いきもの達は環境や時間の流れに応じ、多様かつ変化し続ける。本物という状態があるのか。生物多様性を声高らかに主張しいていた生物学者も行政もなぜ沈黙するのか?

2012-05-10 09:37:23

※いわゆる「鎮守の森」の多くが明治以降に成立した歴史については、小椋純一(京都精華大学)氏を中心とする植生景観史の諸研究に詳しい。また、文献史学による実証として、たとえば次の論文を参照せよ。
 →▼[PDF] 畔上直樹「明治期「村の鎮守」の植生と地域社会 :東京都多摩市域の地域史料をてがかりに」(「明治聖徳記念学会紀要」復刊第46号) http://www.mkc.gr.jp/seitoku/pdf/f46-9.pdf

※「いのちを守る森の防潮堤」について、植物生態学にかかわる問題点の指摘として博物館学芸員の方が次の記事を公表した。
 →▼仕事だけじゃない日誌〔2012-11-19〕 http://d.hatena.ne.jp/mahoro_s/20121119/1353325467
※また、その記事に対するフォローアップとして植生学を専門にする方による次の記事も公開されている。
 →▼宮脇緑化に対するmahoro_sさんの文章が分かりやすいので紹介します〔2012-12-04〕|日々粗忽 succession http://d.hatena.ne.jp/sawagani550/20121204/p2
  

2012年6月1日