「森の防潮堤」構想と宮脇昭理論の生態学上の問題点(2012年11月19日)

▽東日本大震災後、宮脇昭さんらが提唱している「いのちを守る森の防潮堤」(「森の長城プロジェクト」)のはらむ問題点について、@mahoroszk さん(博物館学芸員(植物分野))による生態学の観点からの指摘をまとめます。 なお、より詳しいブログ記事も公表されています。 ▼仕事だけじゃない日誌〔2012-11-19〕 http://d.hatena.ne.jp/mahoro_s/20121119/1353325467 ▽「2011年3月11日の大津波被害に遭った土地で宮脇昭氏が推進する植樹運動(「緑の防潮堤づくり」続きを読む▽東日本大震災後、宮脇昭さんらが提唱している「いのちを守る森の防潮堤」(「森の長城プロジェクト」)のはらむ問題点について、@mahoroszk さん(博物館学芸員(植物分野))による生態学の観点からの指摘をまとめます。 なお、より詳しいブログ記事も公表されています。 ▼仕事だけじゃない日誌〔2012-11-19〕 http://d.hatena.ne.jp/mahoro_s/20121119/1353325467 ▽「2011年3月11日の大津波被害に遭った土地で宮脇昭氏が推進する植樹運動(「緑の防潮堤づくり」)については様々な問題がある。すでに指摘されている部分もあるし、これから出てくる議論も多いだろう。/ 現在のところ、生態学的な問題について簡潔に指摘する文章が少なく、漠然とながらも疑問視する声を多く聞く。そこで、この運動で植えられている樹種の問題点についてだけ、少し整理してみた。まず宮脇氏の著書を読み、講演やシンポジウムでの発言を聞き、岩手県内の事例について知識を得た上で、明らかと思える問題 について整理した。もちろん、他に問題がないわけではない が、それは 他の人が指摘してくれると期待している。」 ▽議論の前提として次のまとめを参照ください。 ▼「いのちを守るがれきを活用した緑の防潮堤構想」説明会@陸前高田市(2012年7月31日) - Togetter http://togetter.com/li/348348
広域処理 潜在自然植生 森の防潮堤 東日本大震災 宮城県 植生 宮脇昭 生物多様性 防潮堤 生態学
layujie 23155view 5コメント
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  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:33:58
    「緑の防潮堤づくり」運動について、生態学的観点から、主に樹種選定に関する問題点のみを整理します。3つ指摘します。(1)歴史性の軽視、(2)現存する生物相の無視、(3)苗木持ち込みによる遺伝的撹乱の恐れ。以下8つ連ツイ。
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:34:19
    宮脇昭氏は、自身の理論に基づいて岩手県宮古市付近に線を引き、宮古市以南で植樹をする時にはタブと常緑カシ類を主体とする常緑広葉樹を植え(宮城県以南はこれにシイを加える)、宮古市より北ではミズナラなどの落葉広葉樹を植えるべきである、としている。
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:34:34
    実際に宮脇氏らが2012年春に宮古市より南に位置する大槌町で植えたのは大半がタブノキで、一部が常緑カシ類、他に常緑性低木とヤマザクラなどであった。一方、宮古市より北の普代村で植えたのはケヤキ等の落葉樹であった。(ちなみにいずれの場所も海岸ではない。)
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:35:02
    (1a)宮脇氏は「これがこの土地本来の森だ」「次の氷河期までもつ森だ」というレトリックを使うが、その森がかつてその土地に存在したとは決して言わない。人為を排除した場合、何百年か後にその土地に成立するだろうと氏が考える森、それが潜在自然植生である。
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:35:18
    (1b)大槌町に植えられたような組成の森が、かつて岩手県域に存在したという証拠はない。岩手県では山田町以南にタブノキを主体とする林が点々とあるが、かなり原生的な植生でも常緑カシは見られない。かつてその土地に存在した証拠のない森を大規模に造成することを問題視する人は多い。
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:35:38
    (2)さらに、潜在自然植生こそが「正しい森」であるとして、現在その土地周辺にある生物相を無視し(場合によっては破壊し)、一律的な種組成の森づくりを推進することには、保全生態学的な問題がある。現在ある生物相には、様々な観点から見て、守られるべきものが多く存在する。
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:35:53
    (3a)「緑の防潮堤づくり」運動も、植樹をする土地の近くに生えている個体から種子を集めることを理想としているようであるが、被災地で急いで植樹をする必要があるため、現在は、関東地方で採取した種子から育てた苗木を植えている。
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:36:08
    (3b)被災地周辺で種子の採集も行われているが、そもそも岩手県には生えない常緑カシ類、個体数が限られているタブノキなどの常緑樹を「土地本来の木」としているため、地元では十分な数の種子を集めることができない。したがって今後も、関東地方からの種子の供給は避けられないだろう。
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:36:20
    (3c)タブノキのように、被災地周辺に野生残存個体群がある種については、大規模に植えた場合、野生個体群に遺伝的撹乱を引き起こす可能性も十分に考えられる。ヤブツバキやマサキなどの樹種も同様である。常緑カシ類のように付近に野生個体が全くいない種であれば、むしろ問題は少ない。
  • Suzuki Mahoro @mahoroszk 2012-11-19 22:36:44
    以上はツイッター向けのダイジェスト版。長くて分かりにくいブログ版はこちら。http://t.co/GkfoB2Oq
  • ※リンク先は次のページ。
     →▼仕事だけじゃない日誌〔2012-11-19〕 http://d.hatena.ne.jp/mahoro_s/20121119/1353325467

    ※なお、植生学の専門研究者による次のフォローアップ記事も公表された。
     →▼宮脇緑化に対するmahoro_sさんの文章が分かりやすいので紹介します〔2012-12-04〕|日々粗忽 succession http://d.hatena.ne.jp/sawagani550/20121204/p2

  • 資料 「いのちを守る森の防潮堤」プロジェクト概要

    ※「森の防潮堤」構想の概要については、公式サイトTOPページ→「森の防潮堤計画」→「森の防潮堤の提案」参照。
     →▼森の防潮堤の提案|いのちを守る森の防潮堤 http://morinobouchoutei.com/?page_id=62
    ※および、次のページから各種プロモーション動画を参照。
     →▼いのちを守る森の防潮堤 関連動画|いのちを守る森の防潮堤 http://morinobouchoutei.com/?page_id=1553
     →▼「いのちを守る森の防潮堤」関連動画リンク - NAVER まとめ http://matome.naver.jp/odai/2135322111035855501

    ※また、「森の長城プロジェクト」TOPページの「プロジェクトの概要」「よくあるご質問」も参照。
     →▼森の長城プロジェクト~ガレキを活かす~ http://greatforestwall.com/
    ▽「プロジェクト概要」「1 ガレキを活かす「森の長城」をつくる/ 目標総延長は 300㎞(青森県~福島県の太平洋岸)。 幅30m~100m高さ10m~15m の残土とガレキを利用したマウンドを築き、タブノキやカシ類、地域の草花からなる「ふるさとの木によるふるさとの森」をつくります。」「2 森に植樹するポット苗9千万本の生産と植樹/ ポット苗の生産体制を確立し、被災地域の経済的復興にも寄与することを目指します。」

  • ※なお、岩手県陸前高田市で開催された「いのちを守るがれきを活用した緑の防潮堤構想 陸前高田セミナー」(2012年7月31日)での宮脇昭氏の講演スライド「いのちを守る森の防潮堤断面図」では、森の防潮堤の構想案を 「幅100m」、「高さ22m」(「盛土(造成地の切土やガレキを使用)」)、としている。
     →http://twitter.com/HASHIME_chan/status/230183234326110208/photo/1

    ※宮脇昭氏の著書『瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る』(学研新書)から、「「提言」に対する環境省からの質問事項と回答」を整理したものが次のブログ記事にある。
     →▼【森の防潮堤プロジェクト】瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る〔2012年05月05日〕|あざらしサラダ(愛知県がれき受け入れ問題) http://azarashi.exblog.jp/15219792/
    ▽「先週、上京した際に購入した宮脇昭博士(横浜国立大学名誉教授)の著書「瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る: 植樹による復興・防災の緊急提言 (学研新書)」を読んだので、以下にポイントをまとめてみた。」

  • 「森の防潮堤」の構成樹種

    ※「森の防潮堤」に用いられる樹種については、次のページを参照。(各地域ごとのミクロな単位での樹種選定等は、公表されていない。)
     →▼森の構成樹種|いのちを守る森の防潮堤 http://morinobouchoutei.com/?page_id=171
    ※TOPページ→「森の防潮堤計画」→「森の防潮堤の提案」→「森の構成樹種」参照。
    ▽「森の防潮堤計画では、東北沿岸域に生育する主として常緑広葉樹主体の樹種を苗から育てて、森を創るビジョンを描いています。/ 用いられる多種多様な苗木は、それぞれ競争、共存、あるいは我慢をしながら、共存していきます。/ どのような樹種が、どのように森を構成するのでしょうか。/ 仙台湾沿岸の平野部ではモデルとなる森がもともと少ないことに加え津波の被害もあり見出すことは難しいですが、宮城県内には断片的にですが、モデルとなる森が津波にも耐え残されています。〔以下略。リンク先を参照〕」

  • 2014年2月

    ※2014年2月、林野庁より、東日本大震災被災地の海岸防災林への「記念植樹の苗木育成用」として、皇居内の広葉樹4種から採取した種子を配布する、次のリリースがなされた。
    ※配布樹種は、タブノキ、エノキ、スダジイ、アカガシ。(エノキは落葉広葉樹。他3種は常緑広葉樹。) なお、2014年2月時点では、配布終了後の種子受取団体、配布数量の公表方法は告知されていない。

     →▼林野庁|報道発表資料|皇居内の樹木の種子(海岸防災林植樹用)の配付を希望する民間団体の募集について〔2014/02/19〕 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/sanson_ryokka/140219.html
    ▽「平成26年2月19日/林野庁」「林野庁は、東日本大震災で被災した海岸防災林の復旧・再生を進めるため、海岸防災林の植樹活動を行う民間団体を対象として、皇居内の樹木から採取した種子の配付を希望する団体を募集します。」
    ▽「1. 趣旨 海岸防災林は、農地や居住地を飛砂、風害、潮害等から守るなど、地域の生活環境を保全する上でなくてはならないものです。津波の際には、流れの勢いを弱めたり、漂流物を捕捉するなど、津波被害を軽減する効果も発揮します。/東日本大震災では、140kmにも及ぶ海岸防災林が甚大な被害を受けました。/ 林野庁は被災県とともに、かつて経験したことのない大規模な復旧・再生事業に取り組んでおり、企業・NPO等の民間団体にも参加いただいています。/その一環として、今回、宮内庁の協力により皇居内の樹木から採取した種子を、海岸防災林の植樹活動を行う民間団体に対し、記念植樹の苗木育成用として配付します。」
    ▽「2. 概要 (1)配付対象者: 東日本大震災で被災した海岸防災林等において植樹活動を行う民間団体であって、配付された種子を苗木まで育成する体制が整っている団体を対象に配付します。個人での応募はできませんので御了承ください。/ (2)樹種及び個数: 配付する種子の樹種及び総数は以下のとおりです。各団体に配付する種子数は、1樹種あたり100個とします。なお、応募状況によって、配付数を増減する場合があります。複数の樹種に応募することも可能です。/ ・タブノキ 約1300 個/ ・エノキ 約3300 個/ ・スダジイ 約2900 個/ ・アカガシ 約1700 個/ (3)配付時期: 種子の配付は、3月下旬頃に郵送にて行う予定です。/ (4)種子の利用方法: 配付した種子から育成した苗木は、東日本大震災で被災した海岸防災林等に植栽していただきます。]
    ▽「3. 応募方法 (1) 応募方法: 配付を希望する団体は、別添の申請書に必要事項を記入の上、以下の宛先に郵送してください。なお、応募資格及び申込方法等の詳細については、別添の募集要領を御覧ください。/ 宛先: 〒100-8952 東京都 千代田区 霞が関1-2-1 林野庁 森林整備部 森林利用課 種子配付担当/ (2) 申込締切: 平成26年3月10日(月曜日)(当日必着)/ (3) 配付数量の通知: 応募者には、FAX又は電子メールにより、配付する樹種と種子数を通知します。応募者が多数の場合は、抽選により配付者を決定することがありますので、あらかじめ御了承ください。/ <添付資料>(添付ファイルは別ウィンドウで開きます。) ・海岸防災林植樹用種子の配付について(募集要領)(PDF:212KB)/ ・申請書様式(ワード:48KB)」

  • 「日本生態学会」のリリース
  • リンク www.esj.ne.jp 日本生態学会防潮堤建設にあたってのお願い 日本生態学会のウェブサイト。日本生態学会は生態学およびその関連分野に関する研究を推進するため設立されました。
  • ▽「(1) 防潮堤の建設にあたっては、生態系からの恩恵が大きく損なわれないよう、水産資源を含む野生生物の現状、生育・生息環境条件、ならびに人と自然の関係に関する事前調査を十分に行うべきであると考えます。そのための適切な調査内容、調査法、評価法に関して生態学・植生学・水産学の最新の知見を活用したご提案や、専門家のご紹介といったご協力をさせていただきたいと考えております。/ (2) 復興工事に伴って生物多様性保全の上で特に重要な場所を破壊することがないよう、地域の状況に詳しい研究者から絶滅危惧種の分布等について情報をご提供するなどのお手伝いをさせていただきたいと考えております。」
    ※全文はリンク先の日本生態学会webページを参照。(この文書は、2012年10月26日付で岩手県知事・福島県知事宛てに、同年11月8日付で宮城県知事宛てに提出された。)
     →▼津波被災地での防潮堤建設にあたっての自然環境への配慮のお願い(申立書)|日本生態学会 http://www.esj.ne.jp/esj/Activity/2012Bouchotei.html

  • リンク www.esj.ne.jp 日本生態学会東日本大震災被災地復興計画に対する要望 日本生態学会のウェブサイト。日本生態学会は生態学およびその関連分野に関する研究を推進するため設立されました。
  • 関連
  • ツイートまとめ ログ 6744 view 15 45 9 users 「いのちを守るがれきを活用した緑の防潮堤構想」説明会@陸前高田市(2012年7月31日) ▽東日本大震災の津波により、じつに死者1,500人以上という甚大な被害を受けた陸前高田市で、2012年7月31日(火)、宮脇昭さんらが提唱する「いのちを守るがれきを活用した緑の防潮堤構想」説明会がおこなわれました。 当日の @HASHIME_chan さん(陸前高田市、現在は隣町の木造仮設住宅に入居)による実況と、「三陸沿岸の植生」の説明を担当された博物館学芸員(植物分野) @mahoroszk..
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