イザヤ・ベンダサンbotまとめ/”実体語”と”空体語”のバランスからなる日本教の不思議な世界「天秤体制(バランスクラシー)」

イザヤ・ベンダサン著『日本教について』より抜粋引用。
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イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

1】【実体語と空体語のバランス】前略~日本人は狡猾であるという印象をもつ外国人は少なくありません。…もちろん、狡猾さが皆無の個人も民族も現実には存在しないと思いますが、日本人が特にそう見えるのは、日本人が日本人独特の、不思議な世界に住んでいるからです。<『日本教について』

2012-10-05 23:58:53
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

2】これは非常に面白い一種の論理(とは言えませんが、ほかに言いようがありません)で形成されている世界で、簡単な実例をあげますと、「安保は必要だ。だがしかし、安保反対を叫びうる状態も必要だ」という一種の「考え方の型」といったものです。

2012-10-06 00:58:32
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

3】もう一つ例をあげれば「自衛隊は必要だ。だがしかし、自衛隊は憲法違反と言える状態も必要だ」となります。この「考え方の型」は、単に、以上のような大きな政治問題ばだけでなく、小団体の問題から個人の日常の些事まで、すべてに共通する「考え方の型」、いわば基本的な型です。

2012-10-06 01:58:38
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

4】日本という世界は、一種の天秤の世界(もしくは竿秤の世界)と考えています。そしてこれの支点となっているのが「人間」という概念で、天秤(もしくは竿秤)の皿の方にあるのが「実体語で組み立てられた世界」で、分銅になっている方が「空体語で組み立てられた」もう一つの世界です。

2012-10-06 02:58:33
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

5】この「空体語」を無意味、無内容の言葉(これはどの国の言葉にもあります)と誤解されませんように――いうまでもなく、分銅も確かに一種の実体ですが、たとえ質量があり、かつ手で触れることができても実は一種の尺度であって、尺度に過ぎないという意味では実体ではありません。

2012-10-06 03:58:37
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

6】しかしそれでいて、天秤を水平に保つにはどうしても必要であり、天秤皿の上の実体と同じだけの重さがなければ分銅になりません。問題はここです。「自衛隊は必要である」という「実体語」は口にせず「自衛隊は憲法違反であるといえる状態も必要である」という分銅の方を尺度として口にし、(続

2012-10-06 04:58:34
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

7】続>それによって天秤の平衡を保つことは、たとえ口にしなくても自衛隊の存在を認めてはじめて言える言葉ですから、「実体語」でいえば、「自衛隊は必要だ」ということです。だがそれを「空体語」で言わないと、天秤は平衡を保てなくなってしまいます。

2012-10-06 05:58:36
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

8】この「実体語」と「空体語」の関係を、日本人はよく、西欧の「思想」と「現実」の関係と混同します。いや混同ではなく同じことだと思い込んでいるようです。

2012-10-06 06:58:34
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

9】…言うまでもなく西欧では、原則として、「現実」という言葉で規定されているものを自分が現在立っているスタートラインとすれば、「理想」はそのゴールを規定した言葉であります。従って議論は常に言葉によって現実をどう規定するか、また言葉によって理想をどう規定するか、(続

2012-10-06 07:58:36
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

10】続>まずこの二つを規定してから、この「言葉によって規定された現実」から同じく「言葉によって規定された理想」までをつなぐ道を、また言葉によって規定し、それをどう歩むかを「方法論という言葉」で規定するという形になります。

2012-10-06 08:58:53
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

11】この場合、「現実」という言葉も、「理想」という言葉も、ともに同じく言葉であることは、議論をする場合の当然の前提ですが、日本人の場合は、この前提がすでに違うのです。

2012-10-06 09:58:56
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

12】…ここではただ、この差は「具体的」「抽象的」といった差とは全く別のものであり、そこで私が「実体語」と「空体語=分銅」という奇妙な比喩を使わざるを得なくなった理由であると申し上げるに止めます。

2012-10-06 10:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

13】分銅はたとえ、天秤皿の上のものと同じ材質でできていても、「もの」でなく「尺度」であり、分銅の材質が何であるかを論じても無意味で、要はそれが、天秤皿の上のものと、どうバランスをとっているかが問題だということです。

2012-10-06 11:58:53
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

14】「現実問題」という「実体語」の荷が天秤皿にのると、平衡を保つためには、天秤ならば分銅の数を増し竿秤ならば分銅の位置をずらして目盛りの高いほうへあげて行かねばなりません。こういう状況は、常に、日本全体の問題にも、一個人の問題にも起こります。

2012-10-06 12:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

15】例をあげれば、文字通り、いくらでもあります。今から一世紀ほど前、日本が鎖国をやめて開港せざるを得ない状態になったと、ほとんどすべての日本人(少なくとも知識人)が内心で感じたとき、激烈な攘夷論が起こりました。

2012-10-06 13:58:54
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

16】…従って「実体語=開港」は沈黙し、さらに、開港が必要になればなるほど攘夷の声は高くなってゆき、ついに、天秤の分銅は最大限、竿秤なら竿の端まで分銅があがって行きます。そして、その結果はどうなるか。天秤ならば平衡が破れて一回転し、天秤皿の上の荷も分銅も落ちてしまう――

2012-10-06 14:58:48
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

17】御一新で、皿は空、分銅なしの平衡状態となります。従って攘夷論者が政権をとったのに開港したということは別に不思議ではありません、同じことをただ「空体語」で言っていたのですから。これは革命と呼ぶべきことではありません。

2012-10-06 15:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

18】実によく似たことが、第二次大戦の末期に起っています。すなわち敗戦は避けられないとほとんどすべての人が内心で感じたとき、分銅は極限まであがって「一億玉砕」になり、ついで天秤は一回転して重荷も分銅も落ちてしまうと、天秤皿は空で、分銅なしの虚脱状態、(続

2012-10-06 16:58:48
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

19】続>すなわち精神的空白の平衡が再現し、当然、言葉は失われます。そしていずれの場合も支点は微動もしていません。将来も同じことが起きるでしょう。

2012-10-06 17:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

20】この天秤の支点が実は「人間」という概念であり、それが私のいう日本教において「全能者的役割」を演じていることは、…ある程度は理解していただけると思います。そこで、この支点を解明することが日本教を解明することです。

2012-10-06 18:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

21】…「空体語」という分銅を極限までつみ重ねた時、天秤は平衡を失って一回転しますが、その時に天秤皿の上の実体語も空体語も全ては落ちて消え、関係者は全て言葉を失うでしょうが、天秤そのものは「言葉」ではない「人間」を支点に、何事もなかったかの様に静かに平衡を保っているのです。

2012-10-06 19:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

22】この状態を日本語で「心機一転」といいます。これは、試行と模索によって、心(マインド)が新しく方向を転ずるのではなく、支点を中心とした一種の一回転=自転(ローテーション)です。

2012-10-06 20:58:51
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

23】これによってすべての言葉が投げ捨てられた状態を、日本人は「心機一転、裸になって……」といいます。そしてこれが、小規模にまたは大規模に行われる状態を、私は、天秤体制(バランスクラシー)と呼びます。~後略

2012-10-06 21:58:52