- al_zweistein
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きっかけ
よく「その真に驚くべき証明を見つけたが,それを記すにはこの余白は狭すぎる.」と訳されるけど,原文では「(~であり)その真に驚くべき証明を見つけた.それを記すには~」という文の切られかたなんですね.
2012-03-20 23:16:45数学徒のうち「数学書をできるだけ原文(著者が書いたままの文)で読みたい」という人は,少なくない割合でいると思う.もちろん「数学的内容が同じなら何語でもいいじゃん」という人も少なくないと思うけど.
2012-03-20 23:41:57本文
Cubum autem in duos cubos, aut quadratoquadratum in duos quadratoquadratos, 「しかし立法数を2つの立法数に,4乗数を2つの4乗数に,」
2012-03-21 01:29:34et generaliter nullam in infinitum ultra quadratum potestatem 「そして一般に無限大まで,平方数より上の存在しうるいかなるものをも」
2012-03-21 01:29:47in duos eiusdem nominis fas est dividere 「2つの同名のものに分割しないことが神の意志(fas)であり」
2012-03-21 01:30:13cuius rei demonstrationem mirabilem sane detexi. 「その事柄についての真に驚くべき証明を私は発見した.」
2012-03-21 01:30:36Hanc marginis exiguitas non caperet. 「余白の狭さはこれ(証明)を収容しないだろう.」
2012-03-21 01:31:04Fasが「神の掟・道理・天命」を意味する語で合っているか迷ったけど、主格らしきものが他にないしあってるはず
2012-03-21 01:35:34このまとめを作成するきっかけとなったツイート
フェルマーの時代には数式があまり普及していなかったのかもしれない.例の予想も,原文は「立方数を2つの立方数の和に,平方平方数(4乗数)を2つの平方平方数の和に,そして一般に2より大きい冪の数を……」という調子で書いてある.そりゃ余白足りんわ.
2012-11-02 19:32:38追記: @nolimbreさん本人に添削してもらいました
@al_zweistein お知らせありがとうございます.ツイートの使用については全く問題ありません.fas の訳語についてなのですが,ここでは神の意志という宗教的な意味合いはなく,単に「〜であるのが正しい,断然〜である」という意味と思われます.たとえば研究社の羅和辞典に
2012-11-04 12:57:32@al_zweistein "fas est" が inf. を伴って「当然(の業務)である,正当である,…であるべきだ」という意味になることが書いてあります(Lewis and Short には right, proper, allowable 等の訳語もあります).また,
2012-11-04 13:01:23@al_zweistein その前の "nullam in infinitum ultra quadratum potestatem" において,訳では potestatem ( < potestas ) を可能性の意味に取られている感じがするのですが,この語には「冪」の意味が
2012-11-04 13:06:44@al_zweistein あります.Lewis and Short には,数学において potestas が δύναμις と同義だとあるのですが,これは冪の意味です.(ちなみに potestas, δύναμις, 英語の power は全て「権力」の意味もあります)
2012-11-04 13:10:31@al_zweistein さらに形容詞 infinitum は無限の意味ではなく,「不定の」の意味の方だと思います(「不定」元というときの「不定」です).より現代の数学らしい訳は「任意の」でしょう.全体で,直訳は「平方より大きい冪の任意のものは〜」くらいがいいのではと思います.
2012-11-04 13:19:25というわけで、自分の力不足を露呈する結果となってしまった。特に、ここで potestas が冪の意味なのは確実なのに。
2012-11-04 13:33:48不足していたのはラテン語力と言うより数学力かも。「パワー」が「冪」の意味になるって言うのは英語の知識というより数学の知識って感じだし。
2012-11-04 13:49:54