斉藤清二先生による連続ツイート「心理臨床における事例研究法理論の再構築のための予備的考察」

「心理臨床とは、臨床心理学という学問の単なる臨床現場への応用ではない。そうではなくて、対人支援としての現場での臨床実践がまず先にある。」 関連まとめ 続きを読む
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斎藤清二 @SaitoSeiji

@trishgreenhalgh Could you give me some comments about the definition of EBPP by APA in 2005? (cont'd) http://t.co/wTyKy54C

2012-11-23 16:37:54
斎藤清二 @SaitoSeiji

@trishgreenhalgh The statement uses a term "in the context of" instead of "and". What does it mean?

2012-11-23 16:42:43
斎藤清二 @SaitoSeiji

@trishgreenhalgh Is there any difference of nuance? For example, intention of enhancement of patient-centerdness out of three factors?

2012-11-23 18:04:32
Trisha Greenhalgh @trishgreenhalgh

@SaitoSeiji I think it;s not worth trying to analyse this too closely - reflects fashions in language use mostly!

2012-11-23 19:06:33
斎藤清二 @SaitoSeiji

@trishgreenhalgh We are discussing about Japanese translation of EBPP 2006 recently. Your comments were extremely helpful! Thank you!

2012-11-23 19:52:56
斎藤清二 @SaitoSeiji

EBPP2006の定義の英語表現について、グリンハル教授に質問してみたら、この定義の文章においては、「in the context of」は「and」と同じ意味だと考えて良い、と言われた。両者の違いは言葉のファッションの違いだとのこと。英語の翻訳は難しいw。

2012-11-23 20:01:56
斎藤清二 @SaitoSeiji

EBPP2006を私は以前、「EBPPの操作的定義は『患者の特徴、文化、意向という文脈において、その時点で手に入る最良の研究成果を、臨床技能に統合すること』である」と訳したのだが、単純に『手に入る最良の研究成果を、臨床技能と患者の特徴、文化、意向に統合すること』でよいらしいw。

2012-11-23 20:05:24
斎藤清二 @SaitoSeiji

要するに、「エビデンスに基づく実践とは、最良の研究成果(客観的情報の要素)と、臨床技能・能力(治療者の要素)、患者の文化、好み、特徴など(患者の要素)の3つの要素を(臨床場面において)統合することである」と考えてよく、英語表現はその時々微妙に変えてあるだけ、と考えてよさそうだ。

2012-11-23 20:09:36
斎藤清二 @SaitoSeiji

Very useful book for psychologists who are interested in EBPP. Japnese translation has been recently publishied. http://t.co/cGrj7fLq

2012-11-23 21:10:22
斎藤清二 @SaitoSeiji

「心理臨床における事例研究法理論の再構築のための予備的考察」 の続きを連続ツイートします。http://t.co/j10oJGrr

2012-11-24 20:58:53
斎藤清二 @SaitoSeiji

①心理臨床という現場において、実践的な研究は何のために行われるのだろうか。研究の目的は、その研究者の研究関心、あるいは研究疑問とよばれるものと密接に結びついている。

2012-11-24 20:59:48
斎藤清二 @SaitoSeiji

②「研究というひとつの行動を通じて、あなたはいったいどのようなことを知りたいのか?」という問題意識は研究を企画し、実践するにあたって、最も重要なポイントであり、あなたの研究という活動のそもそもの前提となる。もちろん、臨床における実践研究の目的は多数ありうる。

2012-11-24 21:01:18
斎藤清二 @SaitoSeiji

③重要なことは、研究の目的と、研究に用いる理論、方法論、道具の間には、整合性がなければならないということである。その研究が科学的妥当性をもつかどうかは、どのような道具を用いたかによって決まるのではなく、研究の目的と理論、方法論、道具のセットの間との整合性で決まるのである。

2012-11-24 21:03:05
斎藤清二 @SaitoSeiji

④仮にあなたが、摂食障害のクライエントに多数接している心理臨床家であるとする。あなたの臨床疑問が、「摂食障害の患者さんに、ある特定の心理療法を行うことは、なにもしないか、あるいは他の治療を行うよりも、より良い治療効果が得られるか?」というものだったとする。

2012-11-24 21:05:41
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑤この臨床疑問についてエビデンスの二次資料集を検索すると、複数のRCT(無作為割付臨床試験)のシステマティックレビューにより、神経性過食症(BN)に対しては、認知行動療法(CBT)を含む複数の心理療法、および薬物療法の有効性が実証されているという情報が手に入る。

2012-11-24 21:08:22
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑥もしあなたがその心理療法(ここでは心理療法Aとする)の訓練を受けており、患者さんが了解するならば、目の前の患者さんにその心理療法による治療を試みてみようという判断をすることになる。これが、通常のEBM(P)の考え方であり、実践におけるエビデンス情報の利用法である。

2012-11-24 21:13:15
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑦次に、心理療法Aの専門家の立場から考えてみよう。彼はこの治療法が、他の方法よりも治療効果が優れているということを、他の専門家や一般の人々に対して主張したいという希望を持っている。今までに、それについての実証的研究が行われていないならば、彼はその研究を自分で行わなければならない。

2012-11-24 21:15:16
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑧その研究は、RCTによって行われるべきである。このような介入治療の効果を証明するためには、無作為割付による対照群との比較が必要で、対照群のない治療成績のみでは、この治療法(心理療法A)の一般的有効性を主張できない。

2012-11-24 21:17:01
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑨このように、「ある治療法が別の治療法よりも一般的に優れている」ということを、誰かに対して主張したい場合、それを主張するためには、RCTを代表例とする「効果研究=outcome research」を行うことが必要だということである。

2012-11-24 21:18:10
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑩そしてその結果が、データベースとして共有されれば、その研究成果は、複数の治療者が臨床判断に利用することが可能になる。また、その成果が臨床ガイドラインに取り入れられれば、それは、その領域における治療の標準化に一歩貢献したことになる。

2012-11-24 21:19:24
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑪ところで、すでに心理療法Aには有効性があるということを知っている臨床家は、次に何をしたいと考えるだろうか? もちろんその治療を行ったからといって、患者の全てに有効性があるわけではない。また治療を行う時に、色々やりにくい点や、患者にとっては不都合な点も生じるかも知れない。

2012-11-24 21:22:47
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑫そこで、この治療法Aにおける改良すべき点を明らかにし、この方法をさらにより良い治療法にしたいと思うのが、治療者(=心理臨床家)の自然な態度ではないだろうか。

2012-11-24 21:24:22
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑬それでは、「ある心理療法が別の心理療法より優れているかどうかを知ること」ではなく、「その心理療法のプロセスをより良いものに改善していくこと」が、その実践者/研究者の関心であるとしたら、そこで用いられる方法はどのようなものが適当なのだろうか。

2012-11-24 21:25:01
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑭もし改善する点がすでに分かっているのであれば、「改良前の治療法A」と「改良後の治療法B」とを比較するRCTを行うということをすぐに思いつく。しかしこの方法は極めて能率が悪い上に、そもそもどこを改善すべきか?という疑問に答えてくれるものではない。

2012-11-24 21:27:08