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斎藤清二 @SaitoSeiji
「医療におけるエビデンスとナラティブ」について、連続ツイートしてみます。
斎藤清二 @SaitoSeiji
①EBMの提唱から約20年、NBMの提唱から約13年を経て、エビデンス、ナラティブということばが、当たり前のように語られるようになってきた。Googleで検索すると、「エビデンスand 医療」では951,000件が、「ナラティブand 医療」では133,000件がヒットする)。
斎藤清二 @SaitoSeiji
②面白いことに、「エビデンスand ナラティブ」で検索すると19,200件がヒットし、それは必ずしも医療の領域に限定されていない。エビデンスとナラティブとの関係について多くの人が関心を持ち、それぞれがユニークな考察を公表していることが見て取れる。
斎藤清二 @SaitoSeiji
③観察される事象を二つの対立概念によって分類・理解しようとする欲求は、ベーコンの言うところの「種族のイドラ」つまり人間であればだれでも陥ってしまう理解(誤解?)のパターンに由来するものなのだろう。エビデンスとナラティブという対立概念は、さまざまな比喩によって表現されている。
斎藤清二 @SaitoSeiji
④すなわち「サイエンスvs アート」「客観性vs 主観性」「一般性vs 個別性」「専門家vs一般市民」「治療者vs 患者」「鳥の視点vs虫の視点」…。これらの比喩はそれぞれにエビデンスとナラティブの重要な側面を表現しているが、いずれも二項対立的な枠組みを越えるものではない。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑤以前私は、EBMとNBMを統合的に理解しようとする考え方のバージョンとして3つを描写した。一番目は「EBMとNBMは相互に補完的であり、NBMを加えることによってEBMの体系は完成するという楽観的な考え方」。日本のEBMの専門家の多くはこの考え方を採用していると思われる。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑥二つ目は「EBMとNBMは異なる二つの世界観であるが、患者と医師の出会いの場において共存しうるという慎重な考え方」。英国のNBMグループの多くは、この考え方を採用しているように思われる。つまり、EBMとNBMは拠って立つ認識論が異なるので簡単には統合できないと考える。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑦三つ目は「EBMとNBMは異なる二つの世界観であるが、患者と医師の対話の場において、NBMはEBMを包摂/統合するという大胆な考え方」。これら三つの考え方は、どの視点から何を目的としてEBMとNBMを理解しようとするのかという関心と相関して取捨選択されることになるだろう。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑧これまで私は半ば意識的に「EBMとNBMは患者中心の医療を実践するための車の両輪である」という比喩表現を採用してきた。最近では「医療を自転車に喩えるとハンドルと直結する前輪がEBMでありペダルで駆動される後輪がNBMである」と説明することが多くなった。賛否はあると思うが・・。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑨最近、本邦のナラティブ・セラピーの第一人者であるK先生から「イルカとクジラを思い浮かべるといいかもしれない。そう、イルカはEBMでクジラがNBMだ。言うまでもなく、イルカとは体長5メートル以下の歯クジラのこと」というコメントをいただいた。この比喩は言い得て妙である。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑩イルカとクジラはともに水棲哺乳動物でよく似ている。イルカは小さいが頭がよく、クジラは巨大なものから小さいものまで多様な種類がある。ところでイルカやクジラは自分達が大海の住人であることを自覚しているだろうか、この広い海のどこかで出会ったら、互いが互いをどう理解するのだろうか。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑪・・・イルカとクジラのメタファーは、このような楽しい連想を膨らませてくれる。 以上、連続ツイートを終わります。フォローしてくださった方ありがとうございました。
切り取り線 @kiri_tori
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斎藤清二 @SaitoSeiji
「心理学におけるエビデンスに基づく実践(Evidence Based Practice in Psychology:EBPP)」についての連続ツイートをしてみたいと思う。多分に私的解釈を含んだ内容になることはご容赦いただきたい。
斎藤清二 @SaitoSeiji
①医学領域におけるEBMのムーブメントは、過去20年の間に医療界を席巻したが、医療関連領域のみならず幅広い領域に影響を与えた。1990年代から2000年代にかけて、様々な分野で、Evidence-Based(科学的根拠に基づく)の接頭辞を冠した概念が多数提唱された。
斎藤清二 @SaitoSeiji
②これらの概念の総称は一般に、Evidence-Based Practice in ○○(固有の学術・実践分野)と描写し得る。この用法に従うならば、EBM自体もEvidence-Based Practice in Medicineと命名でき、EBPsの一つとして理解できる。
斎藤清二 @SaitoSeiji
③もちろん個々の領域の特徴や特殊性に応じて、各々のEBPの強調点は異なっているが、その全てが例外なく源泉をEBMに求めている。今回はEBPムーブメントの早い段階から明示的かつ戦略的にEBPの概念を発展させてきた分野の一つとして臨床心理学の分野をとりあげてみたい。
斎藤清二 @SaitoSeiji
④EBMの概念が公表されてまもなく、米国心理学会(APA)はこの概念をいち早く取り入れ心理療法の科学化に乗り出した。APA第12分科会が最初に実行したことは、多数ある心理治療の中で、実証的研究によって有効と認められている治療法を選別しそのリストを作ることであった。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑤実証的研究によって有効と認められている治療法はEmpirically Validated Treatments:EVTと命名されたが、後にEmpirically Supported Treatments:ESTs(実証的研究によって支持された治療法)という名称に変更された。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑥APA第12分科会は、1993年にESTsの評価基準とESTsの暫定的なリストを公表し1998年まで継続的なアップデートを行った。ESTの必要条件には1)治療法がマニュアル化されていること、2)治療対象が特定の診断をもつグループとして明確化されていること、が規定されていた。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑦その結果、ESTsリストの治療法の大部分は、広義のCBT(認知行動療法)関連の治療技法で占められることになった。代表例は、鬱病性障害に対する認知療法、人間関係療法、パニック障害、神経性過食症、慢性疼痛、全般性不安障害に対するCBT、強迫性障害に対する暴露反応妨害法などである。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑧現在からみると、初期のESTの概念はEBMの概念のうちのごく一部を取り入れた狭いものであったことが分かる。ESTの目的は「実証的研究によって支持されていない治療法」を心理治療から排除することにあり、クライエントと治療者という人間の個別性に対してほとんど焦点を当てていなかった。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑨APAのESTsマニュアルを公表を受けて、本邦でも2000年代に入りEBP導入の動きが生じた。「エビデンスに基づく実践とは、治療者の経験と勘だけに頼るのではなく、効果が客観的に証明された治療技法を用いるという理念のことである」といった紹介が心理学領域でなされるようになった。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑩しかしEBPの本家であるEBMにおいては、Sackettらによる1996年の定義がすでに浸透し、「個々の患者のケアのための臨床判断にエビデンスを利用すること」がEBMなのであって「実証的な証拠を持つ治療法を用いること」がEBMであるのではないということはすでに合意されていた。
斎藤清二 @SaitoSeiji
⑪APAが提唱したEBPPは、ESTsとの概念的な区別が不十分であり、もともとのEBP概念の源流であるEBMの基本的概念との乖離がしだいに明確になったため、種々の批判と議論が巻き起こった。APAはこの混乱を整理するために2005年にEBPPについてのStatementを公表した。
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コメント

*サイパブ @psypub 2012年1月6日
EBM(科学的根拠に基づく医療)とEBPs(科学的根拠に基づく〔複数の〕実践)についての追加考察,を追加しました!
*サイパブ @psypub 2012年9月2日
今さらですが,改題しました!
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