「富国強兵の遺産」要約 第二章―1

目次:http://togetter.com/li/421405 前:http://togetter.com/li/421392 二章冒頭~「三音和音」まで 国産化、技術の普及、育成。 この三音和音を一括して追求し、イデオロギーと文脈で理解すれば、工業力をもたらし国家の安全保障を確保してくれるだろう。
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bouninng @bouninng

そして、もう一つの「テクノロジー・ハイウェイ」が納入業者(サプライヤー)と発注業者(カスタマー)を、つまり下請け業者(サブコントラクター)と主契約業者(プライムコントラクター)結んでいる。これは両者を垂直に結んでおり、上から下へ、下から上への技術移転を容易にするハイウェイとなる。

2012-12-11 21:48:44
bouninng @bouninng

プライムコントラクターはライセンス生産で得た知識をサブコントラクターや販売業者に少しづつ普及させる。例えば、新しいプロジェクトが始まるとサブコントラクターは技術者チームをプライムコントラクターの下に派遣して研修を受けさせ、輸入された設計・製造技術を習得させる。

2012-12-11 21:48:54
bouninng @bouninng

また、河下のサブコントラクターからプライムコントラクターへ伝えられる技術も多い。サブコントラクターが事業を多角化し、独自の研究開発を行うことで、従来の事業に技術を流用し、新しい技術や技能を造りあげる。この技術は彼らの設計技術、新製品として技術移転され、普及することになる。

2012-12-11 21:49:05
bouninng @bouninng

最も重要な点は、日本の技術イデオロギーと産業構造が結合し、産業分野を越えた技術の普及を促進していることだ。技術は様々な産業間で普及し、一産業内でも垂直方向に普及する。

2012-12-11 21:49:14
bouninng @bouninng

産業構造と技術への信奉―一つの技術は特定の分野だけでなく全ての分野にとって有益であると信じること―を利用した結果、製品技術と生産プロセス技術は様々な産業分野の企業内、企業間に普及し、日本経済の生産性を向上させてきた。こうして企業は成長し、競争力は育成される。

2012-12-11 21:49:28
bouninng @bouninng

明治の産業政策以来、今日に至るまで国産かと技術の普及は、一貫して「そのプロセスから利益を得る生産者を支援する政策」との抱きあわせで勧められてきた。

2012-12-11 21:52:51
bouninng @bouninng

この件についてIHIの航空機エンジン技術者は「テクノロジーは単なる"know how"だけでできているものではなく、"know why"と"know who"も含んでいます。我々は知識だけでなく、人を育て、人脈を形成しなければなりません」と語った。

2012-12-11 21:53:03
bouninng @bouninng

また日本航空技術協会の理事は産業政策について「産業ではなく、テクノロジーの育成を狙いとしたものです。我々は能力を育成しているのであって、一つの産業分野を育成しているのではありません」と説明している

2012-12-11 21:53:15
bouninng @bouninng

競争を抑制しながら技術の進歩を図るべきだ、とする日本流の考え方を前提とするプロトコルに従って、日本企業は競合関係にありながら、常に企業同士で、また官僚と「協議」して市場を管理してきた。

2012-12-11 21:53:27
bouninng @bouninng

全ての関係者の利害が勘案され、経済官僚は市場から脱落する企業が出ないよう配慮する。妥協と調整のプロトコルによって景気循環は穏やかになり、資本参加の障害は減る。

2012-12-11 21:53:39
bouninng @bouninng

日本の企業は大企業も中小企業も、少なくともアメリカの企業より辛抱強く景気の後退期を耐え凌ぐ。各企業や地域はこうした経済体から脱却するより、互いに協力して徐々に技能を高め、ひいては経済全体を拡大させることの方に魅力を感じるからだ。

2012-12-11 21:53:52
bouninng @bouninng

こうして日本国内の産業は長期間安定した経営状態を維持し、その結果各産業も産業全体も様々な方法で習得した技術を有効に活用した。このようにして日本の産業育成策は公共事業と民間企業の両方をを、暗黙の了解と明文化された取り決めの両方を内包して、経済の基盤をつくりあげた。

2012-12-11 21:53:59
bouninng @bouninng

これらの三音和音(技術の確立、普及、育成)は長い間日本の国家安全保証の要であった。一九七〇年代、日本の国家戦略の立案者達は、日本は軍国主義に傾斜することなく国家安全保証の体制を全うできると強調した。この「包括的安全保証」という基本概念は長期に渡って国内外で説得力をもつものとなった

2012-12-11 21:54:20
bouninng @bouninng

一九八〇年、猪木正道を議長とする特別研究機関は、大平首相の要請に基づき包括的安全保証についての調査を行った。この際の報告書「猪木リポート」は、軍事力は国家安全保証の一部分にすぎないとして、「包括的国家安全保証」の概念を打ちだしている。

2012-12-11 21:54:33
bouninng @bouninng

「包括的国家安全保証」の概念は、対外関係や防衛力、日本の脆弱性(エネルギーや食料、自然災害等)、をも含み、軍事面、経済面での脅威に加えてどの要因も、日本の安全を脅かすという点では等しく重要であるというものである。

2012-12-11 21:54:52
bouninng @bouninng

技術の国産化、普及、育成という三音和音を常識的な経済尺度で計ると、個別の場合はコストばかりが高くて、マイナス効果しか生まれない。しかしこの三者を一括して追求し、イデオロギー(技術立国)という文脈で理解すれば、この三音和音はその国に工業力をもたらし、国の安全保証を確保できるだろう。

2012-12-11 21:55:04