帰ってきた残念怪談
- kaitenzushi
- 17154
- 0
- 0
- 0
十分ほどの間、プールの水面に俯せで浮いたままの奴がいる。監視員のKさんが、大丈夫かと水に入って近づいていくと、突然一人の男が水の底から顔を出し、「こいつに構わんで下さい」と言い、また水中に潜った。浮いている奴はむくりと顔を上げ、Kさんに「今水死体の練習中なんです」と言ったという。
2010-08-18 22:41:51十代。心霊写真、ホラービデオ鑑賞、肝試しが盛んだった頃。勝手口がついたOくんの部屋は恐怖の秘密基地にもってこいたっだ。そんなある日の集まり、Oくんは引き出しからドックフードを取り出し、ボリボリ食いだした。「おい!」「いや、うまいんだよ。犬飼いたいな」彼の飼い猫がニャアと鳴いた。
2010-08-19 05:02:16「小学校の頃にね」S女史はそう切り出した。「四つ上の兄が怖い話好きで、よく聞かせてくれたの。本当に怖くってね、で、その日も話してくれた訳」そう言った瞬間、彼女は口を押さえ、「今の無し!」と取り乱した。問いつめると、真っ赤になりながら「お漏らししちゃったの思い出したのよ」と言った。
2010-08-19 18:41:05外回りの営業をしているFさん、その相棒のK君が奇妙な行動を取る。道すがら地蔵を見つけると、坊さんのように左手を面前で立て、空いた右手で地蔵の頭を撫でる。種類問わず、とにかく撫でる。Fさんがその理由を問うと、「撫でたくなりませんか?」と質問返しを喰らった。特に理由はないらしい。
2010-08-19 18:42:44香川に転勤になった友人が「Gの幽霊見た!」と言う。大爆笑する友人一同に、彼自身も「怖くないんだ。けど、参ってる」と言った。香川で出来た可愛い彼女といざ、事に及ぼうとすると出るのだそうだ。「ちょうど、彼女の顔の上に、さ」げんなりとした表情を作った彼に全員「ああ~」と納得した。
2010-08-20 19:54:53盆。町内の祭りを終えての帰宅。M女史がバスルームの明かりを点けると、バチバチッと音をたてて電灯が点滅した。電球が切れたにしては、点滅が長く続く。また、光るたびに光量がまちまちだ。廊下の電灯も同様に点滅している。ジジジ…バチバチッ…ジジジ… 翌日、漏電復旧工事の回覧板が届いた。
2010-08-21 06:15:13出かけるような気軽さで、友人は彼の部屋を辞したはずだった。ぱたんと閉められたドアは、しかし間髪あけずガバッと開かれた。「今日は泊めてくれ!」涙声で言う友人。理由を聞くと「部屋から出たら、奥が見えないほど霧が立ち込めていた」家の中の話だ。
2010-08-22 00:19:23そういえば、墓地がすっぽり霧に覆われてるのを遠目に見た、なんて話を聞いたことがあります。体験者は「へー珍しい」くらいの感覚で何も確認せず通り過ぎたので、それ以上でも以下でもないお話ですが。
2010-08-22 00:46:41国道への抜け道。バイパスから山に入ると、幅の狭い舗装道路が森の中にひっそりと敷いてある。夜、一人きりの走行。時折、左右から人の視線を感じた。視線…また視線…。停車して木々の間に目を凝らすと、<マギー司郎リサイタルショー>の立て看板が林のやや奥まったところにいくつも設置してあった。
2010-08-22 05:34:37お盆の夜、トイレから女の絶叫が聞こえた。時刻はすでに午前二時を回っている。声の主が誰か、意を決して確かめに行った。暗い廊下を歩きトイレのドアを開けると、もがいている人間の姿があった。そこにいたのは便器のフタの自動開閉機能が故障し、フタに体を挟まれてもがく母だった。
2010-08-23 16:00:35湯船に肩まで浸かり、照明を仰ぐように目を閉じる。瞼の奥に感じる光。さて頭でも洗おうかと洗い場へ目を向けると、視界の隅に丸い紫。ドアのすりガラスの向こうにいる。思考が固まる。目を逸らす。高速でついてくる紫。何度視線を変えても視界の隅にいる。目を閉じても。あ、照明の残像だったわ。
2010-08-23 21:25:36入社したからにはお仕事をしないと他の皆様に申し訳が立たない。ということで、自分も残念怪談をひとつ。
2010-08-25 14:01:59