ヤマト21992次創作「もし地球がガミラスの支配を受け入れていたなら(行政編)」

ガミラスの支配を受け入れた地球(テロン)。地球行政長官藤堂平九郎に無理を強いるテロン総督ゲールに対し、宣伝情報相ミーゼラ・セレステラが介入する。ミーゼラの心中にあったものはなにか……的な2次創作。
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現場猫教授 @Dr_crowfake

「ボラー連邦との戦局逼迫のおり、テロンの兵力供出と戦時体制強化は必須である。総統の期待に応え、さらなる軍事協力強化を求める」テロン属州総督、ゲール少将はそのように言い放った。

2012-12-31 22:44:38
現場猫教授 @Dr_crowfake

「しかしながら、ゲール閣下、我が地球は既にその総力を上げてガミラスに貢献しております。テロン戦闘団、義勇テロン戦闘団の供出のほか、戦時税も貢納しております」そのように応えるのは地球連合行政長官、テロン属領副総督である藤堂平九郎である。

2012-12-31 22:45:23
現場猫教授 @Dr_crowfake

「それはどうかな。テロンは未だ全力を出しきっておらぬ。なればこその要求なのだ。理解せよ」高圧的なゲールの態度に、藤堂は怒りを抑えきれない。「確かに我々はガミラスに臣従しました。しかしそれは奴隷になることではない。イスカンダル主義こそ宇宙平和の一助となると信じてのことです」

2012-12-31 22:47:40
現場猫教授 @Dr_crowfake

藤堂の毅然たる態度にゲールは怯んだが、ややあって逆上した。「貴様ごとき2等ガミラス人が、恐れ多くも総統閣下の唱えるイスカンダル主義を語るか!」だが藤堂は屈しない。「我々地球は、宇宙の絶対平和のための統一を支持しております。そのために多くの血を流しております」

2012-12-31 22:49:24
現場猫教授 @Dr_crowfake

ゲールは嘲笑した。「テロンが流した血など、我らガミロンが流した血の1滴にも及ばぬわ。なればこそ、偉大なるガミラスの一員として、貴様らももっと奮励努力せよと云っているのだ」藤堂は黙りこむ。確かにガミラスがその大義のもとに流した血は莫大だ。しかし地球までその中に巻き込まれたくはない。

2012-12-31 22:52:04
現場猫教授 @Dr_crowfake

すでに地球は、かつての国際連合宇宙軍を超える規模の部隊を編成し、ボラー連邦とのいつ果てることのない戦に投じているのだ。それを率いるのが、名将沖田十三の薫陶を受けた古代守であり、更にそれを率いるのがガミラス切っての名将ドメルとはいえ、その負担は極めて大きい。

2012-12-31 22:53:31
現場猫教授 @Dr_crowfake

出来ればこれ以上の戦線拡大や戦力供出を控え、国力回復に尽力したい、それが藤堂の思いであった。そしてそれが、ガミラス全体の利益になるのもまた確かであった。しかしながら、属州からの搾取によって権力を維持しているこのゲールという男には、目先の功を立てることしか手中にないようであった。

2012-12-31 22:55:53
現場猫教授 @Dr_crowfake

「おそれながらゲール閣下、わが地球はすでに動員人口の大半を供出しております。宇宙軍のみならず、各地の占領星系の治安維持戦力などにも多数の戦力を供出しているのです。これ以上戦力を供出しろと云われれば、女子供まで動員せざるを得ません。それは地球の破滅を意味します」藤堂は熱弁した。

2012-12-31 22:57:54
現場猫教授 @Dr_crowfake

「ならば破滅すればよいではないか」ゲールは冷酷に嗤った。「総統閣下のために死ねるとは、大層な栄誉だ。少なくとも、反逆者として死ぬよりはな!」藤堂は凄まじい怒りを抱いた。ガミラスのやり方は、そういうものかと。支配地域から膏血を搾り取り、使い潰すのが正義なのかと。

2012-12-31 23:00:14
現場猫教授 @Dr_crowfake

だがそこで、以外な助け舟が現れた。「帝星バレラスより入電……ミーゼラ・セレステラ宣伝情報将閣下です!」「何!?」ゲールと藤堂はともに驚愕した。大ガミラスの統治を支える宣伝情報省の長官が、このような辺境でのやり取りに介入してくるなどありえないことだったからだ。

2012-12-31 23:02:15
現場猫教授 @Dr_crowfake

「ゲール。話は聞かせてもらいました。随分とテロンに無理を敷いているようですね」ミーゼラはその冷たい願望を崩さず、冷徹に責めた。「いえ、これはガミラス臣民に取って当然の義務を要求したまでのことです」ゲールはへりくだる。デスラー総統の信任厚いこの女を怒らせるのは得策ではなかった。

2012-12-31 23:04:04
現場猫教授 @Dr_crowfake

「私と私のスタッフが判断するに、あなたはいささかテロンに無理を強いすぎているようです。その、トードーという自治政府長官の言い分が、私には正しいと思えますが」ミーゼラは手厳しくゲールを叱責する。「しかし長官、ボラーとの戦いは激烈を極めるものです。無駄にして良い物はありません」

2012-12-31 23:06:16
現場猫教授 @Dr_crowfake

ゲールの抗弁に対して、ミーゼラは冷たい視線を向ける。「そのような過重な搾取と、それによる疲弊と反抗が、どれだけ帝国において不安因子になるか、考えたことはあるのですか? 帝国は全宇宙の統一による平和を求めているのです。しかし、それを求めすぎ、叛乱を招いては元も子もない」

2012-12-31 23:08:02
現場猫教授 @Dr_crowfake

「くっ……」黙然とするゲールに対し、ミーゼラは容赦なく批判を連ねる。「銀河方面の後方兵站組織には過重な負担がかかっていると、以前より報告が入っております。デスラー総統閣下も、憂慮を示されております」「総統閣下が……!」ゲールは驚愕した。総統の不興をは即死を意味するからだった。

2012-12-31 23:10:20
現場猫教授 @Dr_crowfake

「総統閣下から貴官への命令を伝達します。「過重な搾取を取りやめ、銀河方面軍司令部と兵站問題についてより一層の緊密な連携を行え」と」「……かしこまりました。ガーレ・ガミロン!」

2012-12-31 23:12:46
現場猫教授 @Dr_crowfake

敬礼するゲールを無視するように、ミーゼラは藤堂に云った。「現地総督の過大な要求により、テロン属州が困窮にあえいでいることは知っております。ですが、わがガミラスのイスカンダル主義を貫徹するため、今しばらく、耐えてはいただけませんでしょうか。無論、過重な負担はかけません」

2012-12-31 23:14:20
現場猫教授 @Dr_crowfake

藤堂は慎重に応えた。「現在ですら、負担は大きい。しかしながら、まだ耐えうる状況ではあります」ミーゼラはその真鍮を慮るように云った。「テロンの精鋭の活躍は、総統閣下の耳にも入っております。けして悪いようにはいたしません」

2012-12-31 23:15:55
現場猫教授 @Dr_crowfake

藤堂は挙手した。「宣伝情報将閣下のお言葉、有り難く頂戴いたします。ザー・ヴェルク!」「ザー、ヴェルク」ミーゼラは軽く挙手すると通信を切った。そしてゲールは藤堂に対し「やむをえんが、これ以上の動員は要求すまい。バレラスからの命令では致し方ない」と悔しそうに云った。

2012-12-31 23:17:37
現場猫教授 @Dr_crowfake

「バレラスが我らが苦境に配慮して下さったことを、心より感謝いたします、ゲール総督」そして通信は切れた。藤堂は胸をなでおろした。無能な現地総督を監査する能力がガミラスにあり、属州の苦境に配慮する大度を総統が持っていることに。

2012-12-31 23:19:36
現場猫教授 @Dr_crowfake

そしてゲールは怒りと恐怖にまみれた表情をしていた。「あのガトランティスとのあいのこめ、どこまで手の内を知っているのだ……!」ゲールは自身の権限を用い、テロン属州から多額の資産を入手していた。今回の動員強化も、それをふくらませるための方便である部分が大きい。

2012-12-31 23:21:24
現場猫教授 @Dr_crowfake

そのタイミングでバレラスよりわざわざ辺境の属州の扱いに対して「警告」が発せられたことに関して、ゲールは恐怖と、ミーゼラの敏さ、そしてデスラー総統の銀河方面への注目を感じざるを得なかった。「……ここが潮時か」あからさまな警告を前にして、なおも突っ走るほど、ゲールは愚かではなかった。

2012-12-31 23:24:52
現場猫教授 @Dr_crowfake

そしてミーゼラは、軽くため息を付いた。「たかが1属州の不穏に、私自らが口を出すとは……」ミーゼラは帝国全体の結束を維持する役目を負う重職である。だが、テロンに対する現地総督の横暴を耳にした時、どうしても自ら介入せねばならないと思えたのだ。

2012-12-31 23:27:16
現場猫教授 @Dr_crowfake

ミーゼラは純血ガミラス人ではない。ガトランティス大帝ズォーダーと、ガミラス女の間に生まれた庶子で、親善友好と人質を兼ねてガミラスへと送り込まれた身である。ガトランティスとガミラスが戦争を開始した時、自らをガミラス人と任じ、官界に身を投じたが、その道は平坦でなかった。

2012-12-31 23:29:15
現場猫教授 @Dr_crowfake

デスラーの寵愛と自らの才能なくしては、魑魅魍魎うずまくガミラスの中枢で生き残ることは不可能であっただろう。そのような自らの立場と、ガミラスに服従しつつも自主独立の気概を忘れぬテロンとを、思わず重ねあわせてしまったのかもしれない。そんな情は捨てたはずだが、と、ミーゼラは思う。

2012-12-31 23:31:13
現場猫教授 @Dr_crowfake

いずれにせよ、ミーゼラの介入により、テロンは破滅的な根こそぎ動員から救われ、ゲールも私利私欲を振るうことなく、多くの人々が安らぎを得ることができた。たとえそれが2等ガミラス人のものであっても……いやイスカンダル主義はすべての生命を等しく扱う以上、それは優れた善行だった。

2012-12-31 23:33:05