友野詳氏の「シャハルサーガ 第1部」 ストーリー版

友野詳(@gmtomono)氏によるルナル世界を舞台にした新作Twitterノベル「シャハルサーガ」のまとめです。 こちらは「採用された物語」だけを纏めて、ストーリーを追いやすくする事を目的としたリストです。 「採用されなかった選択肢」なども含めて全てを読まれたい方は、 http://togetter.com/li/435051 をご覧下さい。 第2部 全部入り:http://togetter.com/li/460078 続きを読む
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友野詳 @gmtomono

この個体たちは、アリクたちを雇った個体と別だが、集合知性ゆえ、自分たちもまたアリクとユーディアの雇い主だと認識している。仕事の途中で、二人は、双月教徒の騎兵隊に連れ去られた。騎兵隊が罪人と認定しようと、ファタタの知ったことではない。雇い人は雇い人だ。 #シャハルサーガ (111)

2013-02-16 23:05:34
友野詳 @gmtomono

ファタタたちは、引き受けた仕事をまっとうすることを強く望む。雇い人にも、そうさせる。最後まで、つまり契約が終わる「港」まで、アリクたち働かせるために、日ごろからつきあいのある〈姿なきグルグドゥ〉たちにも、見かけたら知らせるよう頼んでいたのだった。 #シャハルサーガ (112)

2013-02-16 23:05:54
友野詳 @gmtomono

精神を共有するファタタと、光で通信する〈グルグドゥ〉は、高速で、遠方まで情報をやりとりできる。彼らが、ほかの種族を恐れない理由は、そこにあった。ともあれ、流砂に飛び込んだアリクたちは、再びファタタの船で、地底を運ばれることになった。 #シャハルサーガ (113)

2013-02-16 23:06:25
友野詳 @gmtomono

今度はもう、危機におちいることもなかった。半日後には、契約を終えて、港にたどりついていたのだ。ファタタたちは、じつにあっさりと、ふたりをほうりだした。集合知性を持つ彼らは、種族全体はともかく、個人の運命には、さほどの関心を持たないのだ。 #シャハルサーガ (114)

2013-02-16 23:06:38
友野詳 @gmtomono

アリクとユーディアの肉体に何が起こっているのか、尋ねることは可能だった。だが、知的好奇心だけで調べてくれる相手ではないし、その知識を買い取るだけの、支払える何物も二人は持たなかった。何もわからぬまま、二人は地上に戻り、海に面した巨大な街に出た。 #シャハルサーガ (115)

2013-02-16 23:08:53
友野詳 @gmtomono

ほとんどの場合「港」とだけ呼ばれるこの街は、地峡砂漠最大の都市の一つである。あらゆる種族が、ごった煮のように暮らしている。アリクは、一族の商売につきあって、何度か訪れているが、統治者が誰かなど、この都市の仕組みなどについては、まるで知識がなかった。 #シャハルサーガ (116)

2013-02-16 23:09:32
友野詳 @gmtomono

その点は、ユーディアも同じことだ。「……空飛ぶヒトデ亭……という酒場で……これを見せろって」。ユーディアが、おばさまと呼ぶ救出者は、彼女に星型の小さなペンダントを与えていた。いや、たぶん、ヒトデなのだろう。 #シャハルサーガ (117)

2013-02-16 23:10:25
友野詳 @gmtomono

街に不案内なふたりが、それらしい酒場を探しあてたのは、もう真夜中になってからだった。けれど、二人がその酒場に足を踏み入れることはなかった。空飛ぶヒトデ亭は、大捕り物の真っ最中だったからだ。いや、たどりついた時にはもう、戦いは終わっていた。 #シャハルサーガ (118)

2013-02-16 23:10:39
友野詳 @gmtomono

二人は、路地に身を隠し、黒い怪しげな衣服の男女が、港の官憲に連れてゆかれる様子を見つめていた。ほんの少し早く来ていれば、アリクたちも共に捕らえられていたろう。縛られた筋肉質の中年女性を見て、ユーディアが声をあげそうになった。アリクが咄嗟に口を塞ぐ。 #シャハルサーガ (119)

2013-02-16 23:12:53
友野詳 @gmtomono

「おばさま?」。アリクが手を離すと、ユーディアは呟いた。黒く長い髪、つややかな額のシャストアの女性高司祭が、その中年女性を詰問している。「……あの子をどこにやったの! 何が親戚筋よ! 〈悪魔〉教団ってのは、もう」。ユーディアはその高司祭を知らない。#シャハルサーガ (120)

2013-02-16 23:14:47
友野詳 @gmtomono

あの高司祭も、ユーディアを追っているようだ。そして、ユーディアを幽閉から救い出したのは、闇の月を崇めて、破壊を求める者たちだった。〈悪魔〉教団だ。しばらく前であれば、ユーディアは絶望していたかもしれない。自分に、この世に存在する価値などないのだと。 #シャハルサーガ (121)

2013-02-16 23:15:41
友野詳 @gmtomono

だが、いまは違う。自分が絶望すれば、アリクも絶望させる。アリクも絶望しない。ユーディアを絶望しないためだ。ふたりは見つめあい、うなずいた。自分たちだけで、がんばって生き抜こう、と。いやマガナックもいる。 #シャハルサーガ (122)

2013-02-16 23:15:50
友野詳 @gmtomono

そして二人は、街の夜闇へ、自分たちの身を投じた。少しだけ、気が早すぎた。もうちょっと長く、黒髪のシャストア高司祭の言葉に耳を傾けておけばよかったのだ。「あの子を創るために、〈結社〉が姫たちを生んだ方法を使ったなら、あたしが本当の親戚筋なんだってば」 #シャハルサーガ (123)

2013-02-16 23:16:06
友野詳 @gmtomono

かくして、アリクとユーディアは、港の下町に、その身をひそめることになった。ここでしばらく、我々は、二人から目を離す。ユーディアを生んだ実験、魔法の宝〈心臓〉。それらを追う者たちが、二人の運命と合流するまでを見つめるために。(第一部、ここまで) #シャハルサーガ (122)

2013-02-16 23:16:19

第2部 序夜

友野詳 @gmtomono

#SSG選択 「攫われた娘の足跡が、カヤ=ランの牢獄に続くってどういうこった?」渋い声でぼやくのは人間の半分ほども大きな甲虫。「謎を解くのがぼくらの仕事だ」答えたのは虎のごとき縦長の瞳の青年。知恵の神ペローマの信徒。彼らの仕事は「探索と偵察」つまり探偵。 #シャハル2 (0‐A)

2013-02-16 23:17:01
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