ミストルティン編第四話「護るべき笑顔は~ノー・ティアー!ノー・アゲイン!」 #1 「ブレイビート・チェイサー・2013」

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Astal_jukebox @astral_jukebox

西暦2013年4月11日(木)15:50。茨城県日舘市新渡町、星咲学園中等部、屋上。七橋裕岐は呼び出しを受けてここに来ていた。今朝『七橋に用のある奴がいるから、4時に屋上へ行け。OK?』と浅空勇矢に頼まれ、『OK!』と二つ返事で返したのだ。勇矢は何故か倒れた。 1

2013-01-11 06:40:07
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誰が来るのかとは言われなかったし、聞かなかった。教える気があるなら勇矢は言う筈だし、言わなかったからには教える気が無いからだ。そもそも放課後には分かることを無理に聞く必要もない。予定も元々空いていた。AB部は基本的に月水金が活動日なのだ。相手が配慮してくれたのだろうか。 2

2013-01-11 07:00:58
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わざわざ呼び出すからには相手は部員では無かろうが、そうすると活動日を知っているのが不思議である。AB部は新しく、部員もまだ募集していない。活動日を知る手段は限られる。状況的に勇矢が教えたと考えるべきだが、それも不思議だった。彼の知る浅空勇矢は友を作るタイプではなかった筈だ。 3

2013-01-11 07:10:45
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そもそも何故勇矢を使ったのか。入学以来二人が話したのは部活以外では数回程度、合わせても十分は超えないだろう。他の級友達と話した時間の方がまだ長いくらいだった。二人が旧知と知るのはそれこそ同じ来栖見の者か良くて同じA組の生徒くらいだろうが、それも部内を除くと数名程度。 4

2013-01-11 07:20:46
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しかも全員が裕岐の知り合いで有る為、彼等があえて勇矢を介する必要性が薄い。深く考える程、呼び出される心当たりが無くなっていったが、どの道あと十分で分かることだ。そう考え、部活動のほうに思考を移す。明日の試合はまたも勇矢一人対福岡組三人だが、再来週は彼と星護も参戦する。 5

2013-01-11 07:30:27
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試合用のロボットは概ね完成していたので、運用方や改良案について考えていた。もっとも勇矢が再来週用の機体をまだ出してこないので、戦術を深く詰められるのは来週以降だろう。勇矢には明日の試合もあるので仕方の無いことではあるが…「七橋裕岐さん、ですね」声を掛けられ、思考を中断する。 6

2013-01-11 07:40:17
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「ああ俺が七橋だけど、君かい?」そこにいたのは同学年の少女。「はい………はじめ、まして」重々しく頭を下げた少女は名前とクラスを名乗り、自己紹介をした。そして一拍を置いて続けた。 7

2013-01-11 07:50:52
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「裕……七橋…さん…わた…私と付き合って……恋人になってください!」少女はまた深く頭を下げた。「……」裕岐は一瞬呆然となる。だが直ぐに素早く思考を巡らせた。彼女とは面識は無い。クラスもA組の裕岐と違いC組だそうだ。何故自分なのか? 8

2013-01-11 08:00:06
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彼女の態度はは真剣そのもの。しかもどう見てもかなり前からこちらを知っているような態度に見えた。「その…?前に、どこかで会ったかな?」「……一目惚れ…です」少女はきっぱりと、力強く断言した。(嘘…か)しかし裕岐は、そう直感した。だが悪意のある嘘では無いとも思われた。「……」 9

2013-01-11 08:11:10
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問い質しても答えてはくれないのだろう。こういう態度と雰囲気には覚えがあったので、それが分かった。裕岐には恋人はおらず、そして欲しいという気持ちも人並みには有った。彼女の態度や嘘は気になったが、拒絶する理由は無かった。「本当に、俺で良いの?」「…はい!ゆ…七橋さん」 10

2013-01-11 08:20:14
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裕岐は微笑みながら返事をした。「………分かった。宜しく…その、『まずは友達から』ってヤツでよければ」「はい!ありがとうございます!!」明るい笑顔で少女が答えた。そこに嘘は欠片も無かった。少なくとも、今のその笑顔には。 11

2013-01-11 08:30:49
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ミストルティン編第四話「護られるべき笑顔~ノー・ティアー!ノー・ペイン!~」 #1 「ブレイビート・チェイサー・2013」

2013-01-11 08:33:22
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この前日。西暦2013年4月10(水)17:15。茨城県日舘市新渡町 星咲学園中等部文化部部活塔アクトボット部部室。 12

2013-01-11 08:35:29
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勇矢と、智明・隆光の模擬試合の終了後、試合内容についての会議が行われていた。司会はやや疲れた様子の伊都谷湊。直前の茶番のせいだ。書記役は仁美と星護。それぞれボードとノートの担当である。両機共、評価の声も多かったが、改善点についても多くの意見が出てきた。 13

2013-01-11 08:40:52
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ビートは排熱性が一番の課題である。これはビートに限らず戦闘型ロボット…いや稼働部のある全ての機械に言える問題ではあるのは勿論である。しかし隆光の常人離れした動きを再現する為、ビートはかなり無茶な、ピーキーな仕様になっており、特に重要な問題である。 14

2013-01-11 08:45:02
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この仕様で普通に動かすだけでも十数分でオーバーヒートしかねないのだが、それを隆光の異常スピードで行う為、冷却剤無しでは最悪数分で熱暴走してしまう。かつては即効で敵機を全滅させる、得点制を無視した戦法で、熱暴走前にケリをつけていたのだが、今でもコレが通じるとは思い難かった。 15

2013-01-11 08:50:25
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09年・10年と二年連続で企業チームが小学生達に散々に蹴散らされたことで、大会常連の上位チームなどは浮足立って性能アップを図っていた。それまでも主催である『八千代グループ』が第一回以来の万年優勝状態であったが、この八千代に対する敵愾心とはまた事情が異なった。 16

2013-01-11 08:55:34
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強過ぎるとは言え、八千代も企業チームの一つ。上位陣はどこかで『負けても仕方ない』と挑戦を諦めてしまっていたのかも知れなかった。しかし小学生にまで負けっぱなしではいられなかった。実際09年に勇矢に負けた企業のうちの一部の株価が一時目に見えて下がったせいでもある。 17

2013-01-11 09:00:44
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それに加えて「災害」による11年度の大会の休止である。『先見性』のある『強い』企業はアクトボット用予算を一定以上維持し再開に備えていた。しかし幾つかの企業はAB関連部門の、この年の予算を大幅削減もしくは部門自体を廃止してしまっていた。 18

2013-01-11 09:05:43
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翌年度の大会再開に当たって彼等の反応は、慌ててAB部門を再建するか諦めるかに二分されたが、いずれにせよ備えていた企業に大きく遅れてしまっていた。…この為、前年度から大会のレベルは大きく上がった。同時に「小学生でも勝てるなら」と素人も増えたので平均自体は下がったかも知れない。 19

2013-01-11 09:10:41
Astal_jukebox @astral_jukebox

これに加えて、戦法が広く知られてしまったことも大きい。去年はスカウト目的での、小手調べの出場だったとはいえ、地区大会で敗退した。戦力を小出しにぶつける戦法を連続で受け、熱暴走に追い込まれたのだ。智明もこの弱点は充分理解しており、他機との連携でこれを補うつもりでいた。 20

2013-01-11 09:16:26
Astal_jukebox @astral_jukebox

しかし部員からの意見は連携に関してではなく、排熱性の改善案が殆どだった。外付けファンの増設、蹴り技依存度を減らして車輪を強化し、高速移動による風での冷却をする、液体循環冷却、敢えてメッシュ部を減らしての排熱一極化…具体的なものを含むプランが短時間でこれだけ出てきたのだ。 21

2013-01-11 09:20:46
Astal_jukebox @astral_jukebox

無論、智明は改善を考えていなかったわけではない。しかし予算と現代の科学技術の問題から改善の余地は今の5割増し程度しかいないと考えていた。だからこそ連携のほうを重要視していたのだ。しかしこれらの改善案をうまく複合出来れば、3倍以上も夢ではない!智明には嬉しい誤算だった。 22

2013-01-11 09:25:02
Astal_jukebox @astral_jukebox

一方のジョーカーは、性能の高さの割には批判的な意見の方が多く集まった。これもある意味当然ではあった。装甲が薄く回避重点のビートに対し、ジョーカーは自切・相討上等、壊れることが前提の機体である。ビートも自切は出来るが、アレは緊急用であり目的が違う。 23

2013-01-11 09:30:18
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